邪視の誕生

邪視の誕生



「ああああああああ!!!!!!!」

辺りを覆いつくさんばかりの黒矢羽の乱舞。

簡易結界で防いで。それでも耐えられなくてギターケースを使って。それでもダメで銃を使って。まだダメで自分の身体を使う。

気がついた時にはもう既に羽は飛んでいなくて、守れた、と思って振り返る。

「…え」

綺麗な顔はそのまま、胸郭は動いていなくて。

「……あ、ぁ」

手首に触れても首に触れても脈動は感じられず。かつて繋いでもらった手はどんどんその温もりと色を失う。

「どう、して」

おにいはパラノーマルのNo.2で。上灘のおにいの右腕で。私の最高の最大の最愛の最強の

「あ、あああああああ」

目の前の黒い人間(かたき)を見やる。

見たことある。お前は誰だ。

「許さない」

おにいちゃんをころしたおまえを。

「ゆるさない」

おにいちゃんをまもれなかったわたしを。

「許さないゆるさないユルサナイ!!!!!!!!!!」

このせかいすべてを。

「ア、アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」

全身が変質していく。

視界が赤く染まり、額が疼いて開いて目の前が開ける。

まずはここから離れなければ。そして身体を癒して、再び復讐に舞い戻るために。

「皆殺しだ」

そうしたら、おにいもよろこんでくれるかな。


…あれ?

おにいって

だれだ っ け


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