適当に書いてみた
前スレで書くって言った人です『天才』とは、ひとりでは決して『天才』たり得ない生き物である。見つける者がいて初めて、その輪郭を成す。
これは『天才』凪誠士郎の物語──、
「(あっラッキー、足でスマホ取れた)」
──訂正、これは『天才』と勘違いされている、俺、凪誠士郎の物語だ。
ジリリリリリ!!
早朝、マンションの一室で目覚まし時計が鳴り響く。音に反応して、ひとりの青年が時計を止めた。
「ヤバ、また時計止め忘れた」
散らばった筆記用具のひとつを持って伸びをする。顔には、一欠片の眠気も見られない。それも当然、彼は、これまで机に向かっていたからだ。
「白宝高、勉強難しすぎない……?」
どうして彼──凪がこんなに朝早くから勉強しているかと言うと、理由は簡単。
「面倒くさい、けど、勉強しないと、『サボってるのにテストの順位トップクラスなのカッケー』出来ないから……」
そう。いわゆる中二病というものだからだ!
凪はこれまで、割と順調な人生を送ってきたつもりだ。
両親は放任主義だが、愛情を与えられて育ってきたし、中学までは勉強しなくてもテストでトップは当たり前だった。友だち? チョキ可愛いよね。
勧められた白宝高校は、将来楽にできるならと思って頑張って勉強して、やっぱり無理だと思いながら受験したら、まさかまさかで受かったし。
俺って運が良いんだなー、と思いながら、凪は白宝高校に通い始めて、愕然とした。
『(あれ、思ったよりテストの順位取れない)』
そりゃそうだ。進学校の白宝高校を舐めすぎていた高校1年生の凪は、まぁそれでもいっかーと思いかけて……、思い付いた。
『(……いや、でも、いかにも面倒くさそーって顔した奴がテストで高順位だったら、格好良くない?)』
既に中二病に片足突っ込んでいた凪は、自分の天才的な考えにいたく感銘した。ついでに、天才的な考えができるなら、天才の真似もできるんじゃないかと思って、天才にもなりたくなった。
『よし。天才キャラに、俺はなる』
そのときから、彼は天才キャラを演じ始めたのだった。
ということで、現在高校2年生の『天才』、凪誠士郎の朝に戻ってみよう。
「あー、デイリーこなさなきゃ」
勉強を終えた凪は、ベッドに寝っ転がってゲームを始めた。正直ゲームをやる時間なんてあったら他のことをした方が良いのだが、ゲームは数少ない趣味。それに、朝にデイリーをこなすことで、勉強なんてしてない感が出る。一石二鳥。
普通にアバターが死んで、もう一回始めたところで、腹の音が盛大に鳴り響く。
「(あー……、お腹減ったぁ……)」
ヘッドショットを決めて、面倒くさそうに起き上がる。
「(ご飯食べるの、面倒くさー)」
この思考も、凪の毎日のルーティーンに等しい。
「(なんで人間はお腹が減るんだろ……。減らなきゃ食べなくていいのに……。食べなきゃ磨かなくていいのに……)」
と思いながらもシャワーまで浴びているのはツッコまれそうだが、天才は清潔感も大事なのだ。仕方無い。
「(学校がなきゃ……、いや、学校がなきゃ天才ムーブできねー)」
まぁ、とにかく、生きるのって面倒くさい。凪は面倒くさいと思いながらも、天才に成るという大切な生きがいがあるので。
「んじゃ、チョキ。行ってきますピース」
チョキにさえ中二病を発揮しながら、今日も家を出るのであった。