貴方の良い所知ってください
自己肯定感激低IFローさんの自己肯定感を必死に上げる正史クルーのちょっとした話
「嫌じゃないのか?」
呟いた瞬間に空気が凍り付くのを感じた、やらかしたとすぐ察した
航海中の船の中で食事を終え談笑中、普段世話をしてもらっているクルー達に俺は思った事を問い掛けていた
この世界の俺は俺が出来なかった事を成し遂げた、その上四皇を相手に勝利までした。俺とはあまりにもかけ離れている。そんな俺を世話する事を良く思わないだろう
言おうと思っていた訳じゃない、気が付いたら口を突いて出てしまっていたが、クルー全員の視線が一斉に俺に向いていた
「……な」
「何て事言うんですか!!!」
叫んだのはペンギンだった
あまりの勢いに俺は体が軽く跳ねた
叱られると俯いた俺の耳に入って来たのは叱責なんかではなく手を叩く音だった
「集合!!!全員しゅーごー!!!」
シャチが叫ぶとクルー全員が俺の向かいに立つ
まさか全員で叱るとは思わないが、何故全員が集まるのか分からない
困惑して食堂の隅の席でコーヒーを飲んでいるこちらの世界の俺に助けを求める気持ちで視線を向けると、これから何が起きるか興味を持っている様子でこちらを見ていた
「はいこれからローさんとキャプテンの共通点を言います!!!」
「「アイアイ!!!」」
「……え?」
「は?」
意味が分からずに俺はもう一度こちらの世界の俺を見るが、どうやら俺と同じで現状を理解出来ていない様子だった
「滅茶苦茶頭良い!!!」
「格好いい!!!」
「後色気も凄い!!!」
「モフモフが好き!!!」
「よく俺に寄り掛かって寝てるよね」
「小物が可愛い!!!」
「そこが可愛い!!!」
「おいお前等ちょっと待て」
こちらの俺が制止するがクルー達は止まらない
「パンが嫌い!!!」
「そこはちょっと困る」
「主食だからね」
「でもそこも可愛い!!!」
「おい!!!」
ガタリと音を立ててこちらの世界の俺が立ち上がって寄って来る
「それから一番の共通点が」
ペンギンが俺とこちらの俺の方を真っ直ぐに見て笑った
「俺達クルーの事を心の底から愛してくれている所」
その言葉に俺も、こちらの俺も固まった
見れば他のクルー達も楽しそうに笑っていた
「他にも探せば大量に出て来ますよ」
「こんなに一緒なのに、ローさんを嫌だなんて思いませんよ!」
「そもそもキャプテンもローさんも同じ『トラファルガー・ロー』なんだから、俺達皆大好きに決まってるじゃん」
クルー達の言葉に困惑しながらこちらの俺を見れば、帽子のツバを掴んで顔を隠していた
確実に恥ずかしがっているのが分かる、正直俺も今凄まじく顔が熱い、多分今真っ赤になっている。頼むその帽子今だけ貸してくれ、俺も顔を隠したい
「わ、分かった…分かったから…変な事言って悪かった……それと、ありがとうな……」
口元が緩みそうになって手で必死に隠した
「お前等そろそろ次の島に到着する頃だろ、上陸の準備をしろ」
顔を帽子のツバで隠したままのこちらの俺がクルー達に号令をかければ、全員すぐに返事をして食堂を出て行った
残された俺の視界には、耳まで真っ赤にして俺と同じように口元を隠しているこちらの世界の俺が映っていた