遭逢
「顔色が悪すぎますよ。大丈夫ですか?」
「…は?」
ほとんど同じくらいの身長の男に突然手を包むように握られてつい声が出てしまう。しかも、さっき見た時にマーちゃん…正義に似てるなと思ってしまった男性。
それだけで体が硬直してしまい、動けなくなってしまう。
何も言わないからなのか、目の前の男性は更に詰め寄る。距離感というものがないの?という思考すらも儘ならない
「…あの、大丈夫ですか?顔色が本当に悪いですし、休まれた方が…」
「ぁ」
アタシが初めてあの二人に出会った時のことを何故か思い出した。……思い出さなければよかったと、すぐに後悔する。
『きみ、大丈夫?』
手を差し出されたのは、はじめてだった。だから、最初は拒絶した。いいことなんかないのは、知っていたから
『……あっちいって
アンタも、どうせからかいにきたんでしょ。どっかいかないなら殴るわよ』
『殴られたくは無いけど、寂しそうだったから…ねぇあっちに一緒にいこう?僕の仲間もいるんだ。女の子なんだけどね?ほら行こう!』
『ちょ、ひっぱんないでよ…!』
強引で乱暴、けど少しの優しさを感じるような手の引き方をされたことを何百年も前だが覚えている。
あぁ、この声は……その時の声と同じだ
目の前にいる男が、かつて自分と一緒にいた"正義"であることが分かってしまった。
「ぅ、あ…!」
だからこそ、感情が抑えられない。
『触るなよ、気持ち悪いな』
『すぐに人を信じるなんてただの馬鹿だろ』
呪いのように今も鼓膜に張り付いている言葉……それが溢れる
長雨で地すべりが起きやすくなった山のように、春になるにつれてゆっくりと氷が解け雪崩が起きやすくなった地面のように…
長く溜まっていたものが流れる時ほど、早いものは無い。
どうして、なんで?
しんようすることを おしえたのはそっちなのに
あのとき てをはらったくせに
おいていったのに
きもちわるいって いったのに
なんで
いまさら このてを つかむの
「う、わぁああああああああああああああ!!!!!ア゛、あぁっああ!!!!!!
はなせ!!はなしてッいや…!!いやっ、いやだッ!!わああああァァァアアアアア!!やだっ、やだやだやだやだ!!あああああああああア゙ア゙ア゙!」
ただ、叫ぶ。体が動かない分叫ぶことしか出来ない