(酔った兄ちゃと酔ったカイザーと酔った凛ちゃんの狂宴、未来if。なお画面にいないだけで爆笑する士道もおり後日この映像は士道のアカウントからSNSにアップされた)
「や゛た゛ぁ゛ー!!!! 兄ちゃんは凛だけの兄ちゃんた゛も゛ん゛!!!!」
真っ赤な顔で高級居酒屋の座敷にひっくり返って手足をバタつかせるのは、今年20歳を迎えて日本での飲酒が解禁されたばかりの糸師凛である。
根っこはともかく普段はクールぶっている姿からは考えられない、さながら幼児返りでも起こしたような酒乱ぶりだ。
ここが防音の効いた個室でなければ青筋を浮かべた店員が注意しに来ただろう。
「りーん♡ もういい歳した大人なのに、いつまでも赤ちゃんみたいでカワイイな♡ 兄ちゃんにたくさん甘えて良いんだぞ♡」
そんな凛の頭を正座した左膝の上に乗せて撫でくりまわしているのは、同じく泥酔して完全にアルコールの回った糸師冴だ。
聞いているだけで脳味噌が痺れて気付けば1時間くらい消費することになりそうな甘い声は、テーブルの上に置かれた果実酒をも超える糖度でもって凛の耳朶をフェザータッチする。
マゾ犬ならば嬉ションしかねない恐るべきASMRボイスに、酔ってブラコン全開の弟は「兄ちゃ♡♡♡♡」と目を蕩けさせて口から涎を垂らした。顔が美しくなければ許されていない痴態だ。
「でもミヒャエルもカワイイな♡ 俺の手ずから餌を啄む雛鳥みたいだ♡」
「や゛た゛ぁ゛〜!!!! また凛以外のこと弟みたいに可愛がったぁ゛〜!!!!」
冴の右膝に頭を乗せられているのは、これまた酔い潰れたカイザーである。涙に濡れたブルーアイズに平時の傲慢さは欠片も無く、撮った写真を薬物中毒にされて自我を奪われた哀れな麗人と題して出展すれば見る者を騙せそうだ。
冴が食べもしないのに頼んだパフェのたっぷりとした生クリームをスプーンで唇に押し込まれているせいで、飲み込みきれなかったソレが唾液と混じって白い液体となって口端からこぼれ落ち、端的に言って精○ごっくんを強制されて失敗した後の被害者の絵面になっている。無言で泣き続けているせいで余計にその印象が強い。
凛は自分の頭をよしよししている兄があーんもしてくれないことにご立腹らしく、片方を奪っているカイザーを弟のライバルと見做して拗ねていた。
酒浸りどもは今日もめちゃくちゃだ。