遭遇、というより奇襲

遭遇、というより奇襲

追記5/22

S鰐S駱駝

時系列も設定もふんわりしている

inクロスギルド





 クロコダイルは激怒した。

 理由は至極単純なものだ。キャメルの腕にしがみつく、黒い羽根を背にした少年達を睨みつける。

「そんなに怒らないでよ、面白いでしょう」

「…………………ハァ。おれは兄貴に常識を説こうなんざ、今更考えちゃいねェけどよ。コレはマズいだろ」

 少年達の顔立ちは、幼い頃のクロコダイル、キャメルに瓜ふたつだ。S・アリゲーターは敵意を感じたのかクロコダイルを睨みつけた。

「見て、この顔そっくり、小さな頃みたいで可愛いよ!」

「おれはこんなに敵意を剥き出しにしねぇぞ」

「似てないってこと?」

「似てる似てないの話じゃねェよ!何処から拾ったんだ……」

 サイズから考えても、普通の人間ではない。ルナーリアという種族らしい。そしてなにより、自分と異常なほど似ていることを考えれば、ベガパンクの制作物であることなど明白だ。

 こんなところにいていいはずがない。どうやってここに持ってきたのか、それを考えるだけでクロコダイルは頭痛がする。

 無言でキャメルの腕にしがみつくS・アリゲーター。S・キャラバンは不気味な能面のような表情のまま、S・アリゲーターのもう片方の手をとっていた。仲良し兄弟、それがより一層クロコダイルの苛立ちを加速させる。

「キャメル、あんまり甘やかすな。お前らもガキじゃあるまいし、いつまでもひっついてんじゃねェぞ」

 クロコダイルの言葉に反応するように、キャメルの背後にいたS・アリゲーターとS・キャラバンが縮こまった。その表情を見て、クロコダイルの怒りもやや収まる。しかしすぐにまた別の怒りが湧いて出た。

「おい兄貴、テメェまさかとは思うがこいつら……」

「流石、話が早いね。ここに置かせてもらえないかなぁって」

 クロコダイルは深く溜め息をつく。もう何を言っても無駄だと悟ったのだ。予想通り、ここに住まわせる気だった。託児所じゃねぇんだぞ、というセリフを吐く元気もない。

 キャメルのことだ、どうせ「面白そうだったから」とかいう理由だろうと、クロコダイルはすぐに思い至った。面白そうで出来る程、簡単な強奪ではないのだが、彼は兄のそういうところに絶大な信頼を置いている。出来そうだからしたのだろう。後先考えずに、と昔の記憶が頭をよぎった。

 クロコダイルは彼ら兵器についているはずの追跡チップ等を怪訝に思い問い詰めたが、不気味な二人曰く問題ないらしい。

「おれはプロトタイプだから、ない」

「……おれは外した」

「どうやってだ」

「さァな」

 幼い顔立ちと人を小馬鹿にしたような表情がミスマッチだ。キャメルはクロにそっくり!と笑うがこれを可愛いと表現するセンスを疑う。

「でも良かった、クロのことだから砂にするかと思ったよ」

「しようとも思ったんだぜ?」

 尋常でない強さはひと目見て感じ取っている。利用価値は十二分にあるだろう。いざ制御できなければ渇かすだけで事足りる、とクロコダイルは考えた。

「天幕を設営させる。何、俺達以外にはただ変わった新入りにしか見えないだろうさ」

 貧相な体格に傷のない顔。肌の色も何もかもが違えば、どうのこうの言われることはない。純粋な戦力としては大歓迎だ。

「二人とも、良かったね」

 ぎこちなくも嬉しそうに笑うキャメル。S・キャラバンは、無表情のままクロコダイルに歩み寄る。柔らかな手を伸ばしてそれが頭の上に置かれるまで、クロコダイルは何の違和感も覚えなかった。

「なッ」

「いい子」

 ワックスがつくのもお構いなしのセラフィムに、優しく撫でられている。クロスギルドのフィクサーとあろうものが何故か動けない。

 幼いキャメルのようなルナーリアは気を良くしたのか、ごく自然にそのままクロコダイルの頭を抱きしめ、耳元に口を寄せた。

「弟の手に、触られたらだめ」

「は?」

 S・キャラバンはクロコダイルが意味を反芻する前に開放し、軽やかな足取りで自らの弟のそばに駆け寄った。

「さ、クロの仕事の邪魔しちゃ悪いから、二人とも別のところ行こうか」

「……そうしてくれ」

 ダズを探しに部屋を後にしたキャメルと、その後ろをついていく黒い羽を生やした兄弟の姿に、何故かクロコダイルの胸に郷愁の思いが浮かんだ。



𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄



「セラフィム、あんま詳しくないけどね。私の方は非能力者だって。プロトタイプで作られたって言ってたでしょ」

 キャメルは執務室の机に浅く腰掛けながら紅茶を啜る。高価な椅子に腰掛けたクロコダイルが自ら淹れたものだ。クロスギルドで使っている茶葉はMr.3もといギャルディーノこだわりのものらしく、甘い香りがキャメルのお気に入りでもあった。

「俺の模造品は砂になれるのか」

「ロギアは再現が出来ないんだって。だからあの子は違う実の能力を持ってるみたい」

「ほう、何だ?」

「パラミシア系の……知ってるよね、ホビホビだよ」

 クロコダイルの口角が釣り上がる。なんて強力な能力者だ!笑いが止まらない。キャメルは「何となくでやってみただけで、量産する気はないんだって」と聞いた話を伝えている。クロコダイルは更に笑うしかなかった。

 ホビホビの能力でドフラミンゴがしでかした事を聞いた時、クロコダイルは勿体無さを感じていた。——俺の方が上手く使えるに違いないと思っていたところにこのチャンス。量産されていないのも、本来の持ち主が囚われていることも都合がいい。しかも本体がルナーリアであり、抜群の耐久性があると来た。

「クハハ……いいじゃねぇか、S・アリゲーター」

 やりたい謀略がいくつもある。何から手を付けようか、と息巻いているクロコダイルの額をキャメルが小突いた。

「クロ、ダメだよ。あの子はクロじゃないんだから」

「んあ……でも俺のコピーなんだぜ」

「それでも私の弟はお前だけだ」

 机の上に乗り上げたキャメルはクロコダイルの顔を両手で挟む。クロコダイルは押し黙った。逆光で見上げた表情は読めないが、何か怒りのトリガーを引いたらしい。ぼんやりと、先程のセラフィムと似た仕草だなと思った。

「だから、ちゃんとお願いするんだよ」

「……分かったよ」

 鉤爪を胸にとんと当て、体を離させる。我儘きいてくれてありがとうね、とキャメルは優しく微笑んだ。ここなら安心だ、と笑うので、クロコダイルは不機嫌そうに顔を背けるしかなかった。

 キャメルは弟に迷惑をかけると分かっていて無茶をすることは今までなかった。勿論、迷惑をかけられたことがないとはクロコダイルも口が裂けても言わないだろうが。

 彼は物事を自分だけで片付けてしまうから、姿を消したり、気が向いた時にだけ居座ったり出来た。傍若無人に振る舞っているようで、そこの線引きはかなりはっきりしているのがキャメルだった。

 クロコダイルは火のついた葉巻を手に煙を燻らす。

「あの二人のこと、大分気に入ったんだな」

「気に入るとは少し違うよ。クロに見せたくて……違うかな、私もよくわからない。クロにそっくりな顔で助けを求められたから、かなぁ」

「……じゃあ最後まで投げ出さず、しっかり面倒見るんだな、お兄ちゃん?」

「最初からそのつもりだって。やめてよ含み持たせないで」

 くすりと笑うキャメルは、クロコダイルの心境など微塵も理解していないようだった。








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感想スレ⑰-31のテレグラフがとても好きで……

神絵師に影響されてホビられたS駱駝も書きたかったけど筆が遅くて届きませんでした


S🐊がクロコダイルを消そうとしてるのを知ってるS🐫が守ろうとする図が書きたかったのだろう、遅筆


S🐊→S🐫も🐫も大好き。🐊は好きじゃない。スキがあればホビホビしたい。両手にお兄ちゃんしたい。あわよくば記憶をいい感じにしてクロスギルドごと乗っ取れないかな…とか考えてるけどこっちは割とどうでもいい。

S🐫→S🐊大好き。🐫はよくわからないけどS🐊を大切にしてくれる人認識。🐊のことは、よく分からないけど(そこまで似てないので)可愛がりたい衝動がある。

🐊→セラフィムは戦力扱い。二人に深い感情はない。

🐫→なんでか分からないけど二人とも放っておけない。


みたいなイメージある


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蛇足

ホビダイルの追記読んでしまいましたありがとう

影響されやすい…

校正してないので雰囲気で読んで頭空にしてください



「……いいのか、そんなに侮って」

「侮るも何も、それが今のお前の実力だとも、セラフィム君?」

クロコダイルとセラフィム・アリゲーターが対峙する。会議室には二人に加えて、もう一人のセラフィムが入り口に立っていた。

「……キャラバン、こっち来い」

「なに?」

 爬虫類の名を冠する天使は忌々しげにS・キャラバンの手を強引につかむ。彼の横にいつの間にかピンクの大きなぬいぐるみが出現していた。

 呆気にとられるクロコダイル。——こいつはなぜぬいぐるみを抱いて、というより大きなぬいぐるみに抱えられたまま、こんなにおれを睨みつけている……?

「おれはもう一つ、コレがほしいんだよ。分かるだろ?」

 にっこりと、幼き日のクロコダイルと同じ顔の少年は目を細めて、肩に回されたふわふわの手を宝物のように撫でる。

「テメェ何言って」

 クロコダイルがホビホビの能力に思い至った瞬間、能力が解除された。ぬいぐるみは何事もなかったかのように、キャラバンを形取る。

「くはは!さてクロコダイル!お前の大切なものをおれが従えていると言ったら……ッ」

「随分と虫唾が走る話だなァ?」

 戦闘経験の差か、先に相手を捉えたのはクロコダイルのフックだった。どちらの能力の発動が早いかなど、二人はわかっている。

「……クソ」

「おれは忘れていない、が答えだクソガキ」 

 うつ伏せに引き倒され、背中を踏まれた少年はそれ以上の抵抗をすることができなかった。

 S・アリゲーターの策は概ね正しい。目の前で大切な兄をダシに挑発し、自身が忘れているかもしれない人間を人質に取る。それだけでクロコダイルの脳は熟考を始め、動きに制限がかけられるはずだった。思慮深い男に対しては、たった一度イニシアチブを取るだけで効果は絶大だ。

 しかし、かたやクロコダイルはセラフィムの想定以上に容赦が無かった。彼にとってかけがえのない人間などいないに等しい。兄の存在を忘れていない以上、躊躇の必要もなくS・アリゲーターの首を狙うことができたのだ。

 尤もこれは、自身の模倣品がダズやミホークなどの人材の価値を理解していない訳がない、という自分の審美眼への信頼と、ここまで強大な力をハッタリにすることはしても、軽率に使うわけがないという頭脳戦の強さあってのものだ。

「自身が頑丈だと、策に雑な所が出てくる。緻密に長期的な策略でも立てるんだなァ。まぁ、その度胸は認めてやってもいい」

「……あんまりおれの弟をいじめないでくれるかな」

 キャラバンは静かにクロコダイルの腕に触れた。クロコダイルは相変わらず彼の動きを感知できなかったが、やはり敵意はない。横長の珍しい瞳孔と数秒見つめ合い、根負けして足を退ける。

「ありがとう。さあ立って。怪我はないね」

「当たり前だ」

 セラフィムの兄弟が手を取り合う絵画のような光景。クロコダイルは興味なさそうにしていたが、廊下をご機嫌に歩いてくる足音に気がついた。

「クロ、ミホークからシュークリーム貰った……よ…………4つある、から……」

 突然湧いてきた暴君こと兄キャメルに全員が戸惑う。本人は自分の取り分が1つになったことを誰よりも早く察知し、部屋の扉を開けた瞬間しょぼくれているのだが。

 S・アリゲーターは行動が早かった。何事もなかったかのように手袋を後ろ手で嵌めると、キャメルの空いた腕を取る。

「おれもいいのか、キャメルの好物だろ」

「いいよ、一つ選んで」

 猫を被る自らの模造品に顔が引き攣ったが、兄の「クロもこうだったなぁ」という破顔に耐えきれず、地を這うような声が出た。

「おちょくってんのかクソガキ」

「ちょっと!」

 




かわいこぶるS・アリゲーター、本人は効果ありだと思っているが実は誰にも効いていない

S・キャラバンは鰐が一方的に尊敬の念(神聖視?)だけを抱いてた頃にそっくりなので兄より勝てない


駱駝の二人は鰐ズが喧嘩しててもじゃれ合いだと思っている


という妄言でした。

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