避けられなかった運命

避けられなかった運命









「コビーお前次のヒートいつだ?黒ひげの所だろ」

「えっとね……」

「行く前と後で査問会あるんだから覚悟しとけよ」

「嫌ですよね……なんでヤる日数と回数上に報告しなきゃ行けないんでしょう。予定では来週ですね」


この世には男女の性別以外にも第二の性があり、α、β、Ωに分かれていて、海軍に属している人間も殆どがβであるが、上層部にいけば行くほどαの割合は高くなる。


海軍本部にごまんといるアルファの中に希少種とも言えるオメガとして診断を受けたコビーはそのバース性の事実自体も隠さず、またそれを武器にせず己の見聞色と六式で海賊の討伐に日々当たっている。その上ロッキーポート事件では国民を救ったとして国民から信頼が高い。

オメガで番がいない場合には3ヶ月に1度の発情期と毎日一日朝夜の抑制剤を飲む事が義務付けられているのだがコビーには今抑制剤の必要性が薄くなっている。

「つる中将みたいに行ってらっしゃいで送り出してくれればいいのになぁ」

「ヒートになっちゃうと本当行動予定表とか無意味だし…相違する度弁解するのほんと嫌です……」

なんでこんな話をしているんだっけかとヘルメッポは数ヶ月前に起きた大事件とも呼べる出来事の事を思い返していた。








黒ひげに歪んだ執着を向けられ何度も攫われては陵辱紛いの拷問をされ捨てられるという行為が繰り返されて来た頃、元々ヒートというものが薄かったコビーにある変化が起きた

「うーん…?」

「どうした」

「いやなんか今日体調が悪い訳じゃないんだけど思ったように身体が……重い」

この日も黒ひげの元から帰ってきて(正確にはボロボロになった状態で棄てられていたのだが)本部内にある自室で療養していたコビー、相変わらず見た目は元気そうに見えるのだが体内外の怪我が酷く軍医の診断や必要を要する外出以外の行動を禁止されていた。

「ほんとに大丈夫か?医者呼ぶか?なんか体に入れるか?」

「もう大袈裟だなぁヘルメッポさんは、ありがとう大丈夫だよ寝てればそのうち落ち付きますって」

あの戦争で___異常な見聞色の覇気が覚醒した時も無理に体調が悪いのを隠そうとして結局数日寝込んだのを目の前で目撃した時や黒ひげやその海賊団達から歪んだ執着を向けられて攫われた時も無理した顔で「大丈夫ですよ」だなんて言うからヘルメッポからしたら説得力が全くと言ってないのだ。 



今程では無いが昔は「オメガは子供を産むための道具」「なりふり構わず人を誘惑する最低の人間」とオメガと診断された人達は自分の性別をベータとして偽り、当時は法外な値段で取引されていた抑制剤を毎日服用するしか無かった。 

またアルファとオメガの間には「番」という今でも詳細が解明されていないメカニズムがあり、オメガの項をアルファが強く噛むことで2人は生涯のパートナーとなる。 また「運命の番」というものがあり目が会った瞬間に強く引かれ合い離れる事を極端に拒否反応を起こすのである。字面だけだとおとぎ話のように聞こえるが、もしこれが仮に元々交際してる人がいて、自分が好意を全くもっていない人と「運命の番」となった場合には婚姻関係があろうと無かろうと番になってしまえばお互いを求めるしかない為に、最悪な事になるのだろう。

また番に関して破棄できるのがアルファからしか番の解除が出来ない___即ち捨てられたオメガは精神的に病んでしまったりヒート、つまり発情期を抑える術が無くなってしまうのだ、全くもっていい事がない

番のメカニズムを使った奴隷市場は過去に多くあったが今はある程度法や教育が整備されオメガに対する差別も昔程は無くなってきている。


そのお陰なのかコビーも夢だった海軍将校になる事が出来て新たな夢に向かって日々奮闘しているところなのだが……

 そんな事を考えながらコビーの顔を見るとやはり顔がほんのり赤い。幸いヘルメッポはベータな為フェロモンに当てられて項を噛んでしまうということは無いのだが、万が一の事があってはコビーにとって良くないし、ヘルメッポにとってもあまりいい気分にはならない、ましてや黒ひげの所から戻ってきてそんなに日が経ってもいない

だからこそなにか不調があれば今すぐにでも医者に見てもらうべきなのである。

「ヒートはまだ先なんだろ、身体も治りかけなんだしいつもの抑制剤飲んでとりあえず寝てろ」

「はぁい、ヘルメッポさんは心配症だなぁ」

「心配かけてるのはどこの誰だ」

「ふふふ」

「笑ってないで早く寝ろ」

とりあえずこの場は本人が大丈夫って言うならこの場は寝かしておいた方がいいだろう。

ついでに医者に氷枕と体温計でも借りてくるか

そんな事を思いながらヘルメッポはコビーの部屋を出ようとした。

そんな時

「ねぇ、ヘルメッポさん」

「なんだよ」

「今外で甘いものとか焼いてる?」

「いや特に今日はなにか外で炊き出しやるとかは聞いてねぇな、どうした」

「いや、なんか外から甘い匂い、スイーツとかそういう食べ物じゃなくてなんだろう…………とにかく甘い匂い」

お腹空きすぎて脳が糖分欲してるのか?最近ドタバタしすぎて身体だけじゃなくて精神的にも疲れが出てるのだろう。だから自然と甘いものを欲しまうのだろう、ついでに胃に優しいゼリーでも差し入れしてやれば落ち着くだろう。そうヘルメッポは完結した


「ひえっひえっひぇそんな甘いもの欲してる大佐には甘いゼリーでもお持ちしますよ」

「子供扱いしないでください!」

「はいはいすみませんでした。とにかく寝てろ」


そんな会話をしていた矢先



「緊急事態発生!!緊急事態発生!!海軍本部8時の方向黒ひげ海賊団の姿あり!!!繰り返す----」




日常を壊す放送はあっという間に海軍本部中に響き渡り元帥や大将は勿論本部中に散らばっていた海兵たちが一気に目撃場所へ向かい戦闘準備が慌ただしく行われ始めた。

全く平和とか無縁である ましてや相手は黒ひげだ、絶対ここで捕まえるしコビーは離さない。

こいつの部屋は対策も兼ねて奥の方にある。まさか本部にまで襲撃に来るとは思わなかったけど……いやあの戦争の黒ひげの行動とコビーへの執着っぷりを考えれば来るわ。とりあえず部屋の場所さえ知られなきゃいい。

そんな事を思いながらヘルメッポは腰にかけてたククリ刀に手をかけコビーに話しかけた

「黒ひげ来てるしお前は体調が良くないんだから絶対出るなよ!!」

「分かりましたよ…」

「今日こそとっ捕まえてお前の事安心させてやるからな」

「……………」

「そんな心配そうな顔するな、無事に帰ってくるから」



そうして黒ひげを拿捕するために向かっていったヘルメッポにはコビーの「ティーチ来たんだ……………」という言葉が聞こえることは無かった






「ゼハハハハ!!コビー迎えに来たぜェ!! 」

「誰が貴様なんぞにコビーを渡すか!!」

「あァ?知るか俺は欲しいものは手に入れねェと気がすまねぇんだよ」

穏便に帰って頂きたいところだがヘルメッポが現場に着いた時点で黒ひげや幹部達の能力によって海兵達は大量に負傷していた。 航海中に出ている海軍の船を襲撃する事はあっても本部まで襲撃するだなんてそうそう無い コビーを毎度毎度連れ去ってほんと毎回何が目的だこいつは。 


「なんか今日は甘ェ匂いするなぁ」

「私はしないですがね」

「そういえばクザンはどうしたァ」

「古巣なのでお断りしますだとよ」

「ムルンフッフッフ勝手なお人」





身体が重い


匂いがどんどん強くなっていく


この匂いの正体が知りたい。


黒ひげが海軍本部に来たとの緊急伝令を聞き、ヘルメッポが現場に向かった一方、コビーは強くなる匂いに苦しめられていた。

 毎度のように攫われてヘルメッポや海軍いわく「拷問され」棄てられていく一連の行動____実はそこには黒ひげとの秘密の関係があるのだがそれは外には絶対に漏れてはいけない。

オメガであることは世間にも隠していないため最初に攫われた時点で首につけてあるチョーカーを外され無理矢理番にでもされるのかと思っていたが

「あァ?確かにお前ェが欲しいがそれをとって無理矢理しちまったら今後の為に手っ取り早いがそんな趣味はねェ」

だなんていう代わりに暴力的に、けど優しく抱かれてしまった

「う、あっ、や…そこ、っあ」

「あぁ?」

「っひ、やめ、いた」

「いきなり俺のぶち込んだらお前ェの腹破けるだろ」

「ゆび、おっき、あ、っ」

「大佐サマが快楽には弱ェだなんて笑いもんだな!」

「あ、あっやっ、やだ」

「まァここまで入るようになればいいなァ」

だなんていいながらお腹をさすられた時にはいつか入った瞬間の歓喜と逃げられない絶望感でいっぱいいっぱいだったのだが。

そんな事もあり黒ひげとの蜜月があるものの相変わらずヒートは薄く、来てもちょっと熱があるかそのくらいのものだった。

だが今はこの匂いが知りたくて知りたくて仕方ない。ミツバチが花の蜜に誘われるように、抗いたいのに自分が追い求めていて今すぐ包まれたいような、そんな匂いにコビーは囚われていた


「ちょっとだけ…………」

匂いにの正体を探しに行く、なにかしていたら貰ってこよう。

ヘルメッポさんごめんと、もはやこの状況で何もやっているはずはないと普段なら思うはずなのに、匂いによって正常な判断が出来なくなってるコビーは心の中で謝罪しながら自室にかけていたいつも羽織っている正義が書かれたコートを着て身体を引きずるように部屋から出たのであった。




一方その頃ヘルメッポは黒ひげとの戦闘……ではなく幹部達の攻撃に苦戦していた、総大将である黒ひげは元帥と大将が総攻撃に当たっており「何がなんでもここで捕まえる」という気持ちが強い。 今まで何度も嘲笑うかのようにコビーを攫われて溜まるものも溜まっている。

そしてヘルメッポは幹部である女海賊……デボンからの攻撃に応戦していた

「ムルンフフフ貴方が女性なら首を飾りたかったわァ」

「ふざけんなお前も黒ひげと同様にここで捕まえてやるよ」

「坊やにできるかしら?」

情報ではインペルダウンの最地下層にいた海賊だというが黒ひげのところにいるという時点でコビーに酷いことをしてるクソ最低奴等なのには変わりないのである。

「テメェらほんと何が目的だ?コビーを毎回毎回攫ってあんな事して」

ヘルメッポは戦闘中にもかかわらず問いただした

耐えられないのだ、親友で相棒で上官のコビーがボロボロになった状態で発見されるのが どんなに匿ってもやむを得ず僻地へ任務を出しても嘲笑うかのようにその努力はねじ伏せられ黒ひげ達に攫われていくのが。

「あの子は提督のお姫様よ」

「あ?」

「提督のお姫様を連れて帰って何が悪いのかしら?」

ムルンフッフッフと笑いながら攻撃してくる目の前のデボンにヘルメッポは「やっぱこいつら正気じゃねえ!!」とそう確信して再び攻撃を再開するのであった






こっちからにおいがする、ひどく甘くて爽やかで誘惑的な でも包容力のある、そんな においが

匂いに導かれるようにヘルメッポに不調を訴えた時よりもはるかに顔は赤く高揚し息も上がりながらコビーは壁に這いながら匂いが強くする方へ向かっていった。

自室で療養中と聞いていたはずのコビーが黒ひげがいる場所に近づくのを目撃した海兵は続々と近寄ってくる

「大佐?!」

「大佐待って下さい!!そっちには黒ひげが元帥たちと交戦中です!」

「部屋に戻ってください!」

「おい誰かヘルメッポ少佐呼んでこい!!」

そんな海兵たちの会話と問いかけにも耳を向けずコビーはひたすらに匂いの方へ向かう


早く


はやく


その匂いがなにか僕はしりたい


そして角を曲がった時見えたのは

ヘルメッポがデボンと戦っているそう離れてないところで黒ひげが元帥と戦っている所だった。

「………あ」

いた

匂いの正体




あれは  ティーチ? なんで? ティーチからなんでその匂いが




そんなコビーの願いが通じたのか戦闘中だった黒ひげとぱちんとパズルのピースがハマるように目が合った だがそれがいけなかった


まって においが いままででいちばん強い 

はやく 早く噛んで 僕の項を今すぐ 

僕をティーチのものにして

駄目 僕は大将になる男

それがなに 目の前に僕のアルファが

あとから考えればいい

いや まって たすけて 匂いから 

うそ はやく はやくかんで、!!


その願いが通じたのか、もしくは黒ひげも同じ匂いに惹かれたのか周辺にいた元帥含む将校が気づいた時にはストロンガーに乗ってコビーの事を抱き抱えていた

「よォ久しぶりだなァ」

「ティーチ、匂い、落ち着く、」

「まさかとは思ってたが周りの反応見ると匂いに反応してるのは俺だけだ、つまり分かるか?」

コビーと黒ひげの会話を聞いていたヘルメッポは察して絶望した やめろ、つまりこいつとコビーは

「なに?」

それ以上いうな、もはや匂いの正体につつまれたコビーはまともな判断能力を失っておりあのままだと導き出される答えはひとつしかない

「俺とお前ェは運命の番って奴だ」

「うんめい?」

「あァ」

黒ひげがコビーのチョーカーを優しい手つきでなぞる

周囲に緊張が走る 目の前のデボンは笑っていた

まるでこの事実を分かっていたかのように

「でも運命の番って最初にあった時から惹かれ合うって」

「それは俺も知らねェ お前が発情期薄いってのが関係あったんじゃねェか?いまいち解明されてないメカニズムだしな」

まるで御伽噺をするかのように会話をするふたりだが今は戦闘真っ只中であり元帥達はコビーがいなければ今すぐ黒ひげ及び仲間を諸共一網打尽にする勢いだ。

「なぁコビー俺はこの匂いがお前と同様酷く心地いい上にお前を他の奴に盗られるのが当たり前だがこの時点で虫唾が走る」

「うん」

「だからその首につけてるもん外してくれねェか」

そう言って黒ひげはコビーのチョーカーに触れた

「………あ、えと、これ、は」

まずい、不味い不味い不味い!!

さすがのコビーも海軍としての意識がまだ残ってるのかオメガとしての防衛本能なのかチョーカーに触れずにいた。

コビーの首につけてるチョーカーの解除方法は指紋認証と鍵だが指紋認証のみでは開かず、ヘルメッポが持っている鍵で開けることでチョーカーは外れる。

 無理に外そうとすればその瞬間相手にも、もちろんつけてるコビーにも全身に強力な電気ショックが走る諸刃の剣である。

「なァ、これがタダでは取れねェ事は察してる。なんせオメガであっても国民の支持を得る英雄を守りたい海軍の魂胆丸見えだからなぁ」

本心は知らねぇが、と黒ひげはぼやく

「だから俺はお前の意思でどうしたいか聞きてぇ」

「ぼくの?」

「あぁ、お前がこのまま番契約をしねぇならそれでもいい、ただし俺と運命の番ってこう面前に知られた以上海軍でのお前ェの処遇は知ったこっちゃねぇがな」

「あ…………」

黒ひげの言う通り確かにただでさえ密接な状況な上に番契約しませんでしたさようならでこの海軍で済むわけが無い、このままだと良くてインペルダウン悪くて処刑だ、答えはあるようで無いのと同じだ。

「だけどなァコビー、番をすれば海軍は手を出せなくなる。お前はその理由を知っているだろう?番になったオメガに対してはアルファ側が解除を持ち掛けない限りいかなる理由を持ってでも引き離してはならないってな」

まさかとは思うが海軍が運命の相手が四皇だからって引き離すわけ無いよなァ そう元帥達に問いかける黒ひげは頭が回るのかコビーを手に入れる為に調べたのか、真相は分からないし知りたくもない。そんな事をヘルメッポは思いながらコビーが出す結論を待っていた


「…………僕は」

「おう」

「大将の座についてルフィさんや貴方みたいな悪い人を捕まえるのが夢です」

「でも今はあなたの腕の中にいることがとても落ち着くし今すぐにでも、って思います」

「なので これだけ言っておきます」

「僕は絶対貴方を捕まえてインペルダウンに収監します。それだけ覚えおいてください、黒ひげ」

そういうコビーはなけなしの理性で思いっきり睨みつけながら宣言した

「ゼハハハハ!!!!できるとイイなぁ!!英雄コビー大佐!!!」



やっぱそうなるのかと、願ってもいないが神様はこちら側には微笑んでくれなかったとヘルメッポは静かに思いながらコビーの元に向かった。 目の前にいたはずのデボンはいつの間にかいなくなっていた、まるでこうなることを分かっていたかのように。 


「お前いいのか?黒ひげと番なんて」

「酷いなぁヘルメッポさん さっきの会話聞いてたでしょ、大丈夫だよ 多分だけど」

「お前の大丈夫は信用ならねぇんだよ……ほら外すぞ」

「うん」



コビーが指紋認証で第一段階の鍵を外した後ヘルメッポが首についている鍵穴に鍵を入れ回すとチョーカーが外れる仕組みとなっている


ガチャン

そうして露わになった綺麗な状態でのコビーの項が黒ひげに向けられる


ここからはもう当人同士のプライバシーだ ヘルメッポは鍵を外したとして立ち合えるが元帥や大将、他将校達は口出す権利すらない、後ろ向きたくないが恐ろしい雰囲気になっている事は見なくてもわかる。昔からガープ中将の厳しい特訓を受けてて良かった、じゃなきゃ大量の覇気で気を失ったな、この後の処理が大変だなぁ、こんな瓦礫の山の中で項噛む奴等お前らぐらいだ、そんな事をヘルメッポは思いながら2人を見ていた




「噛むぞ」

「はい」


そう言って黒ひげはコビーの項に思いっきり噛み付いた。まるでこいつは一生自分のものだと、そう周りに見せつけるように


ガリッ 

「いっ………あ、!」


ああ、この幸福感、噛まれた、ぼくの運命、僕の、大好き 

な、僕はこれからどうなるんだろう

もう何も考えたくない、今すぐ抱いてこの人に孕まされたい、思いっきり打ちつけられて種を残したい はやく

項を噛まれたことによって身体は作り替えられてしまい、多幸感から黒ひげに項を噛まれながらそんな事をコビーも考えていた。


「終わったぞ」

「?ティーチ?」

「コビーお前ェ何考えてるか全部顔に出てるしそれ目の前にいる奴や海軍の野郎共に見られてる事忘れんなよ」

「……….?」

そう笑いながら黒ひげは言うが項を噛まれた今コビーは本格的にヒートに入ってしまい正常な判断は出来ていない。

現に黒ひげの事をティーチと呼んでいるのが何よりの証拠である。今は番の腕の中にいるという安心さですりすりと黒ひげに擦り寄っている

元帥や大将、はたまた黒ひげ海賊団の幹部達(クザンはいないが)そしてコビーのチョーカーを外したヘルメッポ、各重要人物が大量にいる前で、だ

海軍の人間がいる前で正気のコビーなら絶対にやらない行動をヒートという状況下な中でその行動である。

控えめに言って地獄の空気である、黒ひげは何処吹く風だが。


「じゃあ俺の番も手に入った事だし殺される前に帰るぜェ!!安心しなコビーは発情期終わったらちゃんと返してやるよォ!!」

そう言って仲間の能力を使い黒ひげ達は消えて行った



「…………」

「………………は?」

「…………………あ゛?」

「うわぁ………」



その後の事はもう阿鼻叫喚を書いたような状態で大変だった 嵐のように起きた出来事の情報処理、本部内の被害確認、報道各社への情報規制、コビーの処遇etc 

処遇に関してはガープ中将が上手いこと収めたらしく減給半年と次のヒートまで黒ひげへの面会の一切禁止におさまった。

 特に黒ひげに対してどう対応するかはコビーが正式な番となった上にオメガとの「そういう行為をする」という宣言と共に(合法的に)連れ去られた後即緊急会議が行われた。

四皇の中の1人と番関係を結んでしまった以上無理に拿捕して処刑してしまえばパートナーのコビーに想像をはるかに超えるストレスがかかってしまう。 それならいっその事黒ひげをインペルダウンへ収監し時期になったらコビーを通わせるのはどうか、いやそうしたら海軍としての風紀とルールがetc…

 チョーカーを外した責任がある以上会議に参加する事になったヘルメッポは「くだらねぇ〜〜」と思いながら過ごしていた。

このくだらない会議の間には2人はよろしくやっているのだからどうにでもなれと、 世間に情報規制したって相手は"あの"黒ひげだ。どうせどこからか漏れてモルガンズに追いかけられるのも時間の問題なのだから 結果的に漏れるものは漏れてしまい"あの"四皇黒ひげと英雄であるコビー大佐が「運命の番」だと世間にバレて一時的に大騒動になるも、世間の子供や女性達はロマンスのような話には弱く「アルファに何かされたらすぐ言ってくださいね!」だなんてコビーの味方するのだ。

そんな事遠くない未来のことはつゆ知らず、ヘルメッポは無意味過ぎる会議に出席をするのであった。






「ちょっとヘルメッポさん聞いてます?」

そんなコビーの問いかけにヘルメッポは意識を向けた、あれから山のような報告書に追われ大変だったなぁとまるで他人事のように答えた

「ごめん聞いてなかった、何」

「えっ冷たい」

「お前が黒ひげと番になった時の大惨事を思い出してたんだよ」

「そんな大惨事だなんて………」

そう悲しそうに零すコビーにはあの時つけていたチョーカーはなく今はその代わりにべらぼうに高そうな、でもデザインがそこまで派手でもないネックレスが首元に飾っていた。

どうやら「「お前ェは俺の番で一生離す気も無い、もう俺以外に噛まれる事もねェしフェロモンも振りまく事もねえだろ」って ティーチがくれたんです。素敵でしょう?」と黒ひげからプレゼントされたという。

あの後本格的にヒートを起こしたコビーに誘発されて黒ひげもラット__アルファにおけるヒートを黒ひげは起こしてしまいお互い落ち着くまで飲まず食わずよろしくやっていたという。

ヘルメッポの予想はあながち間違っていなかったという事だ

 あの出来事以降結果的に超臨時措置として海軍側はヘルメッポを、そして黒ひげ海賊団側は青雉元大将____クザンをお互い中間役に置き、どちらかがヒートの期間は手を出さないという形で治まった。 ただしそれ以外の期間中の航海にて遭遇した場合はパートナーだろうと関係なく拿捕行為に当たるという。



「お前いいのか?仮にも運命の番が海軍に捕まっても」

「番的には全く良くありませんよ。ただ」

「ただ?」

「僕の将来の夢は昔も今も変わっていません、ヘルメッポさんがそれをいちばん知っているでしょう?」



そう言いながら微笑むコビーの項にはあの時噛まれた歯型が何かを主張するかのようにハッキリと残っていた




この後何回目かのヒートでコビーが黒ひげの子供を身ごもり大騒動になったり、突然巣作り行動を起こしてクザンを呼び出ししたりするのはまた別の話だったりする

Report Page