運命の分かれ道 その1

 運命の分かれ道 その1

8歳差ルウタたまらんマン

今日も釣り糸をたらし魚を待つ 


隣では少女がかつての航海の話をして楽しませようとしている


男の名はモンキー・D・ルフィ かつて海軍将校として名を馳せていたものの、世界に絶望し海軍を退役 東の海のフーシャ村で漁師として身をおいている


少女の名はウタ 赤髪海賊団 大頭 “赤髪のシャンクス”の娘であり赤髪海賊団の音楽家である 天性の歌の才能を持ち、己の歌で世界を変える夢を持っている


この日、何の変哲もない日常から、運命がほんの少し変わろうとしていた


「そうだ! 次の航海なんだけどね、こっそりシャンクスたちから話を聞いちゃってどこに行くか分かっちゃったの!」


「へぇ… 次はどの島に行くんだ?」


「それがね! エレジアっていう音楽が栄えた島に行くんだって!」


「エレジア…? あそこか…」


ルフィは、海軍時代エレジアに行ったことがあった


任務を終え、帰りの補給のために立ち寄ろうとした際偶然にも海賊の襲撃を受けているところを発見した


誰よりも先に海賊を倒し、ひとの良い国王から何度も感謝されたのを覚えている


「ルフィ知ってるの!? どんな島だった!?」


「…… 教えねぇ! 教えちまったらせっかくの航海もつまんねぇだろ?」


「たしかに… …ねぇルフィ! 今回の航海こそは付いてきてくれるよね!」


「………」


普段なら、フーシャ村を離れないためにも断るところであった…


しかし、ルフィは“妙な胸騒ぎ”を感じていた


この航海に付いていかなければ、“ウタと離れ離れになってしまう”ような


この航海に付いていかなければ、“ウタに二度と会えなくなる”ような


そんな変な予感がルフィを襲った


「…… たまにはいいかもしれねぇな…」


「へ…? 今なんて…」


「シャンクスに伝えといてくれ 今回はおれも航海に着いていくって」


「ッ〜! わたし、シャンクスに伝えてくるね!!」


「…… なんもなきゃ、それでよしだな」



この妙な胸騒ぎが、気の所為であることを祈った


―――


「じゃあ村長 しばらく留守にするけどよろしく頼むよ」


「構わんわい ここしばらくは海賊も山賊も来とらん 海に出れば気分転換にもなるだろう」


「怪我や風邪に気を付けてね ルフィ」


「おう!」


「よぉーしお前ら! 出港だぁ!!」


\オォー!!!/


赤髪海賊団にルフィを乗せ、レッド・フォース号はエレジアへと向かった


―――


「えへへ♪ 海に出てもルフィと一緒だなんて夢見たい♪」


「別におれがいたところで航海に変わることなんてねぇだろ」


「違うもん! “まいにちがバライロ”ってやつだよ!」


「そんなもんかぁ?」


「ウタのやつ 最近は海に出るとずっとフーシャ村の方を見てばっかだったのに 今回は楽しそうだな」


「なぁベック おれはあの光景を喜んで見ればいいのか悲しんで見ればいいのか分からんよ…」


「だったらまず酒を手放せお頭…」


―――


レッド・フォース号がエレジアに近付いてきた頃…


「なぁシャンクス 少しいいか」


「ん? どうしたルフィ」


神妙な面持ちで、ルフィが話をした


「……今回の航海の目的だよ エレジアはたしかに良い国だけど、海賊が行くような島でもねぇ」


「………」


「お前たちがそういう事をしないのは分かってるけど、金目のものがあるわけでも珍しい特産物があるわけでもねぇ ただ音楽が栄えてる賑やかな国だ」


「………」


「……… ウタを船から降ろすのか」


「……… 分かるだろルフィ あいつの歌声は世界中のすべての人たちを幸せにすることが出来るって」


「それは…… そうだな…」


「エレジアに行って、音楽を勉強して あいつの歌が今よりももっと良くなるってんだったら その方がずっといい」


「………」


「海賊の船に乗っているよりも、エレジアで暮らしている方が幸せなはずさ……」


「…… それでいいんだな…」


「あぁ… この世界に平和や平等なんてものは存在しない… だからこそあいつの歌をおれたちが縛りつけるわけにはいかない……」


「……そうかもな」


「あいつの力なら…… あいつの歌なら…… この世界を変えることが出来るって信じてるんだ…… だからこそ、あいつをエレジアで降ろすつもりさ」


「………」


船は、静かに目的地へと向かっていた…


―――

“音楽の国 エレジア”


「うわぁ〜…… ここがエレジア!」


「海賊なのに港から入国してくのかよ…」


「こっちに敵意が無いと分かってくれれば迎えてくれるはずさ… ……ん?」


1人の男がシャンクスたちに駆け寄ってきた


「ハァ… ハァ… き、君たちは海賊か…!?」


「あぁ おれたちは「頼む!! このまま帰ってくれ!!」……」


男が土下座をして、シャンクスたちに頼み込んだ…


「この国には珍しい物も金目になる物も無い! 海賊を追い返せるほどの防衛力も無い…! ただ食料や医薬品ならある!! このまま何もせずに帰ってくれれば海軍には何も言わない…! だから…」


男が捲し立てる中、ルフィが前に出た 


「待ってくれ!! ゴードン!!」


「君は… ルフィくん!?」


「久しぶりだな〜! 元気そうで良かった!」


「おいおい… 知り合いなら先に言ってくれよ…」


「か、海兵の君が何故海賊と…!?」


「…… 色々あって海軍は辞めたんだ 今はフーシャ村ってとこで漁師をやってる」


「そ、そうなのか… だが何故海賊の船に…」


「こいつらがエレジアに行くって聞いてな 久し振りにゴードンの顔が見たくなったから着いてきたんだ 

それに、気になることもあってな」


「気になること…?」


「まぁ、ちょっとした勘違いかもしれねぇから気にしなくていいよ」


「そうか… そ、それよりも… だ、大丈夫なのか彼らは…?」


ゴードンが不安そうな目で赤髪海賊団の面々を見る


「悪いことするような奴らじゃねぇさ 万が一にでも何かあったらおれが止める だから安心してくれ」


「あぁ… 君がそう言ってくれるのなら安心できる… 申し訳ない… 君たちを悪者扱いしてしまって…」


「大丈夫さ おれたちは海賊 そんなの慣れっこだ おれはシャンクス 赤髪海賊団の船長をやってる あんたは?」


「私はゴードン エレジアの国王だ」


「そうか しばらくの間よろしく頼むゴードン」


「ねぇルフィ 国王さまがこんなとこに来て大丈夫なのかな?」


「あの人はすげぇ優しいからな 国民が傷付くくらいなら自分から前に出ようとするんだ」


「へぇ〜… 良い人なんだね!」


―――


赤髪海賊団がエレジアに着いてからというもの、国は大いに沸き立っていた


天性の歌声を持つウタが表れたからだ


国に着いてシャンクスがゴードンに彼女を紹介し、歌声を聞かせてみるとゴードンはその場で泣いてしまった


ゴードンがこれまでの人生で1度も聞いたことがないようなウタの歌声に、涙を流して感動したのだ


一通り泣き終えてからゴードンは「我が国には音楽に関するあらゆる環境が整っている!!」「国を挙げて歓迎する!!」

と物凄い熱意で彼女を勧誘し始めた


戸惑うウタを見て「ならせめてこの国の人たちに君の歌声を聞かせてやってほしい!! 皆もきっと感動してくれるはずだ!!」と彼女に持ちかけてきた


周りからの勧めもあってウタはエレジアのコンサートホールで歌声を披露した


歌を披露した後は、予想通りの大歓声 


多くの国民がウタの歌声に感激し、彼女に拍手と歓声を送った


赤髪海賊団とルフィは、その光景を満足げに眺めていた


コンサートが終わると国を挙げてのもてなしが始まった


ウタという天才をエレジアに連れてきてくれた事に対して国民中が感謝を伝えたいと言い、ゴードンもそれに賛同した


歌い、笑い、もてなしと称した宴は国中を巻き込んで盛り上がっていた


―――


宴の最中、シャンクスとウタが2人でどこかへ行った


恐らく船を降りるかどうかの話をしたのだろう、盗み聞きをしようとしたが野暮だと思いルフィは2人を待った


少しして帰ってきた2人の顔は晴れやかであった どんな結果であれウタの決意が固まったのであろうことが察せられた


宴は一日中続き、ウタの歌声はエレジア中に響き渡った


そんな中、少女に黒い影が忍び寄っていた…

Report Page