遊びの代償
ダンスの練習をしていたとある日の事。
その日はたまたま、そう本当に、以前誰かに聞いたエニエスロビーでの話をふと思い出しただけなのだ。
敵対したCP9が使ったという技、紙絵ってこんな感じなのかな、なんて。
それがよりにもよってあんな事態を引き起こすなんて……神様は私に意地悪だと思う。
「~♪~♪よしっ、と」
通しでの練習を何度か終えた後水分補給もかねて休憩する。
体を休めている間は手持無沙汰なので色々考え事をするのだが、ふとした考えが頭によぎった。
以前話に聞いた紙絵という技。技術的面での習得はできないだろうけど、動き自体は再現できるかも。
まわりをキョロキョロと見まわし、誰もいないことを確認する。
「……紙絵」
シュバババババッ!なんて口で擬音を口にしながら動いてみる。うん、なんかいい感じ。
こういうごっこ遊びはついついなんでかやっちゃいたくなるんだよねえ。子供っぽいし誰かに見られたら嫌だからこういう一人で、でき、る――。
「よ、よォ……」
なんで、ルフィが、いるの……?
ガタがきた船体が軋むような、錆びたおもちゃの関節が鳴らす音のような、ギギギギギギという音が鳴るくらいの固い動作でルフィの方を見る。
ああ、まってルフィ。ルフィだってこういうごっこ遊び好きだったじゃんなんでそんな不味いもの見たって顔して、なんならなんでちょっと汗かいてんのよ。ねえ?
「……う」
「お、おいウタ……?」
ルフィが気づかわしげに声をかけてくるが、私の耳には届かない。
なぜならば。そう、なぜならば
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
船どころか大海をも揺るがす大絶叫が私の喉から迸ったのだから。