逃亡③

逃亡③

鳥飼天竜人

無心でD.Dの傷口に沸いたウジを取り除く。

ウジはすぐに小さな皿を埋め尽くした。

消毒液がもう無い。しかし、これ以上不衛生な状態になればD.Dが死んでしまう。

最近は熱で体力が奪われたのか、眠っている時間が多くなった。

D.Dが死んでしまう。



今日は意識が混濁したD.Dが叫び声をあげようとする。大きな音を立てれば存在がバレてしまう。私はD.Dの口を両の手のひらで塞いだ。こうするしかなかったのだ。

苦しい。


D.Dが虚な様子で身体を洗いたいと言う。

できないと答える。D.Dはそれきり何も言わずに目を閉じた。どこか口答えをしてくれるのでは無いかと期待した己に腹が立つ。


私が発熱する。不衛生な食事のせいだろうか。ここで倒れるわけにはいかない。私が死ねば、D.Dも死ぬ。


D.Dが饒舌にファミリーのことを話す。ヴェルゴは子どもの頃からの付き合いだ、ベビー5は変な男ばかり引っ掛けやがる、ローはハートの海賊団を立ち上げた、いつかはウチに帰ってくる。

私はD.Dの手を握りながらその話を聞いた。D.Dの目は私ではない遠くを捉えていた。


今日は水も吐き戻してしまう。水分すら取るのが億劫のようだ。やはり火傷が痛いのだろう。子どものように飲みたくないと駄々をこねる。遂には泣き出してしまったが、私には慰めることしか出来なかった。


悪い夢を見た。内容は忘れた。

今日のD.Dはずっと眠っている。このまま死んでしまうのでは無いかと恐怖に襲われる。

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