酒気漂う摩天楼
夜…それは多くの者達が寝静まり、暗闇と静寂が支配する時間である。…とある一室を除いて。
静寂であるはずの部屋に響き渡る水で遊ぶかの様な音、口を塞がれたかの様に荒く抑え込まれた声、布と布が擦れ合う音。その部屋から聞こえる音の中心に、人と人が重なっていた。
夜になって肌寒いのにも関わらずその二人の周囲は熱帯夜の様に暖められている。そして人を酔わすアルコールの匂いと人を酔わすもう一つの"あるもの"の混ざり合った匂い…
「んむっ…じゅるるるっ!んくっ…こくっ…んはぁっ…トレーナーさんのおくちおいしい…♡」
上に覆い被さっているのはマンハッタンカフェ。下にいるのは彼女のトレーナーである。
「カフェ…そろそろお風呂で酔いを……!?」
「んんっ、はっ…んれぇ…はあむっ…じゅるっ…♡」
言い終わる前に口を塞がれまるで自分の物であるかの様に彼女の舌は這い回り、マーキングするように塗り付ける。
大好きなトレーナーと酒を飲める事に喜びを感じたのだろう。初めてにも関わらず彼女は大量のお酒を飲み干していたのだ。
激しいキスで貪りながらトレーナーに身体を擦りつけるカフェ。成人してより磨き上がったカフェの女性の身体はトレーナーの理性を熱く擦り溶かしていく。
「はあっ…はあっ…からだあつい…とれーなーさんもそうれすよね?」
若干呂律が回らない口調で蕩けた声を出しながら衣類を脱ぎ始めたカフェ。
本来なら止めようとする筈のトレーナーであったが自身も酔っていたのとカフェから口移しされたアルコール、そして彼女の妖艶さに判断能力を失っていた。
「とれーなーさんもあついんですね…」
自らの衣類に手をかけたトレーナーを見てそれを手伝うカフェ。互いにこの世に生を受けた時の姿で見つめ合う。
「まだまだわたし…のめますよぉ?」
再びトレーナーに覆い被さり耳元で囁く。
「だからとれーなーさん…"とびっきり"のをわたしにください…♡」
翌朝カフェは目を覚ます。
頭痛を感じながら盛大に酔った事を自覚する。
そして自らの姿を見て辺りを見回す。
脳内に流れる昨夜の有様。漂うそれが現実だという事を証明する匂い。
顔が赤くなり熱くなる。
穴があったら入りたい…そう思っていても下半身がふわっとした感覚に包まれており言う事を聞かない。
「おはよ…カフェ…」
そうしていると隣で寝ていたトレーナーが目を覚ます。
「お、おはようございます!その…ごめんなさい!昨日は…」
「いいのいいの…自分も酔ってたし、止めずに飲ませ続けてしまった自分もアレだから……それより」
「きゃっ!?」
突然腕を掴まれ抱き寄せられるカフェ。昨夜の事を思い出し更に熱くなる。
「今…君という存在に酔っているんだ…だから…良いかな?」
「———ッ」
(ずるい…そう言われると私もこの想いを抑えきれない…!)
「ふふっ、私もあなたという存在に酔っていますから…その酔いが一生覚めないくらいに…ね?」
———二人の"酔い"は止まらない