運び屋と何でも屋と買い物デートをして…前編
「ふふっ…♡あの子ももう起きてるかしら……♡」
鼻歌混じりに桃色の長い髪を揺らし、一人の美女が朝焼けに染まった街を歩く。
ハンディーレディを名乗る彼女は、この街で何でも屋を営みながら、パートナーである男子学生との情事を日々楽しんでいた。
今日もまた彼が住む部屋を訪れ、彼との情事を楽しむつもりである。
「昨日は運び屋の番だったのが癪に障るけど…」
件の男子学生のもう一人のパートナーであるI:Pマスカレーナ。裏社会で運び屋として名を上げている彼女もまた、彼との逢瀬を楽しんでおり、そのことがハンディーレディにとっては少し面白くなかった。
「ま、今日はあたしがいっぱい可愛がってあげるんだから……♡」
再び鼻歌を奏でながら、彼女は上機嫌で歩みを続ける。
そして、男子学生の住んでいる部屋の前までやってくると、ポケットからカードキーを取り出して、慣れた手つきでカギを開ける。
「おはよ…!もう起きてるみたいね……って、どうしたのそれ?」
部屋の中には、既に目を覚ました男子学生がいた。上裸のままベッドから身体を起こし、その横ではマスカレーナがだらしない顔をして惰眠をむさぼっている。
ハンディーレディが気にしているのは、彼のその身体。胸元から首元まで赤い痕が散らばっており、それを彼は痒そうに爪で引っ掻いている。
男子学生は昨晩のことを少し恥ずかしそうに口にする。
昨晩のマスカレーナは仕事に失敗したようで、珍しく酒を持ち込んで彼に酔ったまましつこく絡んできたらしい。
始めは身体を寄せて頬に軽い口づけを落とすだけだったのだが、お互い気持ちが高ぶってそのまま行為に及び、その間何度も何度も身体中にキスマークを付けられたそうだ。
「あはは…それでそんな状態に……まったく運び屋は本当にもう……」
ハンディーレディは呆れたようにため息をこぼす。よく見ると、部屋に置かれた折り畳み式のテーブルの上には500mlの空き缶が何本も転がっている。その量を見るにマスカレーナは酒に強い体質のようだが、それでも飲み過ぎだと分かる量だ。
ハンディーレディはマスカレーナを揺すりながら声をかける。
「ほら早く起きなさいよ、運び屋。あんたも今日は出かけるんでしょ?」
「むぅ~……あの子から起こしてもらわないと起きれない~……」
「はぁ…まったくもう……ごめんね…?運び屋のこと、起こしてもらっていい?」
ハンディーレディは申し訳なさそうに男子学生に頼み込む。男子学生はそれに頷くと、マスカレーナの肩に手を置いて、身体を軽く揺さぶる。
「う……うぅん……?キスで起こしてくれないとヤダ~……」
男子学生もこれには苦笑し、マスカレーナの唇に自分の唇を軽く重ねる。
「んちゅっ……♡んん……♡」
重ねるだけの口づけの後、男子学生が唇を離すと、マスカレーナは嬉しそうに身体をくねらせながら起き上がる。
少し緊張気味で、ぎこちないキスではあったが、そんなものであってもマスカレーナにとっては気分を高めるには十分なものだった。
「えへへ♡おはよ~♡…って、頭痛い~……」
起き上がったマスカレーナはそのまま男子学生に抱き着き、その胸に顔を埋めると、そう呟きながら頭を押さえた。
この様子だと、昨夜はずいぶんと彼に甘えていたことだろう。
普段はからかい混じりに彼を甘やかすマスカレーナだが、酔うと意外に甘えたがりになるのだろう。
「頭痛いのはあんたが飲み過ぎたからでしょ……ほら、スポドリ持ってきたから飲みなさい」
ハンディーレディは呆れた様子で彼女にペットボトルを手渡す。マスカレーナはそれを受け取ると、キャップを開けてそれを飲み始める。
「ふぅ…どーもね~……ん~、染みる~……♪」
「ほら、頭痛が治まったら服を着てよね…?君も、これから出かけるんだから準備してくれる?」
ハンディーに従って男子学生は着替えようと、クローゼットへ向かっていく。体中のキスマークを気にしてか、どうやら長袖のインナーを着ることにしたようだ。
そんな彼を一瞥すると、今度はマスカレーナの方へ眼を向ける。
彼女もまただらだらとしながらも、ハンディーに言われたとおりに服へと手を伸ばし始める。
それを見て満足したのか、ハンディーは部屋を出ていくことにした。
「それじゃあ私は先に行ってるから。ちゃんと待ち合わせの場所には来るのよ?……ちゅっ♡」
そう言い残し、ハンディーレディは男子学生の部屋を出ていく。ただ、最後に男子学生の頬に口づけをしていったのは、彼女もまたマスカレーナに嫉妬しているからかもしれない。
彼女らとパートナーとなって一か月ほど経っているが、こうして日常的にキスをされることに、男子学生はいまだ慣れないでいた。
彼女にキスをされた頬をそっと撫で、男子学生は改めて着替え始めるのだった。
「あっ!待ってたわよ!ちゃんと時間通りに来たわね」
男子学生が待ち合わせ場所に来たのは、ハンディーレディが部屋にやってきたときから一時間後のことだった。
都市の中心部から少し離れた場所にある駅前広場。男子学生だけではなくマスカレーナも、彼に続くように待ち合わせ場所へ歩いてきた。彼女の服装はいつものライダースーツや仕事用のサイバースーツではなく、黒のパーカーに黒いキャップという、普段の彼女からはイメージしづらい無難なコーデだった。
仕事柄、人から恨みを買いやすいため、あまり目立つ格好は控えるようにしているのかもしれない。
「運び屋も時間通りね……前に二人であったときは二時間も待たされたのに…この子と一緒だとちゃんと時間守るのね?」
「別に~?この子がどうしてもあたしとデートしたいって言うから、仕方なく来てあげただ~け♡」
マスカレーナが男子学生の腕に抱き着きながら応える。普段よりも厚着をしているが、相変わらず彼女の胸のふくらみは男子学生の腕を包んでおり、その感触はしっかりと伝わってきていた。
流石に公共の場でいちゃつくのが恥ずかしいのか、思わず男子学生も腕からふりほどこうとするが、彼女がそれを許さない。
「だ~め♡今日はずっとあんたにくっついてるからね?なんてったってあんたはあたしのパートナー…なんだから♡」
耳元でわざと吐息交じりに囁くマスカレーナ。男子学生も顔を真っ赤に染めて、されるがままになってしまう。だが、こうして包み隠さず好意をぶつけられるというのは、決して悪い気はしなかった。
と言っても、そんな二人の様子を見ていい気分になれていない人物もいるわけで……
「……そんなに鼻の下伸ばしちゃって…そんなに運び屋に抱き着かれるのが良いんだ……なら、私も……」
マスカレーナに対抗するように、ハンディーレディは男子学生のもう片方の腕を取り、その腕に自分の胸を押しつける。
二人に挟まれてその自慢の胸を押し付けられる。そんな状況に、男子学生は顔を真っ赤にしながら戸惑ってしまう。
周囲からの視線も集まり、居心地が悪い。だが、二人はそんなことを気にしている様子はなく、そのまま歩き始めた。
「ほら、今日はいろんなところを見て回るんだから、ちゃんとついてきてよね?」
「そうそう♪初めてのデートなんだから、た~っぷり楽しませてあげないとね♡」
二人は上機嫌で歩みを進めながら、時折男子学生に身体を寄せ、その耳元でささやきかける。そのたびに彼は顔を真っ赤に染めて言葉を詰まらせてしまうが、そんな様子が彼女らには可愛く映るようだ。
なんとか二人に引きずられないようにと、男子学生は歩みを進める。
デートをするとは言っても、やることはただのショッピングである。一応目的の品はあるものの、それ以外は取り留めなくウィンドウショッピングをして回る。
ただ、二人はその間男子学生の腕から離れようとはせず、その身体にずっと触れ続けていた。
周囲からは好奇の目や、羨ましそうな視線が向けられるが、二人は気にすることなくウィンドウショッピングを楽しんでいる。
「なに~?そんなに嫌がっちゃってさ…そんなにあたしたちがくっついてるのが嫌?」
「私たちと釣り合わないからとか思ってるの?そんなこと気にしなくてもいいのに……」
少し嫌味っぽく言うマスカレーナと、優しい声色で諭すように言うハンディーレディ。
そんな二人に釣り合っているとは男子学生はどうしても思うことはできないでいる。街を歩けば男女問わず視線を集めるであろう二人。そんな二人が異性としてパートナーとして自分を選んでくれたというのは、どうにも信じがたいことで、今も夢か何かなのではないかと、彼は心のどこかで思ってしまっている。
「何でも屋の言う通りよ。周りの目なんて気にする必要はない。それでも気になるってのなら……♡」
「そうね…♡いっそのこと、周りの目を興奮の材料にしてみるとか……♡」
そう二人が囁くと、男子学生の腕をとる。そのまま彼の手を自身の方に回し、その豊満な乳房に彼の手を触れさせる。
その柔らかい感触に、男子学生は思わず手を引っ込めようとするが、思っていた以上に彼女らの力は強く、彼の手は胸から離れなかった。
「ほら…♡もっと私たちのおっぱいを揉んでるところ、見せつけよっか♡」
「私たちに釣り合わないとか、そんなこと言わせないように……♡ね……?」
二人の手で腕を固定されて、乳房を揉まれている姿を周囲に見せつける。先ほどまで感じていた周囲の好奇の目は、徐々に侮蔑にも似た視線に変わっていき、鋭く男子学生に突き刺さる。その居心地の悪さは、先ほどまでとは比較にならないものだった。
流石にその視線に耐えられなったのか、男子学生は弱々しい声で二人に手を放してもらうように懇願する。
「あは……♡もう、そんな顔しないの♡」
「ちょっと意地悪しすぎちゃったかしらね……♡まぁ、あたしたちも他人に見られるのは嫌だからね♡」
そう言って二人はようやく男子学生の腕を放す。二人の乳房から手が離れると、解放された安堵感からか、男子学生はほっとため息を吐く。
彼の腕を再び抱く2人。しかし彼も一切抵抗することなく、それを受け入れる。
二人が行ったのは簡単な心理テクニックで、本命の要求を通すために彼が絶対に断りそうな要求をあえて提示して、マシな方を選ばせるというもの。
結果として彼は今、何も対抗することなく腕を抱かれ、周囲の目を気にしている様子でもない。
二人はそんな彼の様子に、上手くいったと顔を見合わせてほほ笑む。
「さぁて……それじゃあまずはどこに行く~?」
「最初は雑貨屋とかいいんじゃないかしら?一番のお楽しみは最後まで取っておくものだしね」
気を取り直して、次の目的地を決めようとマスカレーナが声をかける。
ハンディーレディもそれに同意するように頷いてみせると、二人そろって男子学生の腕を引き始める。そして歩みを再開する直前、マスカレーナが彼の耳元に口を近づけ、そっと囁く。
「でも、あたしたちのおっぱいを揉みたくなったら、ちゃんと言うのよ?人目に隠れてるところでだったら、好きなだけ揉ませてあげるからね……♡」
そのささやきは男子学生の耳を通して脳を蕩けさせるようで、彼は必死に下半身に血液が集中しないようにと意識を逸らす。
そんな彼の様子を、マスカレーナは楽しそうに見つめながら、ハンディーレディと共に歩みを進めるのであった。雑貨屋や本屋といった、目に留まった店を転々と回りながら、3人はショッピングを楽しむ。
その間、腕を抱かれて胸を押し付けられてはいたが、男子学生はそんなことも気にせずに、目に留まった商品をまじまじと見ていた。
「さて、やっとお目当ての店に着いたわね~……ほら、早く入ろ♡」
「君が好きそうな下着を買うって話なんだから、君にも見てもらわなきゃでしょ?」
二人が足を止めたのは、ランジェリーショップの店先。
周囲にはカラフルな下着が並び、店内にもランジェリー姿のマネキンが並んでいる。店内に男性の姿はなく、そこは完全に女性向けの店であった。
当然男子学生も中に入るのをためらっていると、二人は彼の腕を引っ張って中へ引きずり込む。
「ほら、さっさと入るわよ♡」
「ランジェリーもちゃんと見てよね~?君に選んでもらうんだからさ」
店内には数多くの下着が並んでおり、中には際どいデザインの物まで置かれている。二人はその一つ一つを確認しながら、彼が好きそうなデザインの下着を探していく。
「あ、これなんかどう?君ってこういうのが好きだったりしないかしら?」
そう言ってハンディーレディが手に取ったのは、真っ白な下着。レース生地でできており、縁にはフリルまであしらわれている。
これを着たハンディーレディはさぞ美しいことだろう。もじもじとしながらその下着を身体に重ねている彼女を想像し、男子学生の興奮が高まっていく。
「これはどうかしら~?どうせスケベなあんたはこんなのが好きなんでしょ?」
マスカレーナが手に取ったのは、黒地に青のレースがあしらわれた下着。派手ではあるがどこか気品を感じさせるデザインは、彼女の妖艶さをより引き立たせることだろう。普段マスカレーナとエッチをしているときも、彼女はこういう下着を身に着けていることが多い。淫らに乱れる彼女を思い浮かべて、男子学生の興奮がさらに高まっていく。
しかし、彼の反応に反して二人はどうも芳しくないらしく、どちらも納得がいっていないようで首を傾げている。
「なんか違うのよね~……何と言うかいつも通りって言うか……」
「確かに…せっかくこの子に来てもらって選ぶんだから、もっと刺激の強いやつの方が……」
二人はお互いに頷きあうと、その下着をもとあった場所へ返し、真剣な面持ちで店内の下着を見て回る。
二人に置いて行かれて、男子学生は店内で一人取り残されてしまう。目のやり場に困るという言葉があるが、まさに今彼はそのような状況であった。
「お~い、ちょっとこっちに来てくれない?」
そんな中、マスカレーナが男子学生を呼び寄せる。声のする方へ行くと、彼女が試着室のカーテンから顔をのぞかせている。
「これ、着たから感想聞かせて?」
そう言うと、彼女はそのカーテンを全開に開ける。そこには先ほど手に取っていたものとはまた別の下着を身に纏い、その肢体を露わにしたマスカレーナの姿があった。
彼女の身に着けている下着は、先ほど手に取っていたものと同じく黒を基調としたものではある。しかし、デザインが個性的なもので、動物の毛皮のようなファーが全体に施されており、ショーツの尻の部分から延びている尻尾はひとりでに動いている。
まるで猫をイメージしてデザインされたものらしく、それを身に纏うマスカレーナはご丁寧に猫耳のカチューシャまで身に着けている。
かわいらしさと妖艶さを兼ね備えた、彼女らしいデザインの下着に、男子学生も思わず息をのむ。
「どう?結構あたしに似合ってると思うんだけど……もっと近くで見て欲しいな~♡」
マスカレーナが淫靡な笑みを浮かべてそう言うと、下着に付いた尻尾が男子学生の腰に絡みつく。そのまま男子学生の身体を引っ張って、試着室の中に引き込んだ。
まるで彼がマスカレーナを押し倒したかのように、彼女を上から見下ろす男子学生。腕をがっしりと掴まれ、数センチといったところまで顔を近づける。器用に足の指でカーテンを閉め、外からの視線を遮る。
「尻尾の操作はいつもの仕事着で慣れてるから、意外と得意なのよね~…ほら、あたしのこともっとよく見て……どう?似合ってる?」
マスカレーナの猫耳や尻尾といった姿に、男子学生はすっかり見惚れてしまっている。そんな彼に気をよくしたのか、マスカレーナは腕を彼の身体に這わせる。尻尾も下半身のふくらみを撫でて甘い刺激を送っている。
「こうやってあんたのオチンポを尻尾でシコシコしてあげられるし、猫がモチーフってのも、あたしのイメージにもあってるでしょ?ハート型に空いた胸元の穴も、なかなかエッチじゃない?」
たった数センチの距離で見つめあう二人。そのままキスもできてしまうような距離で、マスカレーナが妖艶に微笑んでいる。
時が止まったかのように長い間見つめ合う二人。先に沈黙を破ったのは、マスカレーナの方だった。
「ねぇ…このまま抜いてあげよっか……?」
「抜いてあげよっか……?じゃない!!」
突然、男子学生とマスカレーナのいる試着室のカーテンが開け放たれる。
首根っこを掴まれた男子学生はそのまま持ち上げられて、そのままカーテンの外へと引きずり出されてしまう。
「運び屋…抜け駆けは無しって話はあらかじめしてたわよね?それに店の中で、売り物を着たままで……何考えてるの?」
「そ、それは……こいつがスケベな目で見てくるから、ちょっとサービスをね……?」
ハンディーレディはマスカレーナを鋭い視線で睨みつける。そんな彼女に気圧されてか、マスカレーナも冷や汗を浮かべて弁解の言葉を口にする。
そんなマスカレーナの様子に、ハンディーレディは思わずため息を漏らす。そして今度は男子学生の方に目を向けると、彼の額を指ではじく。いつもの不機嫌そうな表情で見つめられると、男子学生も何も言い訳することが出来なくなる。
「君も、誘われたからってホイホイ着いていっちゃダメでしょ?こういうことはちゃんとお買い物を終わらせてからって約束したよね?」
ハンディーレディの説教に、男子学生はただ謝ることしかできない。そんな彼女の様子に、マスカレーナはどこか不満そうな表情を浮かべていた。
その後、3人は買い物を終わらせてランジェリーショップを後にする。先ほどの猫をモチーフにした下着もマスカレーナが購入したらしく、その袋は彼女の手に握られていた。
「でも、もっとほかの店も見てもいいかもね~…さっきの店もよかったけど、まだ上品に寄ってたと言うかあんた好みのスケベなのは他の店の方が品ぞろえもよさそうだったし」
「たしかに、さっきのお店はちょっと大人しめの商品が多かったかも。それならもう一軒見に行きましょうか」
マスカレーナの言葉にハンディーレディも同調する。男子学生も特に異論を持つことはなく。彼女ら二人に腕を引かれるがままついていく。
「確かこのあたりの裏路地に……」
「あぁ…あそこならそういうのも売ってそうね……」
二人は男子学生そっちのけで次の目的地を決めている。彼もランジェリーショップの知識など持っていないのだから、二人の会話に割り込むことなどできないのだが。
五分ほど歩いただろうか、近くのビル群によって日が遮られた裏路地で歩みを止めた。マスカレーナとハンディーレディの視線の先には、18という数字の上に/が書かれたカーテンで、入り口が隠された店。
そこが未成年である男子学生が本来踏み入れてはならない場所であることは、三人とも理解しているが、マスカレーナとハンディーレディは一切の躊躇なく男子学生を連れてそのカーテンの向こう側へと入っていく。
「ここならいいのが見つかりそうでしょ?なんてったって、それ用の商品が売ってる店なんだしさ♡」
「せっかくならここでどんな下着を買うかは、この後のお楽しみにしてみる…?って、それだと君も選べないから本末転倒になっちゃうんだけど……♡」
先ほどのランジェリーショップの時と同じように商品を見て回る二人。しかし、男子学生もさっきよりは居心地が悪いわけではないのか、そわそわしながらも商品棚を見て回る。
こういった製品はネットで見たことはあるが実際に見るのは初めてで、いろいろ目移りしてしまう。
そんな中、彼の目に留まったのは女の子のイラストが描かれた箱が並んでいる棚だった。所謂オナホールが陳列されているのだが、そのパッケージを見たのは初めてだったためか、少々興味を抱いて見て回ることにした。
「あら、君ってこんなのに興味があるの?」
突然背後から声がするため振り返ろうとすると、ハンディーレディの顔が男子学生の方に乗る。驚いて思わず飛びのいてしまったが、彼女は気にせずに言葉を続ける。
「こんなの使わなくたって、私たちがたくさん気持ちよくしてあげてるじゃない?もしかして、こういうのも使ってみたいの?」
その問いかけに男子学生は恥ずかしそうに首を横に振る。だが、それが彼なりの強がりであることは、ハンディーレディにはお見通しだったようで、そんな彼を愛おしく感じて、優しげな笑みを浮かべる。
強がりを指摘するような無粋なことはせず、ハンディーレディは男子学生の腕をそっと握り、別の商品棚の方へと引っ張っていく。
「それじゃあ、こっちに来てくれるかしら?私に合う下着がどっちか選んでほしいの♡」
そんな彼女に男子学生はついて行く。
しかし、彼女の目は先ほどのオナホールの箱を捉えていた。
「あはは…想定以上に買っちゃった…君が褒め上手だからお姉さん達、すっかりのせられちゃったな……♡」
「まぁいいんじゃない?どうせ他のブラもサイズが合わなくなるんだし。せっかくなら一新したって損はないでしょ?」
大きめの紙袋を両手に持ちながら、三人は裏路地を歩く。あの後、結局ハンディーレディとマスカレーナは下着を数点ずつ買い、男子学生も二人の荷物を一部かわりに持つことにした。
「ねぇ…確かあんた、明日もお休みよね……?ルーナからの仕事も学校も、何もない日……」
マスカレーナが突然そんなことを言い出す。その質問の意図を測りかねていると、ハンディーレディが代わりに答える。
「つまり、今日はお泊まりしても大丈夫?って、運び屋は聞いてるのよ。どうかな?あの部屋でのんびり三人で過ごすのもいいけど…せっかくの初デートなんだし、最後は……ね?」
ハンディーレディはそう耳元で囁くと最後に進行方向の先に視線を向ける。
煌びやかなネオンがまぶしい一本道。そこには休憩や宿泊の料金が書かれた看板が立ち並び、男女のカップルがその中を歩いている。
ラブホ街と呼ばれるそこにたどり着いた三人、特にハンディ-レディとマスカレーナはどのホテルがいいか、看板を見て回る。
そして…
「ここにしましょうか…」
「そうね、値段に対してオプションも豊富みたいだし……」
彼女たちの間で入るホテルが決まると、男子学生を連れてそのホテルへと入っていった。