逃亡①
鳥飼天竜人私たちは空き家の屋根裏へ潜伏した。
しかし、そう長くは持たないだろう。
一刻も早く遠くへ逃げなければ。
下界で見たスラム街を思い出す。
あのような場所であれば潜伏は容易だろう。しかし、D.Dの状態を見るにこれ以上の移動は避けたほうが良いだろう。
街路樹に実ったきのみを拝借し、D.Dに与える。食す。しかし苦痛そうな表情を見せる。
内臓なのか、外傷なのか。どこが辛いのかと聞くと、D.Dは黙ったまま口を開いた。
私はそれを見てゾッとした。
舌を含めた口内が火で炙られ、ズタズタになっている。
話す事も食餌も辛いのだろう。
筆談を提案するが、拒否。
置き去りにされていたシーツの上にD.Dを寝かせ、傷口を消毒し、清潔な布で覆う。
これ以上の処置はここでは出来ない。
本当は鉄球のついた海楼石の足枷も外してやりたかったが、今の私にはどうにも出来ない。
明らかにぐったりとした様子のD.Dになにもしてやれない歯痒さに気が狂いそうだ。
こうして紙にものを綴る事でしか平穏を維持できない。
眠ってしまったD.Dの頭を撫でながら、私は途方に暮れている。