遭遇?

遭遇?


「ぁううぅぅぅうぅ……」

゛…………”


「ひどく怪しい生徒が居るので調査をして欲しい」。そんな話を受け、私は彼女の居るトリニティへと赴いた。

生徒の名は「二ムツ」。「ニムツ(にむつ)」ではなく「二ムツ(したながむつ)」、と読むそうで。


「へうぅぅぅぅぅ……」

゛…………”


この生徒の情報は、酷く錯綜している。

初めから疑って掛かるのは良くない、と事前の聞き取り調査を行ったところ、その評判は人により真逆。

「穏やかな音楽家」「良く通る声で優しく話をしてくれる」「デカい」「いつも穏やかな笑顔」「ほとんど牛」

「怪しげな策謀家」「比喩を交えて此方の秘密を詰る」「5mぐらい無い?」「薄ら笑いが怖い」「うおでか」

……まぁ、一部共通項もあるのだが。それはそうとして、聞く人によっては彼女を優しい人物か、或いは、

その、色々と足りていない人物と評するし、ひどく怪しい策略家として評する人物も居る。


「はひぃぃぃぃぃ……」

゛…………”


その彼女が、今、私の目の前にいた。汗でぴったりと張り付いたシスター服(?)は彼女の見事な

プロポーションを惜しむ事なく周囲に見せつける……まぁ、自分の他には周囲に人はいないのだが。

……取り合えず、まずは話しかけてみよう……。


゛……大丈夫?”

「はひぃ……?」


覗き込むように影を作り問うと、彼女は切れ長の目をゆっくりと此方に向けた。

焦点の定まらぬ目つきで此方を見やる彼女の赤い眼は、確かに何処か怪しい雰囲気を醸し出す。

ともすれば引き込まれそうな程に、不可思議に輝いて見えた。


「へぇっとほぉ……おかしのざいりょうをかいにいったんだけどォ……」


やや間延びした、疲れ果てた声で彼女が言葉を続ける。


「とちゅうでナシコちゃんとはぐれちゃってェ……さがしてたんだけどォ……」


ナシコ?


「つかれちゃってェ……もういっぽもうごけなくてへぇ……」

゛……そっかぁ……”


そういう彼女は、疲れ果てた犬のように舌を出し、へーへーと息を荒くしている。地面に這いつくばりながらも、

舌を直接着けないように手の上に乗せているのはせめてもの意地なのだろうか。

……さて、どうしたものか……。



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