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ここだけゾロがルナーリア族Part2の145※閲覧注意
※【ここだけゾロがルナーリア族】のスレより
※ゾローリアの更にIFネタ
※ファンタジスタした幼少ゾロがキングに拾われ百獣海賊団所属√
※幼少ゾロはくいなと約束する前
※くいな生存&麦わらの一味√
※CPはゾロ×日和
※IFネタの派生⇒百獣√
※キャラエミュが微妙
※文才なしの駄文
※捏造設定あり
※それでも良い方のみ、お読み下さい
アルベルに保護されてから、2年くらい経った。
2年間、アルベルはおれが村に帰りたいのならと、ずっとシモツキ村を探してくれていた。
島の名前とか、他の村の名前とか知ってれば良かったんだけど、おれは知らなかったから…。
そして、おれは今、アルベルに連れられて東の海に来ていた。
「この辺りに何か見覚えは?」
アルベルに問いかけられる。
周りを見渡し、首を振る。
「…無い、けど…他の島から荷物を届けに来た、村で見た事がある顔があったから…一方的に知ってるだけだけど」
場所は見た事が無かったけど、村に出入りしていた商いの人は居た事を伝える。
「…そうか。なら、次からはこの辺りを中心に探そう」
アルベルは1つ頷くと、なんてこともないように次の約束をしてくれる。
身長はどうにもならないから、翼が目立たない様にと揃いのマントで翼を隠してくれてるのに…なんてこともない、なんて、そんな訳ないんだけどな。
「…ありがとな」
その事にお礼を言えば、マスクの下で笑った気配がして。
「見つけた!!」
不意に、声をかけられた。
「…“雛”」
アルベルが確認する様におれを呼ぶ。
「…知らない。村の人間じゃ無い」
じっ…と、声をかけてきた男を確認して、おれは一度も見た事が無い人間だと伝える。
「だ、そうだが?」
おれが伝えるとアルベルは男を睨みながら牽制する。
そんなアルベルを余所に、男は…
「見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた!見つけた!!前は村にいたのに居なくなっていたようやく見つけたあぁ早くはやく早くはやく早くはやくはやくはやくはやく早く調べたい!ルナーリア族の末裔!!!さぁ!実けンガァ゙ッ?!?!」
壊れた様に話し続けていて、ルナーリア族という単語が出て、驚いたおれに手が伸びて来ようとした。
でも、アルベルがそれを男の口と喉を掴む事で遮る。
「……“雛”、目を瞑って耳を塞げ」
「…ぇ」
今まで聞いた事が無いような冷淡な声で、そう告げられて。
おれは、アルベルを見上げる。
「ンギィィ!?」
口を塞がれているのに声を出そうとする男を、鈍い光を宿した紅い目で見据えていて。
「薄汚い鳴き声で喚くな、まだ情報を吐かせていないのに喉を潰したくなる」
おれに告げた時はまだ温度があったんだと思う程、氷みたいに冷たい声で男に言うのを、おれは見ている事しか出来なくて。
「ン゙ンン」
暴れようとする男を軽々と押さえつけたまま、
「さて───────────
───そうか、もう死ね」
アルベルは、襤褸雑巾みたいに痛めつけた男から情報を引き出していった。
多分…今までは、おれには見せない様に努めていてくれたんだろう。
そんなアルベルに、おれは声をかけた。
「…なぁ」
アルベルは驚いた風に、おれを見る。
「ッ!!…見て、いたのか」
おれが平和に暮らしていたから、本当は見せたく無かったんだろうな。
「…あんたが話してたのは、こういうことなんだな」
真っ直ぐにアルベルを見つめながら、言う。
この2年間で、アルベルと同じルナーリア族の血を継いでいて、おれは先祖返りだという事も…それにともなう“世界の闇”も教えてくれていた。
それでも、教えてくれていた事は、表面上の事だったんだろう。
「…“雛”」
おれの言葉に、おれが本当の意味で教えてくれた事を理解したのがわかったみたいで…。
アルベルは複雑そうな目をしていて。
「おれが村に戻ると、同じ事が起こる可能性がある?」
静かに問いかける。
「……ある。人の口に戸は立てられないからな…“雛”の話を聞く限り、村人自体は平気だろうが」
僅かに瞳を揺らして…でも、直ぐにおれを見て、アルベルは答えてくれた。
「村に出入りする人間?」
「そうだ」
村人が平気なら…そう思って聞いてみれば、間違っていなかったのか頷かれた。
「…おれは、村に帰らない方が良いか?」
おれは今まで聞かなかった事をアルベルに聞いた。
「……村人で対応出来るとは思わない」
直接的な答えじゃなかったけど、それこそが答えで。
「そっか」
おれは、ようやく納得する事が出来た。
「なぁ…」
「…あぁ」
アルベルに声をかければ、静かに応えてくれる。
「おれは、アルベルと一緒に帰る。村には行かない」
だから…アルベルと“帰る”事を選択して、村には“行かない”事を選択した。
「…良いんだな?ゾロ」
念を押すように確認してくるアルベルに、無言のまま頷いて肯定した。
おれが選択してからは、早かった。
翼が目立たない様にしていたマントを脱いだアルベルは、先程の男も、話を聞いていた…逃げていった人間達も、島ごと焼き尽くして消した。
それを見て…やっぱり、おれには見せない様にしていたんだろうと確信した。
「では、帰るぞ」
生き残りがいない事を確認したアルベルは、おれに“帰るぞ”と言う。
おれが選択していなかった時は、“戻る”としか言わなかったから…。
「わかった」
頷いて、アルベルが抱き上げる為に差し出してくれる腕に掴まる。
炎で焦土と化した島を、おれはただ見つめる。
「……ルナーリア族だとバレたら…少しでも情報が漏れたなら、“こうするしかない”んだな」
おれもアルベルも、“こうするしか”普通に生きて行く事は難しいんだな…。
そんな風に呟くおれに、アルベルは言葉をくれなかったけど。
おれを抱き上げる腕に僅かに力が籠もった。
それが、アルベルの答えだったんだろう。