酒を飲むな!!

酒を飲むな!!

酒飲みと下戸


「真昼間から、お酒を飲まない!」

母の手から酒瓶を取り、めっと人差し指を突き出して注意する父。

見た目はかわいいけど、もし家族が見たりしたらちょっとキツだろう。

母は酔っ払っているのか、可愛いね〜と言うが。

「......ほんと酔っ払ってるね。」

「ん〜......?おみゃえもろめよ〜!!」

少し呆れたような、苦笑するような様子で呟く父と、そんな父の様子が酔っていてあまりわからないのかポンコツっぽい母。

「僕はほら......お酒耐性がさ......」

「無いから飲ませんだよ。可愛いじゃん。」

自分は酒耐性が全く無い下戸の中でも更に下戸だと自覚している父は酒はちょっと、と言うが母の方は良いじゃん飲め飲めと酒を飲ませようとする。

「可愛?あ、と言うかさっきからお話逸らしてるよね!お酒ダメだよって言ってるの!」

「えー、そらしてらいよべつに〜。おさけをのんでるわらしはきらい?」

一瞬流されそう、硬直しそうになるけどきっとこれは策略そう策略。と思うことで冷静さを取り戻......せてるかあれ?それで、父に近づいて取り戻せてるか怪しい冷静さを捨てさせにかかる母。酒の為にそこまでやるか......

「ぃや......すき。だよ?でもそれとこれは違うっていうか......その、お酒とかで、早死にとかして欲しくないから......」

「んはは、じゅつしなんれいつしぬかわからんよ〜!さけでしねたらいいほうや。」

顔を真っ赤にさせ、すきだよと小声で言った後、でも!と大声を出して説得にかかる父と、そんなこと言われたらなにも返せないが?といった感じの返しをする母。

「そんな、言われちゃったらな〜......ふふ、じゃあ僕もお酒飲んじゃお。」

「お、のむ〜?ええよ〜、のんでのんで!んでよっぱらってないてねろ!」

「よ、な.....ねる?ん〜?よくわぁんないや。」

「もう酔ったんか。流石下戸やなぁ〜......」

「たしかに僕げこだけど、まだじぇんじぇんよってらいよ〜?」

「嘘がバレバレなんだよな〜......君はいつも酔ったふりしてあの台詞言ったらすぐ酒飲んじゃうよね。」

「あのせりふって?」

「内緒。あのさ、」

「ん〜?」

「死なないでね。」

「......ふふ、やだ!」

「っなん」

「いっしょにいきて、いっしょにおいて、いっしょに、いっしょのおはかにはいろ?」

「......保証は出来ないかな。墓に入れるような死に方出来るとは限らんだろ。」

「でもまぁ、一緒に生きて一緒に老いたる。私がお前の理想の妻やって、ずーっと思っとけよ!」

「......りょうり、がんばってね」

「別に料理はお前も出来るし良いやろ。」

「ってか、こういう時はうんって返せや!まったく......」

とふて寝を始める母、その時に

「うん、一緒に生きるし、死なないよ。」

という、酒に酔ったにしてはきちんとした、幻聴にしてはやけにハッキリとした声が聞こえた気がした。

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