野分過ぎて①

野分過ぎて①

まだ途中ですまん


夏の🐶🍑妄想 健全 叡智は無い

「爺様婆様のお望みの品、必ずやもってきます」

イイネイヌが村を発ってからもう何日が過ぎたか、紫色の夕空の下でモモワロウは今日も家来の姿を探す

やけに鮮やかな夕焼け、強風がモモワロウの不安をいっそうあおる

ここ最近の蒸し暑さもポケモンの声も風のせいでずいぶん遠い


「モモ、モモや」

「もう暗くなるよ」

仕事終わりの老夫婦が帰りをうながす

モモワロウはもう一度イイネイヌがいないか山へと伸びる道へ目をこらす

ヒュウッ

そのとき正面からの突風に飛ばされ、おまけに土埃が顔に吹きつけられてしまう

モゲ!目をこすろうとするモモワロウの手をそっとおじいさんが止める

「ああ、こすっちゃいかんよ」

「かわいそうに帰って洗いましょう」

「今年の野分(台風)は大きそうだ…」

二人に連れられたモモワロウは目を閉じたまま嫌な風、嫌な空へ怒った

怒ったあとにはまだ帰らない家来へのさびしさがじわりと残った


家に着いてからますます風は強まり、横殴りの雨まで降ってきた

とてつもなく大きなポケモンが家を掴んで揺すってるのではないか

モモワロウがそんな想像をしてしまうほど野分の風雨は恐ろしい

光のない部屋で二人と一匹は過ごすしかなかった

ずっと荒れ雲に太陽が隠されて今は朝なのか夜なのかもわからない、一日過ぎたか二日が過ぎたのかすらも

「お餅ありがとねぇ…」

「どれ、モモのご飯もとってこよう」

クサリモチをさしだしたモモワロウを二人は手探りでやさしくなでる

つかの間安堵したが、自分をなでるもう一匹の手を思い出してモモワロウは不安になる

イイネイヌはもう帰ってきているのか…暴風で飛ばされてやしないか…こんなに帰りが遅れてるのは大怪我でもしてるんじゃないか…

外を確かめたくても野分が過ぎなければどうしようもない

はやくどこかに行ってしまえ!野分がいるだろう上に向かって怯え半分に睨みつける


そしてどれほど経ったか、風と雨が少々弱まり、家屋の隙間から久しぶりに月の光が落ちた

寝床を抜け出したモモワロウは山へ続く道へ向かう

「田んぼになっちゃったモモ…」

道脇の畑も草むらもすっかり水が張ってしまった

月明かりと風が水面に細かな光を散らしている

草どころか木まで倒れている夜道をふわりふわりと一匹飛んでいく

ときどき突風に押し流されながら進むが道中ポケモンの鳴き声どころか気配すらない

まだ家で野分が完全に過ぎ去るのを待つべきなのだろう

しかしどうにも家来の帰りが気がかりで心細い景色の中を進んでいく

つづき②

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