白紙化地球里帰り
プロット段階でとん挫した白紙化地球里帰り
誰かサルベージしてほしい
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里帰りと称して漂白世界の地へ行く。
自分たちはちょっとした並行世界からきているのに、里帰りと言っても問題はないらしい。緯度経度が合致すれば世界が違っても故郷と同等と言う。
日本であった場所に降り立って、それぞれの故郷へ足を運んでいく。
生まれた土地、育った土地、活躍した地。向かうべき場は様々だが、景虎は迷うことなく越後へ向かう。途中までは方向は同じなのでその横を晴信が駆ける。
長野辺りに来たところで、なんとなく体が軽くなるのを感じる。きっと川中島があるからだと二人は思う。
そして南北に分かれ、それぞれの地へ。
望郷の念は起きないが、それでもそこはもの寂しいと感じる景虎。
持ってきた酒を飲みながら、白い世界を方々見やる。雪化粧も真っ青な一面の白だが、起伏がある分あちらの方がマシだろうと。
酒を飲んで思いを馳せる。人ならざる自分を案じてくれた者たちを。軍神として恐れながらも縋ってきた者たちを。頭首として付き従っていた者たちを。人でなくてたまるかと自分に挑んできた者を。人であろうが人でなかろうが変わらず接してきた者を。
義などなくとも理由などそれだけでいいのだと景虎は思う。
二日経ち、三日経ち、四日経ち、酒もつきた。
一人で槍を振るうのも飽きた。元領地をぐるりと回るのも飽きた。
五日目、なんとなく思い立って南へ下る景虎。
信濃の国で望月千代女と会う。
甲斐の地で、城を見たという。武田の城を。
自分の上司とは異なるが、あれもまた信玄だと評する千代女。
甲斐よりも信濃で偲ぶ思いがあるという千代女を残し、さらに景虎は南へ下る。
甲斐の地に着いたはずが城は見えない。
放生月毛を駆り、かの地をめぐる。
地山林川、山を越えれば風土は変わる。越えるべき山が無ければ変わる景色も無いのか、と思う。
吠えるような唸り声が聞こえる。
白い地平に一点、黒馬があった。晴信の黒雲だった。
景虎を一瞥するとついて来いとばかりに踵を返す。
放生月毛で後を追う。
地平に一点、赤があった。晴信がいた。
何の用だと問われ、暇を持て余したと答える。
里帰り中だから武器は出すなよと言われ、手持無沙汰に。
黙す晴信を見る。甲斐の地に景虎が思うところはそうない。ただ、倣って黙す。そして祈る、毘沙門天に。
数刻経った頃、晴信がどうするのかと聞く。
結局晴信も相手をしてくれるわけでもないしまた越後に戻ろうかと思う景虎に、自由だなと呆れる晴信。
放生月毛に乗り、白紙の上を駆ける。山越えが必要のないこの地はとても移動しやすいが物足りない。
信濃を渡り、越後へ着く。甲斐では感じることのない力の本流を感じる。
あそこは自分の土地ではないのだと少し寂しく感じた。