都市開発にロウが関わる理由

都市開発にロウが関わる理由




翡翠色の髪と赤いインナーカラー、ドラゴン使いとしてほぼ標準装備の赤いマント。 白い首輪。

そんなロウが、表情を崩すことは、基本的にない。


たとえ火の中、水の中、草の中、雪の中、嵐の中であろうと。

どこかの伝説ポケモンが通った直後だとかいう、雷の吹き荒れる危険地帯だろうと。


そして、目の前に激辛のカレーがあろうと。



「いいのか?」


目の前には店の主。

剃って光る頭にはねじり鉢巻、太い眉、鋭い眼光、太い腕。

カウンターの向こうからロウを睨む店主の隣には、腕組みをしているオトスパスとスコヴィラン。


冷房が利きすぎて極寒のような、店主たちとロウしか居ない静かな店内。

ぐつぐつと煮える鍋、揺れる蓋。

ほのかに――確実に香る香辛料。


「うちの激辛カレーはそこらの自称激辛とは違う。激辛の中の激辛、至高の芸術品……どんな屈強な男も、たった一口で失神させちまう劇薬だぜ」

「…………」


ロウは黙って座り、ただカレーの完全を待っている。


「マトマの実とノワキの実をふんだんに使った特製ルゥと具材、そこにスコヴィラン自慢のハバネロエキスを大量に詰め込み煮込み続けた、旨味と辛みの爆弾だ。 アンタみたいな細っちい兄ちゃんじゃ匂いだけで倒れるんじゃねえか?」


そう言いながら店主は壁に書かれたポスターを親指で示す。


「たかが一万円と命、天秤にかけるには軽すぎないかい?」


『店主自慢!超超超激辛カレー特盛!三十分以内に完食すれば三万円!』

真っ赤なポスターにはそう書かれている。

ただポスターを見るだけで、辛さがなんとなく伝わってくるかのようだ。


そんなものに、今からロウは挑もうとしていた。



「今までこれを突破した奴は居ねぇ。 これをやると辺り一帯から人間もポケモンも、カビゴンですら消えてしまうほどの、苦情の元さ。 ……見たところ、金に困ってるわけじゃないんだろう?」

「御託はいい」


黙っていたロウが口を開く。

特に感情の伺い知れない冷たく赤い目だ。


「さっさと出せ」

「ケッ、命知らずな兄ちゃんだ。 人が親切で言ってやってるのによ」


そう言いながら店主はニヤリと笑う。

オトスパスは寡黙に頷き、スコヴィランは二つの頭でケラケラと笑った。


「だが――気に入った!」


店主と二匹のポケモンの連携は素早かった。


オトスパスが皿を持つ――ただの皿ではない、大人数で食べる用の寿司桶。

店主は煮込む鍋を開ける――凄まじい辛み。 ただ蓋を開けるだけで店主の顔に汗が噴き出る。


真紅。 ただ真紅。

野菜など大した彩りにならない、オレンの実もかすむほどの、猛烈な辛さ。

ただの人が見れば涙と鼻水が止まらなくなるだろう。



白米を大量に盛り付けるオトスパス。

そこに極悪なカレールゥを大量投入する店主。

更に強烈なハバネロエキスを封じ込めるスコヴィラン。


なんと鮮やかな、一秒の隙間も無い連携。



――――そしてロウの目の前に、地獄が顕現する。



真っ赤なカレールゥ、真っ白な白米。

美しく見事な紅白。 しかしそれは決して祝福ではなく、不吉を知らせる。


見るだけで辛い。

ぜったいにポスターの写真よりも辛い。


気の弱い人間ならこれを見るだけで倒れるだろう――そんな紅白の巨体が、ダイマックスカレーかと思う威容で存在している。

およそ五人前の量だ。

ロウの体格でこんなものが収まるわけがない。



「後悔したってもう遅いぜ。 制限時間は三十分、水はおかわり自由。 食い切れなきゃ金を払ってもらう」


そう言いながらロウの前に、タイマーを置く。

刻まれたデジタルの『30:00』。


「じゃあ、はじめだ」


機械音。


普通サイズのスプーンを手に取ったロウは、一口軽く食べる。

咀嚼。 飲みこむ。


このカレーは激辛愛好家と知られるプロレスラーですら耐えられなかったカレーだ。

それも大盛りときた。


だがロウは、全く顔色を変えない。

コップに入った水に、手を伸ばす素振りも見せない。


二口目。

この速さと量で、制限時間内に食べられるわけがない。

なのにロウは店主を見る。



「店主」

「お、どうした? もう負けを認めるってかい兄ちゃん」


店主はニヤリと笑う。


だがロウは降参を認めることは決してない。

顔色一つ変えず、尋ねる。


「辛さを増すスパイスは置いていないのか」

「あ? んだって?」

「スパイスは無いのか」

「んぁ?」


ぽかんと口を開ける店主。


何を言われたのか、まるで理解出来ない。

そもそも、今ロウが目にしているのがこの店で最も辛い物体だというのに。


店主が驚いている間にオトスパスが『まだいけた』と言う客のために置いている香辛料を瓶ごと渡した。


ロウはそれを受け取ると、蓋を堂々と開けて、全部流し込んでしまった。

何の遠慮も無く、誇張でもなく。

瓶を逆さにひっくり返して、蛮勇にも程がある量を。


元々半分以上入っていた瓶が、空になる。


「お、おい? 分かってんのか? もっと辛くなるんだぞ? 死ぬ気か?」


店主の声など聞いていない。

ロウはその辛い、もはや『痛覚の塊』としか表現出来ないそれを、また一口。



それからは早かった。

この細身に流し込めない量を、信じられない速度で、まるで軽いスープでも飲んでいるかのように、超超超超激辛のカレーが減っていく。



普段は寡黙で冷静なオトスパスですら、目を大きく開いて驚いている。

スコヴィランは口を開けて呆然としている。


いったい何が起きているのか。


此処で店主は気付いた。

目の前の少年、まったく汗をかいていない。

涼しい顔でカレーを消し去っている。


「おい……兄ちゃん、大丈夫なのか……!?」


単純に色々心配して店主は尋ねた。

だがロウは聞いていない。

黙々と、大の大人もカビゴンも嫌がるような辛い物体を、胃の中に消していく。


残り時間、十五分。

異常な速度で五人前のカレーが、姿を消していた。


残された空っぽの寿司桶を前に、ロウはやはり涼しい顔をして座っている。


「…………ハッ、ハハハハ! すげえや! 時間以内に完食したのは兄ちゃんが初めてだよ! 水も飲まずに食いきるか!? その胃にマルノームでも飼ってんのかいっ!?」


店主は大笑いする。


掛け値なしの賞賛を耳にしてもロウはまるで喜ばない。

そんな気取らない様子がまた店主としては面白いものだった。


「いいぜ、持っていきな、この三万円!」


出すこともつい忘れていた三万円を慌てて出して、勢いよく置いた。


「いやぁ久々に面白いモンを見せてもらったぜ。 その様子じゃ、俺達は驕っていたようだ。 俺達も精進しなきゃいけねえ……な、お前ら」

「パァース」「グゥバァー」


オトスパスとスコヴィランは同意の声を上げる。

三万円は痛いが、しかし実にすがすがしい完敗だった。


店主は明るい笑い声をあげる。


そんな店主に構わず、ロウは席を立たず、また店主を見る。



「もう一杯だ」

「ハハハ、なんだそのツラして限界だったのか? ハッハハハハッ、やせ我慢はよくねえぜ兄ちゃん」

「…………」


ロウは溜息を吐く。


「俺を『兄ちゃん』などと呼ぶな」


断固とした物言いだ。


とんでもなく高い矜持と、深すぎる理由があるかのような。

気安く『兄ちゃん』と呼ぶ店主が、実に愚かであるかのようだった。


「そ、そんなに気になったか、すまねえな――――」

「俺をそう呼んでいいのは一人だけだ」

「へ? ああ、そっか。 そいつが大事なんだな、うん、悪かったなお客さん」


物凄く触れてはならない部分な気がする。

厳つい顔だがとても賢明な店主は、すぐに従って呼び方を変えた。



全くの無表情。

店に入った瞬間から他人への思いやりに欠けたような人間に見えるが、そこまで言う存在が居るとは思わなかった。


「んじゃあお客さん、つらいならしばらく座ってていいぜ。 水も、たっぷりあるしな」

「トォス」


そうだぜ、とオトスパスは頷いた。



「………………」


ロウは黙る。

一度だけ、何故か呆れたように肩を小さく落とした。

それから冷ややかな、怒りも何も無い視線。


「もう一杯だ、店主」

「おお、だから座っててもいいって――」

「もう一杯だ。 カレーのおかわりを要求する。 香辛料の瓶も新品一つ貰おう」

「…………」


店主は黙る。

オトスパスは黙る。

スコヴィランも黙る。


いったい、何を要求されているのだろうか。


一人と二匹の頭上に『?』のマークが大量に浮かぶ。

なんといっても目の前のこの少年は、今先程、山かと思うような激辛カレーを完食したばかりだ。


それを『もう一杯』と。



「カレールゥは余りがある。 白米は有るだけでいい。 金ならある」

「……………」


本気だ。

あの目は、間違いなく本気だ。


『足りない』と、己の内の空腹と渇きを示している。


「……ま、まさかっ、テメェが有名なあの大食い野郎……ッ!?」


店主はこの時思い出した。


『最近、この地方の飲食店を荒らす超大食い少年が居る』と。

『どんな量を食べても全く顔色を変えず、汗一つかかないのだ』と。


だが『うちの店舗でそんな事が出来る人間が居るわけがない』と店主は思い上がっていた。

現れたロウが、そんな事が出来るような豪快な体格の人間でなかったこともあって、完全に忘れていた。


しかし全て勘違いだった。


そいつは今、目の前に居る――――ッ!



「トトァ……?」

「グォウバァ……?」


オトスパスとスコヴィランが、驚愕の余りに顎を外しそうになっていた。



――――――――




涼しい顔で店を出たロウは、特に店に思い入れも無く道を歩く。

すりガラスの向こうに見える店内では、店主がツルツルとした頭を抱えており、オトスパスとスコヴィランがなんとか宥めている姿があった。


細く静かな路地には人どころか、ネズミ系のポケモンの姿すら見当たらない。

辺りにはまだ強烈な香辛料の影響が残っていた。



真っ直ぐ歩いて大きな通りに出る。


そこの正面には、黒塗りの車が堂々と路肩に止めてあった。

エンブレムにはギャロップが刻印された有名車メーカーの、間違いなく高級仕様として作られた車だ。

よく洗車されているらしく、昼間の光を眩しく弾いている。


一見よくある小さなビルが並ぶ、雑多な繁華街の一角に止まっていて良いような車ではない。

明らかにそういう筋の者の関係者のものだ――が、ロウにはまるで関係ないし、興味も無いことだった。


車を軽く一瞥するだけで終わり、もう忘れたとばかりに歩いていく。



歩いていれば腰のモンスターボールのうち一つが勝手に開いて、エルフーンが飛び出してしまった。


「フーン!」


勝手に出て来た。

『疲れたぜー』と言わんばかりにエルフーンは大きく伸びをする。


そんなエルフーンを冷ややかにロウは見下ろした。


「勝手に出るな」

「フゥーン?」

「出るな」


と言ったところで、まともに聞くエルフーンではない。

ロウの無表情無愛想から繰り出される冷たい眼光にもすっかり慣れたものだ。


このエルフーンは気まぐれに飛び出し、気まぐれに出歩こうとする。


他のポケモンは従順に従うのにエルフーンは例外だ。

甘やかした覚えはないのに、ワガママである。


「フンッ、フンッ!」


何が言いたいのか、その場で飛び跳ねている。


このエルフーンは主人と違って辛いものが大嫌いで、しかも小食だ。

しかも甘いものが大好きである。 誰に似たのやら。


おそらく、つい先ほどまでの香辛料まみれな臭いの真っただ中に居たことが、甘いもの大好きな彼には我慢ならなかったのだろう。


つまり『待ったご褒美に甘いものを食わせろ』という抗議らしい。



「……ダメだ」

「エルゥ……?」


涙ぐんでの上目遣い。

ロウの足にすがりついてきた。

可愛い見た目のポケモンにこんなことをされて耐えられる人間はそう居ない。


「ダメだ」


が、ロウは例外だった。

可愛いからって優しくしてやるほど慈悲深くない。


ロウは甘いものが心底大嫌いで、エルフーンは小食のくせに自分の胃を過信している。

よってエルフーンの食べ残しをロウが処理することになる。


ただのワガママだ。



「フゥン! フンフンフーン!!」


『やだやだ食いたい』とでも言いたいのか。

エルフーンはぴょんぴょんと飛び跳ねる。


背の綿毛がそれに合わせて揺れた。


見る人が見れば微笑ましい光景だったが、ロウにとっては実に面倒なものだ。



そんな彼らのすぐ近くに、先程の高級車が止まる。

後部座席の扉が開いて、男が出て来た。


「お話中失礼」


ロウはそちらを見ない。


「君が、ロウ君だろう?」

「………………」


ロウは仕方なくそちらを見る。


そこには四十代も過ぎたぐらいの髭面の男が、高そうなスーツを着ている。

襟にはGとドラゴンを組み合わせたようなバッジがつけている。


笑みこそ浮かべているものの、妙に威圧的で恐ろしい男。

が、ロウには関係ない。

怖い顔をしたポケモンだろうと、自分の身分を隠さない人間だろうと、ロウにとっては特別なものに見えない。


男は慣れたように名刺を取り出す。


「私はこういう者で――」

「知っている」


ロウは基本的に他人への関心が無い。

覚えているとすれば妹と、覚える価値のある人間と、必要なので覚えるべき人間、そして妹だ。


そういった中で、ロウは相手の顔を、名刺を見て思い出すまでもなく一方的に知っていた。



「お前はサイランだ」


ロウの出身とは異なる、ドラゴン使いの一族。

この男はその出身で、かつてはジムバッジを全て集めてチャンピオンランクにまで到達。

実力から見れば間違いなく四天王、何処かの地方のチャンピオンとして君臨してもおかしくない。


なのに四天王などの座にはならず、何を思ったのか政治家になった男だ。

ロウはこれぐらいしか知らないが、十分だろう。



「そうか、なら話は早い。 きみと是非ともお話をさせてもらいたい。 ホテルまで送ろう」

「ホテルに用事は無い」


金ならある。

が、豪遊をしたいと思ったことはロウには無い。

野宿で足りている。 ホテルなど無駄だろう。


「そこには良いスイーツ店があってね、君のエルフーンにはとても喜んでもらえるだろう?」

「…………」


ロウは甘いものが嫌いだ。

自主的に立ち寄る理由などまず無い――保存の利いて宅配のしっかりした土産店なら考える、それぐらいだ。

そんな人間に甘味の話をするなど愚かだ。


だがエルフーンが甘いものが大好きだ。

今そこでエルフーンが『甘いものを食わせろ』と抗議しているのを、口に出して言っていなかったのに、この男は分かっている。


「エルゥ……!」


またエルフーンが上目遣いしてきた。

甘いものが食える機会だと察知したのだろう。

食べたいものと同じぐらい甘い声で、ロウにしたたかに訴えてくる。


「選挙活動なら他所でやれ」


残念ながらロウはそれら全てを冷たく切り捨てて、場を離れようとした。

何がしたいのか知らないが、絶対に面倒な話だ。


ロウはモンスターボールを出して、ひどく不満そうな顔のエルフーンを中に戻してしまう。



「ふむ、これはきみにも関係のある話なのだけどね。 実はとあるドラゴン使いの里についてなのだが――――」

「演説も他所でやれ」


そう吐き捨てて、明らかに面倒そうな話から立ち去る。


絶対に面倒なことに巻き込まれる。

ロウにとって巻き込まれてもいいのは妹関係の、妹にとって必要な話だけで――――。



「きみの妹さん、きみの故郷の里長の息子と結婚するそうじゃないか」

「……なんだと?」


ロウは立ち止まり、振り向く。


今までとは全く違う、怒りと覇気で満ちていた。

冗談でも真実でも絶対に許さないと顔に書いてある。


そんな話、ロウは聞いたことがなかった。


「里長の息子殿は立派なドラゴン使い、そんな相手と婚約出来るなど、きみの故郷では『玉の輿』だね」


ロウの故郷に居る、今の里長の息子。

そいつはロウより二つほど年上だ。

里の外に出て修行し、つい最近になって戻ったという。


ロウはその人物と、二度か三度ほどしか会ったことがない。


その上で印象を語るなら、里の教えを遵守させようとする人物だ。

よく言えば真面目、悪く言えば頭が固い。

何より自由奔放な妹サンカと仲がいいかといえば、良いとは思えない。


「お前は何を言っている」

「サンカ君には優秀なお兄さん――つまり、きみが居るからね。 既にジムバッジを全て集めた天才のロウ君? そんなきみの身内である妹、ああ、きっと優秀だろう。 お似合いな二人なのではないかな?」


ドラゴン使いの政治家、サイランは笑って続ける。

自分の発言の意味、それがロウにどう聞こえているのか、全てを分かっている顔だ。



「ああ、サンカ君の年齢だと、結婚というより婚約が正しいか」

「…………」


ロウは最後まで聞かず、踵を返した。



サイランの発言を信じたわけではないが、『有り得ない』と言い切ることは出来ない。


だったら確かめるべきだ。

今から全力で戻って、問いたださなければならない。



「戻ってどうするつもりだい?」


ロウの背中に声が投げかけられる。


「息子殿に暴力を? 妹君を連れ出して逃げる? それとも里が壊れるほどポケモンに暴れさせる。 それではきみが指名手配犯になるかもしれない。 そんなことで、きみの大切な妹を、自由に出来ると思っているのかい?」


構わずサザンドラをモンスターボールから出す。


此処から、ロウの故郷があるイッシュ地方は遠い。

自分の体など構わずサザンドラに飛ばさせて空港に向かって、どんなに早くても夜、いいや朝になるかもしれない。



「俺なら、助けてあげられるよ」


自信に満ちた一言。

サザンドラに乗ろうとしていたロウは、サイランを見る。


「お前に何が出来る」

「出来るとも。 私はあの里にも顔が利く、考え直させることだって出来る。 それになんと言っても、私の方が連絡が早いからね」


ただ、サイランの表情は慈悲深い人物のものではなかった。


時代遅れな結婚話に巻き込まれる幼い少女を助けてあげよう――などと考えてはいない。

『タダで協力するわけがない』と言っている。



サイランはニィと笑って、車の後部座席を自ら開ける。

広々とした車内を示す。


「その為の、大人の話をしようじゃないかロウ君。 大人には大人の戦い方というものがある。 この話は、きみにとっても悪くない話だよ」

「………………」


サザンドラに乗ろうとしたロウは、止める。


サイランの考えは分からない。

だがこの自信満々な態度、妙にロウのことを知っている口調。

聞くだけの価値は、あると感じさせる。



「……聞くだけだ」

「ああ、君が賢明で助かるね」



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