進路相談
「やっぱりここのパンケーキは美味しいね〜話題になるだけのことはある」
休日の午後。
とあるカフェで190センチ越えの男が見た目に合わぬ生クリームたっぷりのパンケーキを頬張っているのを、銀髪に黒水晶の瞳を持つ少年が冷めた目で見つめていた。
「よくそんなの食べますね…見てるだけで胸焼けしそうです」
「まだ若いんだから胸焼けなんてしないでしょ。ちょっと食べる?」
「要りません。生クリーム苦手って知ってるでしょう」
「知ってる知ってる〜辛いものが好きなんでしょ?類って僕と食の好み合わないよね〜」
「別に合わなくていいです」
眉を顰めたままブラックコーヒーを啜る類によくそのままで飲めるなと思いながら、悟は自分のコーヒーに角砂糖を入れた。
「で、来年高専入学する?御三家だし入る必要はないけど」
「入りますよ。まだまだ学ぶことはありますし…友達欲しいし」
最後に付け加えられた理由に思わず吹き出す。
「っあっははははは…!」
「何が可笑しいんですか」
ムッとして尋ねる類に笑いを抑えながら答える。
「いや、いいと思うよ。青春ってのは大事だからね。親友でも作ってきなよ」
「そう簡単にできればいいんですけどね」
そう言い溜め息を吐いてガトーショコラにフォークを刺す類を見て、一瞬自分の高専時代を思い出した。
「じゃあどっちに行く?実家に近い京都校?」
「そうですね、そのつもりです」
京都校といえば御三家がよく通っている方だ。加茂と禅院もちょうど在籍していた筈なので、御三家全員が揃うことになる。
「類が決めたならそれでいいと思うよ」
家の者に決められた道を歩むだけなんてなんら価値はない。
成長すれば自分に並ぶ術師となるであろう義弟を見つめ、悟は小さく微笑んだ。