運命の贈り物

運命の贈り物

ななし

「え、何で・・・」


アドは目の前の悪魔の実を持ち上げる。アドの姉がつい先日ある事件を引き起こして命を落とした。アドにとってはそれがどうしても耐えきれず塞ぎこんでいた。しかし生きているのだからお腹が減ってしまい最初はそのことを気にもしない彼女だったが流石に耐え切れずにある夜遅くに果実でも食べようかと果実が置いてある樽の蓋を開けた時に一番上にそれがあった。


アドはその実自体は見たことが無かった。その実の能力者は彼女の物心がつく前に悪魔の実を食べていたからである。悪魔の実図鑑と言うものもあるがアドはその図鑑を見たことが無かった。だがアドにはその悪魔の実が何の実か不思議と理解できた。


「これ、お姉ちゃんの・・・」


そうそれは彼女の姉“ウタ”のウタウタの実だった。彼女“ウタ”が亡くなったのはこの船の上でだった。ウタウタの実はウタが亡くなった時にこの船の果実に宿っていたのだった。その悪魔の実はアドの形見の品であるためアド自身が食したい気持ちがあった。しかし・・・


「私には・・・ナギナギの力がある・・・」


アドはナギナギの実の能力者であった。悪魔の実の能力は一人につき一つしか得ることが出来ず、既に悪魔の実を食べた者が二つ目の実を口にすると、体が跡形もなく飛び散って死ぬということが世界では知られている。ゆえにアドはウタウタの実が食べれなかった。


「誰かに食べられるくらいなら私が欲しい・・・けど食べたら死んじゃう・・・どうすれば・・・」


彼女は迷った、迷いに迷って一つの例外を思いだした。彼女はウタウタの実を持って自室に戻り電伝虫を使ってある人物に連絡を入れる。


「・・・久しぶりです、マルコさん。あなたに聞きたいことがあって連絡しました」


「珍しいよい。そっちから連絡して来るなんてな」


彼女が電伝虫で連絡を入れたのは元白ひげ海賊団1番隊隊長兼船医の不死鳥マルコだった。


「ある悪魔の実を手にしまして、それを使えるようにしたいんです」


「お前・・・言ってる言葉の意味を理解してんのかよい?」


「はい。でもそれほどに私はこの能力が欲しいんです。だから教えてください。二年前にシャンクスに話していたあなたの言う黒ひげの体の異形の話を」


そうこの世界に今悪魔の実の能力を複数所持している海賊がいる。それが四皇黒ひげマーシャル・D・ティーチ。二年前の頂上戦争で元四皇白ひげからグラグラの実を奪い、世界で初のヤミヤミの実とグラグラの実二つの悪魔の実の能力者になった男だった。


「確かにそれをすれば悪魔の実をもう一つ食っても問題はねぇだろうよい。だが奴とは違ってお前は後天的に体を異形にする。生まれた時から異形の奴とは違って何が起こるかわからねえよい」


「それでもいいんです。お願いします!私にその話を聞かせてください!!」


アドは電伝虫越しに頭を下げた。電伝虫からため息が聞こえる。


「しかたねえよい、わかった。奴の体の秘密を教えてやる良い」


不死鳥マルコが折れて黒ひげの体の異形について話始めた。黒ひげの体の中にはもう一つの心臓が存在する。それが原因で悪魔の実の能力を複数持てたとマルコは説明する。これをアドがクリアするとなると自身の体の中にもう一つの心臓を移植しなければならない。


「正直に言ってお前にそんな無茶はしてほしくはないが止めてもするつもりなんだろう?」


「ええ。それに私には頼りになるお医者さんがいるので。マルコさん、ありがとうございました!」


「ああ。俺に手伝えることなら何でも言ってくれよい」


そう言って電伝虫の通信が切れる。次に彼女は別の人物に連絡を取るために連絡を入れた。


「「ガチャ」もしもし、トラ男くん?あのね・・・」



レッド・フォース号の広い部屋の中にアドと赤髪海賊団ではない海賊トラファルガー・ローがいた。壁際には赤髪海賊団の船医ホンゴウがいた。


「急に電伝虫で連絡が来たから何かと思えば、心臓を移植してほしいだと?しかも心臓を入れ替えるわけじゃなくて追加するとか何考えてる?」


彼はアドに質問を飛ばす。それに対し少しビクビクしながらも彼女は答える。


「あ、あることをするために心臓が二つ必要でして・・・追加で心臓を内蔵に移植するとなると私が知ってる中でトラ男くんが一番信頼できるというか・・・なんというか・・・」


「なんだそれは・・・おい、本当にいいのか?」


ローはホンゴウに確認をする。


「ああ、ちゃんと赤髪海賊団全員で話し合って決めたことだ。問題ねえよ。俺は万が一の為にここにいるだけだ」


その言葉にローはため息を吐きながらも手術の準備を開始する。


「それで、本当にこいつの心臓を移植していいんだな?」


ローが指差している場所には棺桶の中で眠るウタの姿があった。


「うん、お姉ちゃんとは双子で相性がいいし、他人の心臓を入れるくらいならお姉ちゃんの方が良い」


これについても赤髪海賊団で決めたことだった。


「わかった、なら何も言わねえ。さっさと手術台に寝な。気を楽にしろ、すぐに終わる」


そう言われて手術台に寝たアドにローは麻酔を打ち心臓移植の手術を始めるのだった。



手術は無事に終わり、翌日を迎えていた。アドの前には赤髪海賊団、それにローがいる。その理由は・・・


「じゃあ・・・食べるね・・・」


アドはウタウタの実を持って食べた。移植した心臓が無事に動いていたためウタウタの実を食したところだ。


「・・・!!・・ウッ・・・アァ・・・」


赤髪海賊団とローは悪魔の実が非常にまずいことを知っているためそれによって気分が悪いのだろうと思っていた。しかし実際は・・・


(何これ!?心臓が苦しい!!体中が痛い!!寒い!!熱い!!どうなってるの!?)


アドの体はもう一つの悪魔の実を食したことで体内の悪魔が暴れ出していた。今のアドに実のアジなんか気にしている余裕はない。


(やっぱり無謀だったのかな。悪魔の実を二つもこの体に受け入れるなんて)


苦しみながらもアドは自責の念に包まれていく。ただでさえ普段からネガティブ寄りなのに最近まで姉のことで塞ぎこんでいたのだ、少しでも悪いことを考えると次から次と負の感情が湧いてくる。


(お姉ちゃんごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい)


もはやアドの頭の中には姉への謝罪の言葉しか残っていなかった。




しかし・・・



『もうそんなこと気にしてないよ。アドはアドが私のことを考えていてくれてことがあの時に分かったから』


声が聞こえながらアドの両肩に重さを感じない手が置かれる。アドの眼には最後に見た姉の靴が見えた。そんなことが無いと思いながらも涙があふれて止まらない。


『いい、アド。今あなたの体は私の心臓が移植されてすぐだから私の心臓の方に行かずにすでにあるナギナギの方に行って苦しくなっているだけ。だから自分の心臓の方に来ている力を意識しながら私の心臓の方に流すイメージを強く持って・・・』


姉からのアドバイスにアドは泣きながらも言われた通りに行う。すると体の痛みがスゥーッと引いていった。


「お姉ちゃん、ありが・・・」


彼女は顔を上げたが前にいたのは彼女の様子を見ていた皆だけだった。皆急に泣き出した彼女に対しておろおろしていたようだった。

だけど・・・


『もう泣き虫はいなくなったかな?』


とまたあの声が聞こえた。私はその声に私は笑いながら答える。


「あはははは、まだわかんないや」



ある少女は今ワノ国の鬼のような形をした大岩がある島、鬼ヶ島の建物内の最も高い場所から下の様子を見ていた。下では侍たちとある海賊たちの討ち入りに紛れて同じくワノ国に来ていた不死鳥マルコと一緒に侵入していた。


「ありがとうございます、マルコさん。おかげで助かりました」


「いや気にするなよい。こっちもお前に参加してくれてるだけで心強いよい」


上から下を見ていたのはアドだった。アドは下で暴れている麦わら帽子をかぶった海賊を眺めて笑みを浮かべている。


「さてじゃあ私もそろそろ行きますか」


座っていた彼女は立ち上がり・・・


パチンッ!!!


と大きな音を指で鳴らすと今までうるさかった建物内が一瞬で静かになる。


「どーーーーーーーーもーーーーーーーー!!赤髪海賊団幹部のアドでーーーーーーーーす!!!・・・全部の音切ってるし大声出さなくていいじゃん。おっとと反省はあとあと。さて皆さん今私の覚醒した能力の力で皆さんが発する音を消しました。今ここでは私以外の人が音を立てることができません。そして私は今もう一つの悪魔の実の能力を所持しています。私の新しい悪魔の実の能力“ウタウタ”の力を味わっていてください!!」


そう言うと彼女は息を吸う。ハートの海賊団やキッド海賊団など前能力者ウタが使ったその実の恐ろしさを思い出し耳をふさぐ。侍たちや百獣海賊団の面々も同じように耳をふさぐ。


アドは姉の代表曲“新時代”をうたい始める。


「お前ら!!歌を聞いたら終わりだぞ!!・・・!?」


「しっかりと耳をふさぐんだ!!・・・!?」


悪魔の実の能力で静かな空間だったのに急にたくさんの人が音を出している。目の前には空中で浮遊しているアドの姿がある。つまり・・・


「クソ!!ウタウタの世界に引き込まれた!!だがなぜだ!俺たちは耳をふさいでいたはず!!」


百獣海賊団の一人が大声を上げるそれにアドがチラ見すると指をパチンと鳴らせばもう一人のアドが出てくる。


「私のナギナギの覚醒能力はですね、私以外の人が立てる音が聞こえなくなるというものです。それには当然耳をふさいだことで小さくなった音というのも対象だということです。なのでいくら強く耳をふさいでも意味ないですよ」


アドの言葉にその場のすべての人物が絶句する。そんなものもはや反則ではないかっと。


「さて、」


赤髪海賊団幹部


「では百獣海賊団の皆さん・・・」


蜃気楼改め音の支配者


「楽しんでいきましょう・・・」


アド


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