逃亡後日(サカズキ)
逃亡者が海軍本部の地下牢から逃亡しそれをサカズキが粛清として2人を焼き尽くした事件から数週間。海軍本部だけでなくマリンフォード全域の空気は最悪な物となっている。
海軍本部は現在3つの派閥
ルフィ達の逃亡事情を知っている者達、穏健派(+逃亡をアシストした派閥)
サカズキが行った粛清を信じて海軍に疑念を抱く者達、中立派
そして天竜人側に付き2人が死ぬのは当然であると声高らかに叫ぶ者達、過激派
この三つ巴の派閥争いが発生してしまい内部抗争が勃発寸前の域まで来ていた。
そんなギスギスした雰囲気がマリンフォードの方まで伝播し街全体の活気が無くなってしまっている。それだけ逃亡者達…ルフィとウタの人柄と人気が凄まじかったのが窺い知れる。
それでも事情を知るセンゴクにガープ、サカズキ達三大将や一部の中将達が水際で抑えているおかげでギリギリどうにかなっていたのだが…そんな時に上手くいかないのが世の常である。
「だから!!このスパンダムが見たんだ!出港記録にない1艇の船を!!」
サイファーポールから何故か司令長官が来たと思えばセンゴクや三将軍にガープ達までいるこの会議に怒鳴るように喋る男の言葉に海軍本部の会議室が静まり返る。
その元凶となった男の名はスパンダム。CP9司令長官であり、あの逃亡劇があった日にマリンフォードに訪れてたのである。
「…つまりなんじゃ?サイファーポールはわしに喧嘩を売りに来たのか?」
表向きは後継者2人を焼き殺したサカズキが射抜くような目つきでスパンダムを睨みつける、自身の正義を曲げてでも逃した2人を守る為にこれ以上悪意の手が届かないようにこの話題を打ち切ろうとしていた。
「いやいや、大将赤犬。このスパンダム、一度は麗しい師弟関係に手を焼かれたことがありましてねぇ…師弟関係があった場合は念には念を入れて調べるようにしてるんですよ」
顔の特殊な革のマスクをなぞっているスパンダムが次の瞬間勝ち誇るように叫んだ。
「赤犬の後継候補、更に13歳で六式を全て体得し!更に出世コースを爆進してたアンタの秘蔵っ子をやすやす焼き殺すとは思えねェ!!どうせ何処かに匿ってんだろ?早く出せって言ってんだよ!!」
(コレで天竜人にも恩が売れるし、俺の評価が上がる…そうすりゃゆくゆくはCP0の司令の座は俺の物に…!!)
自身の出世の為に別のプランで任務を与えているがそれはそれ、コチラでも評価が上がると思いスパンダムはこの会議に突撃してきたのである。
「六式を覚えさせたのはわしではないんじゃが…ガープさんでは?」
「はぁ?ワシが教えるわけないじゃろ、やるならマリンフォードではなく何処かの密林に投げ込んで無理やり覚えさせるわぃ…あの娘のせいでそういうのは禁止されてるからのぅ…」
「ちなみにわっしでもないねぇ…教えようと思ったらすでに覚えてたしねぇ…」
「六式を覚えさせるとか、んなメンドクセーことやらねえ…CP9の兄ちゃん、この話長くなる?」
「んなことどうでもいい!!早いこと2人を差し出せと言ってんだ!!」
若干話題が逸れそうになったので修正すべく怒鳴るスパンダム、そして何故か後ろに控えてるロブ・ルッチが誇らしげな顔をしている気がするがサカズキ達は気にせず喋りだす
「…2人の遺体もあった、それにヘッドフォンと麦わら帽も証拠としてあるじゃろ、それはどう説明する?」
覇気を纏わせないように剣呑な雰囲気を極力抑え込んでサカズキはスパンダムに問いかける。
インペルダウンから2人に似た体格の死刑囚を用意させ偽装までしたのだ、そんな簡単にバレるものでないはずなのだ…なのだが
「出港記録にない1艇の船を見たんだってんだよ!この乗っていた人物を調べない限りはこの件まだ済んだとは言わせねぇさ!!」
「なっ…」
スパンダムはあの日、サカズキ達の攻撃に巻き込まれそうになったので部下を見捨てて一目散に港まで戻り船に隠れていた。その時に偶然にも2人の逃亡を目撃していたのである。
「そんな訳であの逃亡者達が生きてる可能性を考慮してコレを世界中に配布したと報告しに来たんだ!!」
スパンダムが懐から取り出した紙を見たサカズキ達はどうにかして抑え込んでいた怒りを爆発させてしまった。
そこには…
「【反逆者】モンキー・D・ルフィ:懸賞金3億」
「【反逆歌姫】ウタ:懸賞金2億5000万」
2人ともOnly ALIVEではあるが立派な手配書である。
「海軍の軍法会議を通さずに…どういうことじゃ…!?」
「ある方たちに頼んだから快く許可を頂いてねぇ!!それに今回の被害者であるチャルロス聖達からも何が何でも捕まえろと言われてるから今回は事後報告だが急遽こうして手配書を用意させて貰ったのさ!!」
最悪すぎる展開に全員が何も言えなくなってしまう…何故こんなにも世界はあの2人に優しくないのだろうか…とサカズキは内心神を呪ってしまう。
「そんな訳で海軍も2人を捕まえたら即刻天竜人にわたすってのを伝えたぜぇ!!」
喋るだけ喋ったあと意気揚々と帰るスパンダムを刺し殺すような視線を全員が向けているがそんなのは何の意味がない。
どうにかして2人を救うよう動くかソレを決める会議が今スタートしたのである。
そしてスパンダムは気づいていない、自身の行動が世界にさらなる波乱を巻き起こすことをそのせいで世界政府が隠していた秘密を…解放の神と絶望の魔王を顕現させる確率を跳ね上げてしまったことを…この時は誰も知り得ないのである。
ちなみに勝手に手配書を配られたせいで2人を秘密裏に回収できなくなり五老星の胃に穴が空いたのと頭痛薬の量が増えたことはどうでもいいことだろう。