逆転の発想
事の発端は、女子部屋で開かれた男子禁制のお茶会でのナミの一言であった。
「ルフィも我慢してるのは分かるんだけど、私たちも正直限界なのよね~」
この世界、話のネタには困ることがない、世界情勢、冒険の思い出、そこでできた友人たち、そして仲間のこと。
そして仲間の話題ともなれば、一番に上がるのは彼女たちの船長、"麦わらのルフィ"その人である。
破天荒で型破りで、考え知らずの世間知らずであるが、結果としてそれが彼女らを、村を、街を、そして国を救ってきた。
だが、一味に属す女たちからすれば、彼についての重要な部分はそれ以外にある。
「いつも思うけど、あんなに無理してまで抑え込まなくても良いんじゃないかしら。」
「でもナミ、アナタそういうところが可愛いって前言ってたわよね。」
「それはそうだけど……。」
海賊王を目指すルフィにとって、切っても切り離せないものが2つあった。
それは、三大欲求の内の2つ、常人ではない"食欲"と"性欲"である。
食欲に関しては、ルフィ自身、生きるため、強くなるために食事は必要であると考えているため、
特段問題視はしておらず、一味の財政を圧迫することになっていても、我慢はしていなかった。
問題はその強すぎる性欲である。
彼が盃を交わした兄2人の内1人は、あの"海賊王"の実の息子であり、そのコトをどれほど思い詰めていたかを知っていた。
その結果、海賊王となるには、その身を焼き尽くすように燃え上がる性欲は邪魔であり、
寧ろ忌むべきモノであるという考えが、故郷を旅立つまでに完成されていた。
なお、旅立つまでに"処理"に使った妄想は、9割が酒場のマキノを思ってであり、
フーシャ村での第2の母とも呼べる存在を"そういうこと"に使った自己嫌悪も、その考えを強化していた。
航海を共にする仲間ともなれば、大体の人となりは理解できる。
ナミもロビンも、当初は出会った当時の腹に一本の槍を括った彼の印象が強かったが、日常的なルフィの視線や行動、
そして定期的に1人になった後に漂う匂いから、自分たちがそういう対象として見られている、ということを理解した。
初めは初心なルフィをからかうのが目的だった。
ナミは海賊相手の泥棒をしていた時の色仕掛けを、ロビンは自らの能力と色香をそれぞれ用いて、
精巧な顔が羞恥で真っ赤に染まる様を楽しんでいた。
そうした"悪戯"を続ける内、自身が求められているという実感と、ルフィの男としての魅力に惹かれていき、
いつしか実際に手を出されても良いと思うようになり、誘惑は過激になっていった。
だが、ルフィの意思は硬く、どれ程の誘惑を受けても手を出すことはなく、その度に自慰の回数が増えることとなった。
誘惑している側としても、それこそ全裸で風呂中に突撃するなどの痴女紛いの行為を行っても手を出されないことで、
彼女たちにとっても、自らの行動が身を蝕む毒となっていた。
そんな男女の膠着状態が続くまま四皇にまで上り詰めたルフィに対しての思いを漏らした結果、
今回のお茶会の主題が、どうすればルフィに手を出してもらえるのかとなってしまったのだが、
ここで放たれた一言が、彼と彼女たちの運命の分岐点であった。
「……そもそもなんで私たちから手を出さないようにしてるんだっけ……?」
「え……?」
「いや、え?じゃなくて、ロビンも考えてちょうだい。」
「そうね……私が悪戯を始めたのは……アラバスタで出会った彼と、船に乗ってから知った彼のギャップのせい……かしら。」
「まあそうね、私もそんな感じ、村を人質にされていたところを救ってくれたルフィと、
ちょっと肌見せただけで弱々になっちゃうルフィの差が可愛くてね~……。」
「で、本題としては……改めて考えてみると、私たちが手を出されることを待つ必要は無いんじゃないかしら。」
「やっぱりそうよね!?」
ロビンの発言に身を乗り出して賛成する。
「そもそもアイツが手を出さないのは、ただ我慢してるだけでしょ?別に海賊王になるために性欲は邪魔なワケでも無いじゃない。」
「まあ、身籠った場合も考えると、一概にそうとは言えないけれど。」
「そのときはそのときよ!!よし決まり!!」
「検討は付いてるけど、一応確認するわ、ナミ、何が決まりなの?」
「今夜、ルフィを襲うわよ!!ロビンも混ざるわよね?」
「……そうね、そうするわ。」
そうして2人はウキウキと準備を進めていく、哀れにも獲物となったルフィは、
見事彼女たちの魔の手から逃げ切ることは出来るのか。(出来ない)
つづけ