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「……」
浦原にここで見ている様に言われた三人は近くのコンクリートで出来た、少し薄汚れているビルの一室から一護達が戦っている様子を目撃していた。
今まさに戦っている歪から出てきた巨体な虚、メノスグランデ。それは常人が見たのなら失神して居ても不思議ではないほどに…人間の恐怖を煽る姿をしていた。が、しかし2人はそれを見ても先程まで虚を知らなかった一般人にしてはやけに落ち着いてる
「石田と…隣にいる一護は見えるか?」
茶渡は自身の左側で窓からメノスグランデを無言で見ていた璃鷹と織姫に話しかけた。織姫はいつもより覇気が無い返事を返した。
「うん」
織姫はただ真っ直ぐと真剣な顔で一護達が戦っている様子を見ている。璃鷹は茶渡に質問を返した。
「茶渡くんはどう?しっかり見えてる?」
「いや…俺にはかすれて見えるな」
璃鷹の言葉に返事をした茶渡の後に「…ここで見ててください…か」と織姫が声を出した。
「見て それから選べってことかな…あたし達の歩く道を…」
「………」
──確実に…浦原喜助という死神は何かをかくしている…いくら才能があるといえど実戦経験もない素人に一護の虚退治を手伝わせても利益になるとは考えにくい…。なら狙いは恐らく2人を餌に使って一護に何かを手伝わせるため…?
璃鷹が窓の外を見ながらそう怪しんでいると…織姫が璃鷹と茶渡に向かってか細い声を出した。
「…茶渡くん…鳶栖さん…あたし達… …どうしたらいいのかなぁ…?」
俯いており顔は見えないが不安そうにそう声を出した織姫に茶渡は黙ったまま何も言わなかった。
璃鷹は神妙な顔つきの2人に声をかけた。
「2人はどうしたい?また戦いたい?」
「それは…」
「悩んでるみたいだからこれは私からのアドバイス…になるのかな?参考になるのかはわからないけど」
璃鷹はそう一言前置きをして2人に話始めた。
「私は必ずしも2人が絶対に戦う必要はないと思うよ」
「…え?」
「それは…」
2人が驚いているのを他所に璃鷹は続けて言った。
「もちろん2人が強いのは知ってるよ、能力とかそういう話じゃなくて…精神的な意味でだけど」
「…でもだからこそ…2人は今回初めて虚と戦ったけど…今もう一度戦えって言われたらどうかな?」
「……!」
璃鷹は2人に忠告を促す様な口調で問いかけた。
「井上さんの戦った虚…あのレベルならまだ可愛い方だけど…2人が見た虚よりも残酷で強力な力を持った虚がこの空座町に来ないとも限らないでしょ?」
おそらく今の2人が戦えば勝敗が目に見えている実例を上げた。
「──今まさに、竜ちゃんと一護が戦ってるあの虚みたいにね」
璃鷹が言うと「竜…?」「…ちゃん?」とそのいきなり現れた単語に目を丸くして驚愕している2人を璃鷹はスルーした。
「仲間が増えるのはいい事だよ。一護の負担も減るだろうし、…でも必ずしも茶渡くんと井上さんに戦って欲しいわけじゃない」
「一護だって2人に何かあったら嫌だろうし」と付け加えると織姫が「黒崎くん…」と反応した。
「ピンと来ないだろうけど2人は見ず知らずの人達のために命懸けで誰かを助けようとできる人なんだ。だからこそ悔いが残らない様にちゃんと悩んだ上で決めて欲しい」
「……」
璃鷹は最後に「自分が死んだ時に悲しむ人がいるって、覚えておいて」と一言言うとその一室から出ようと扉に向かって歩いて行く。
「待って!どこに行くの…?」
織姫がそう言って心配そうに璃鷹を引き止める。
璃鷹はそれに足を止めて返事をした。
「もう終わったみたいだから一護達の様子を見に行ってくるだけだよ」
指を刺された方向を見渡すともう既にあの巨大な虚は居なかった。
「まだ危ないんじゃないのか…?」
先程までうじゃうじゃいた虚の群れを心配して茶渡もそう声をかけた。
「あの程度なら問題ないから大丈夫!」
「でも」
「2人は危ないからここに居てね」
そういうと扉を開けて璃鷹は外に出た。
「鳶栖さん…」
「……鳶栖」