連合槍・ジャガーマン召喚
「───サーヴァント、ランサー!ジャガーの戦士、ここに見ッッ参!!ニャ!!」
「───は?」
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私はグロリア。グロリア・オブシディアン。南米産まれ。南米の神、ククルカンもといケツァル・コアトルの伝承保菌者。
此度、ドイツのベルリンで行われる聖杯大戦、その参加者の一人。
なのだが………
二日前、召喚しようとしていた北欧の英霊、シグルドの触媒を何者かに盗まれ、
仕方なくランサーのサーヴァントを召喚した。
その結果は……
「ねえねえマスターちゃ~ん、どうしたのそんな顔して~?人間にもジャガーにも陰鬱な気分は体に毒だゾ☆」
このザマである。
具体的に言うと着ぐるみ着た変なのがやたらうるさい。
てかジャガーって言ってるクセして虎じゃん。
思いっきり虎の着ぐるみじゃん。
ジャガーじゃなくてタイガーだろお前。
「おっと、今アタシのこと『虎じゃん』って思った?残念ですがtiger(ネイティブ)ではないんでそこんとこヨロシク!」
コイツホントに座に登録されてるの?人理と抑止力は何をしてるんだ。
英霊じゃなくて未確認生物か何かだろ。頼むからそうだと言ってほしい。
とりあえずコミュニケーションを図ってみる。人間の言葉を話せるあたりコミュニケーションはとれるだろう。おそらく。これでダメだったら恨むぞ人理。
「えっ……と……とりあえず……お前が私のサーヴァントなのか?」
「だからそう言ってるじゃな~い!あ、それともあれか?あれしたいのかニャ?ホラ、『あなたが私のマスターか』(イケボ)ってやつ?」
なんだそれは知らん。
しかし、敵意も無いらしいしひとまず操縦できる(かどうかは怪しいが)サーヴァントであることは分かった。
「とりあえず……アンタのことを知りたい。」
「と言いますと?」
「お前がどんな英霊なのか。得意は何か。そこら辺かな」
割と本気で知りたい。よくわからん。頭がパンクしそうだ。
「えー、それ聞いちゃ~う?」
「……何か不満でも?」
「いや全然?むしろ真名バレしても全然問題ナイナイ尽くしですぜ奥さん?ジャガーさん強えーから。そこらのパンピーより全然強えーから。」
なんなんだこいつ。
「というわけでアタシの真名はジャガーマン!南米の神霊です!特技は敵陣に突っ込むことと敵陣に突っ込むこと!ウス!よろしくお願いしますっ!」
「……は??」
今日二回目の「は?」が出た。
ジャガーマンといえば私の故郷、南米の古き神、その一柱。アステカの主神、テスカトリポカのナワル。そんな神がなぜこんな得体の知れない生物になっているのか。
そもそもどっちかと言うとウーマンじゃないのか。いやこれは依り代の問題か。
そろそろ脳が壊れてきそうなところで、ジャガーマンの言葉で正気を取り戻した。
「ところでマスターからククるんの気配感じるのはアタシの気のせい?気のせいなカンジ?」
「ククル……ククルカン?」
「そうそれ」
速攻で見抜かれた。私がククルカンの伝承保菌者だってこと。本当になんなのこいつ。
「……なんで分かった?」
「ふむ……実はジャガーマン、世界を守る秘密結社に所属してたことがあってだニャ……まあそこら辺は嘘だけどね?南米神の縁やら何やらで分かるってワケ。ジャガーマン的には昔の親友と会った気分で嬉しいぞ!」
……まあ、そういうこともあるか。
私は一瞬思考を放棄しようとしたが、すぐに次やることに気付いた。
「……はぁ。私はグロリア。グロリア・オブシディアン。今回の聖杯大戦において、お前のマスターを務める者だ。」
「ほう。聖杯大戦というと、あの伝説の?」
「伝説かどうかは知らんがな。……しかしその様子だと聖杯からの知識はちゃんとインストールされているらしいな。来い、私達が共に戦う陣営に顔見せだ。」
「了解ニャ!当たって砕けろーッ!」
「砕けるな。」
そうして、私達はこの場所を後にした。