酒瓶ガチャセット

酒瓶ガチャセット


SR 卵を温めるシュライグ

 今日も今日とて、酒瓶ガチャがぶん回る。

 お目当てのシュライグが出るまで(ルガル達の肝臓が)耐久するのだ。

「酒瓶が終わっちまった。シュライグ、飲め飲め」

ルガルの言葉に首を傾げつつも、シュライグは無傷で立ち上がった。

「もう、諦めましょ。このガチャ当たりなんて入ってないのよ」

 フェリジットは既に意気消沈していた。どこかの並行世界では独占欲強めシュライグがフェリジットを城に監禁という名のデートをしている。が、そんなことはこの世界では起こらない。

「ガチャってなんだ?」

フェリジットは耳元でシュライグの声を聞いた。

「シュ、シュライグっ!」

フェリジットの背中に張り付くようにシュライグは立っていた。あまりの近さにフェリジットは驚きのあまり後ろに倒れそうになった。

「どうかしたのか?」

フェリジットをシュライグが抱き止める。鼻先が触れ合う寸前まで、キスする直前まで、顔と顔とが近づいた。

「へにゃ〜」

フェリジットは茹で蛸のように蕩ける。

「飲みすぎたのか?」

シュライグの言葉もフェリジットには届いてない。


「ルガル、あれってなに? リズ姉幸せそうだけど、シュライグなんか変じゃないかな」

 少しみんなと離れた場所でシュライグは飲んでいた。他の鉄獣戦線のみんなと距離を取っている。しかしフェリジットを側に寝かせているのだ。

 ルガルは首を傾げる。こればかりは彼でも分からない。とりあえずの仮説を立てることにした。

「仮説でいいか? パーソナルスペースというものがある。他人に近づかれて不快に感じる距離というやつだ。察するにシュライグのパーソナルスペースはフェリジットにだけ狭い距離を許しているのではないか。その分他が遠くなる」

「でも、それだとリズ姉に近づいている説明になってないよね」

「うむ、流石だな。痛いところをついてくる。なぜかは俺にはさっぱり分からん」

 正解はフェリジットのことを卵のように感じるシュライグである。

 


SR 教導騎士シュライグ

 鉄獣戦線は地に倒れた。かつての仲間にシュライグは銃口を向けた。

「待て、シュライグ。正気に戻るんだ」

「黙れ」

ルガルの声ももう今の彼には届かない。教導の鎧を纏う彼は神徒たちを率いる立場になっていた。

「シュライグ、正気に戻ってよ。マクシムスに騙されているわ!」

フェリジットは悲痛の叫びをあげる。彼女には立ち上がる力はもうない。シュライグは首を横に振った。

「マクシムス様は酒瓶で殴られて傷ついた俺を治療してくれた。その上、俺を騎士団長に任命した心が広いお方だ。その尊きお方を貴様ごとき薄汚い獣人の口が語るな」

 教導の騎士シュライグは倒れたフェリジットの腕を掴んだ。乱暴に体を起こして、冷たい視線で彼女の体を値踏みするように見る。

「マクシムス様の命令だ。薄汚い半獣に情けを注いでやれと言われた。泥棒猫に、いや俺が考えることではないな。あのお方の考えなど俺ごときに分かるはずがない」

 神徒たちは既に幕屋を立てて寝具を運び終わっていた。怪我人用のテントまで設営を終えている。

「脱げ、女。それとも服を破ってやろうか?」

シュライグは冷たく言い放った。そして神徒の一人が彼に駆け寄って耳打ちをする。

「これは幕屋に入ってからの台詞だったか。危うくマクシムス様の命令に反してしまうところだったな」

 シュライグに耳打ちした神徒はルガルたちの治療に戻った。

「あー、お二人、ごゆっくり」

「心は屈しても体は屈しないんだからっ!」

「その強気がいつまで続くか見物だな」

シュライグにフェリジットが運ばれていくのをルガルは見送った。


「あー、とりあえず治療してくれてありがとな。神徒さんよ、あれどういうことだ?」

「恐れ多くもマクシムス様のお考えを卑近な言葉で説明させて頂きます。『シュライグを洗脳してフェリジットを陵辱した後、正気に戻ったシュライグがどういう顔するか見てみたいなぁ。並行世界ではデスピア堕ちがあるからネタ被り嫌だしギャグ寄りにするかぁ〜デスピア堕ちSSすごくいいのでみんな読んでね』でございます」

「なるほどな。洗脳はいつ終わるんだ?」

「翌朝、朝日と共に洗脳が解ける予定です。それまでごゆるりと」

 酒や食事がテントに運び込まれた。


 翌朝、シュライグは一人で去ろうとしていた。フェリジットは彼に縋っていたが、シュライグの意思は固い。

 飲み終わった酒瓶がシュライグに振り下ろされた。


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