ヴィタ×黒ゼレ負け

ヴィタ×黒ゼレ負け

あおくらげのあほ

人類は神に逆らってはならない。


からりとした昼下がり、深々と降り積もる白い雪。家屋にて暖をとり、立ち上る冷気に刺す風を逃れようとも──人恋しくて、誰かにしがみつきたいという寂寥たる感情は消えない。


「困り果てている君を、こっちの方も頼れるヴィお姉ちゃんが放っておく訳ないじゃないか♪」


「あぅ…… ♡んっ ♡むぎゅ ♡」


セントソルトスノーにて靉靆した、艶やかな灰のロングヘアをくゆらせる快活な乙女なはずのヴィタ。

幼い身体に大人びた豊満な魅力を持つ黒ゼーレは、備わった死の権能の残り香から、この女から隠せない獰猛な程の死の匂いを感じ取った。


「むぐうう ♡ふぅ…… ♡ふっ…… ♡」


「そうやってむぐむぐしていた方が、可愛いよ」


一市井人では絶対に帯びない、わたしの長い黒髪で振り払いたい位噎せ返る香り……幾ら命を奪えば、そこまで堕ちる?いち早く、探る必要があった。

例えるならば、元天命主教の男の業に塗れた愚者か。軽く言葉で探っただけで、ヴィタは言葉の節々から、奴を惹起させる限りない悪意の愉悦を象った魔手をこまねいて挑発してきた。

答え合わせ──ゼーレは昔に、このような無私を装うクズ共をシベリアで幾度と見てきたのだから、看破は容易なものだった。


「どこまで ♡しって…… ♡あん、た…… ♡」


「さあね、ただ君がキスだけでスイッチがぴこんと入っちゃうとてつもなくえっちという事は今知ったよ〜」


放っておけば、ヴィタの隠された思惑に唆され、取り返しのつかないことになるのは自明であった。

一度起きたことは、奇跡なんかじゃない──仲間を、刹那に抱き合い、はぐれてしまったもうひとりのわたしを、守らなくちゃ……

単身悪姫の懐に飛び込む勇気を振り絞ったゼーレを待っていたのは、暖を取るベッドに座り合い、抱き寄せられ淫らを究めた接吻の洗礼。


「あんな美味しいハムエッグをふるまった僕を疑うなんて。だめだめ。死に神が心の隙間に忍び寄るなんて、別れのギムレットにはまだ早過ぎるんだ」


「んうっ ♡んうううううっ ♡うっ ♡んぎゅ ♡」


「僕はか弱い乙女だから、あいつみたいに暴力で訴えるなんてのはしない。尋問のテクニックにはこういうのもある……そうだろ?戦乙女」


心の隙間に忍び寄る死に神。それは、あんたの方だろうが──心の中で毒付いた。

ひとつ、ゼーレが分かった事……この悪女は、まるで演者のように言葉を並べ立て、過剰に自身を守りたがるということ。

ヴィタが嫌悪しているであろう『あいつ』という存在。砂鉄の国にて、死に人たちが持て囃していた賢者か?陰に暴力を、備える賢者……?

ともあれ、あの男に比べると明確なウィークポイント。吐かせ続ければ、何れ致命的なボロを出すとゼーレは確信した。

その為なら、わたしの身体が穢れてしまう位、構わなかった。穢れを知らぬ無垢で白い、もうひとりのわたしに、この悪鬼の牙が突き立てられずに済むのなら、悦んで犠牲にな……!?


「あれっ、初めてかい?こういうの」


「…… っ……♡っふ…… ♡」


「僕の陰りに気付いた賢ーい君なら、お部屋に男女ふたりきりだとどうなっちゃうかなんて、言うまでもないだろう?」


ベッドの端へと抱き寄せられ、脇に立ち上がったヴィタの緩やかなローブがたくし上げられると、眼前をちょうど塞ぐようにまろび出たのは……女の肢体では、ありえないもの。穢れに穢れ黒ずみ、欲望のまま精を吐き出す陰茎。

想定外。頭の中でエラーが鳴り続け、もうひとりのわたしに捧げたいと誓った純血が悲鳴をあげる。嫌だ、いやだ、嫌だ、嫌だ──!


「音頭を取ってくれれば、鴨が葱しょってやってきたおばかな君にも分かりやすいよう、色々教えてあげられるかも知れないね〜」


「ん… …♡んっ…… ♡んあ…… ♡」


耐えろ、耐えろ、耐えろ……!

演者に負けじと痴女を演じ、望むがままに吐精させてやれば、この悪女は悦んで自滅の路を歩み、進んで奈落へと堕ちるのだから……!

頭の中に去来する不穏と悲哀を、ゼーレは強い言葉でかき消した。


「これがおちんぽ。おちんぽだよ〜♡いーっぱい御奉仕して、ヴィお姉ちゃんから……っ ♡色々教えて ♡もらっちゃおう…… ♡」


「ん…… ♡くっさ…… ♡なに、これえっ…… ♡」


鼻の曲がるような悪臭。被った皮から覗く、わざと残したであろう恥垢。

ここまですべてヴィタの計算通りといった赴きで、冷たい冷たい向かい風。無心で、咥えた。さっさと、出せ……!


「おっ ♡手じゃなく拭きもせず ♡いきなり咥えるなんて ♡はぅ…… ♡ゼーレはなんて ♡出来る子なんだ ♡」


ゼーレはかつていやらしい雑誌が見たいと、衝動的に手に取ってしまった事がある。

もうひとりのわたしにバレないようにと気恥ずかしく立ち読んだそれを、必死で思い返し再現する。

ヴィタの陰茎は明らかに我慢弱く、底の見えぬほど昏い心とは真逆で、今のわたしでもきっと訳なく処せるもの──

僥倖。ここで出させれば、容易く萎び純血を守れる……先端を舐めあげた、舐めあげた、舐めあげた……!


「やば ♡君 ♡おくちをおちんぽで ♡いっぱいに ♡してあげたかっただけなのに ♡」


「むぐ ♡ふっひゃい ♡ふぁっふぁと…… ♡ふぁっふぁといけ♡」


「君さ ♡えっちの為に ♡生まれて ♡はぅ ♡きたんじゃないか ♡やば ♡むり ♡出る ♡ゼーレの ♡はあうぅ ♡おくち ♡まんこ ♡癖に ♡なりそ ♡ほらっ ♡いくよ……っ ♡っは…… ♡残さず…… ♡のんでよっ…… ♡」


「ん゛っ ♡ん゛うっ ♡ぎゅ ♡……んく…… ♡ん…… ♡」


嘘をつけない、激しい激しい吐精。今すぐにでも、吐き出したい。呑み込んだ。

これもすべて、ヴィタに油断をさせるため。受け入れた。蘞辛っぽい苦味が、厄介と不愉快を連れてくる……これで、終わりだから……


「あんた、負けたんだから……しっかり教えなさいっ」


「勿論 ♡教える色々ってのは、君の知らないえっちな事だよ? ♡あいつの事は、まだ教えてあーげないっ♪」


ヴィタに心を、読まれている……?

軽くいなされ、返す言葉もなくベッドへ押し倒され──わざとらしく身体を重ねられる。

嫌なのに、厭で堪らないのに……ゼーレは何故か腟内からとめどない湿り気を感じた。


「ん゛おっ ♡んあううう ♡あっ ♡はぅ ♡はっ ♡はあ ♡」


「おや、ゼーレの突起は僕の突起よりすっごく敏感みたい〜」


口で揶揄うヴィタに、服越しに下から乳首をぴんとはたかれるだけで……こんなに…… ♡おかしい…… ♡おかしいわ…… ♡


「あのハムエッグ、とっても美味しかっただろう?身も心も堕ちる位に♪」


「ん゛おっ ♡ん゛あっ ♡だめ ♡だめ ♡あんた ♡ゆるさな ♡いっ…… ♡」


やはり心を、読まれている……!

謀られたのだ。きっと先のハムエッグの甘い味付けの中に、狂うくらいのおかしくなる媚薬が潜んでいて──口にした時点で、とっくにゼーレは負けていた。

華美な言葉の虚飾に塗れた、いかにも口だけなヴィタの細いテクニックなど、大したことないと踏んだ目論見。大外れ。

蜘蛛の巣がごとき悪知恵に、くゆり狂わされ堕ちてゆく無様なわたし。

なのに、絡む糸は切なく、疼く突起を擦りに擦り、ゼーレの知らない快楽をこれでもかと連れてくる。なすがままに委ね、飲まれたくはない。でも…… ♡


「そっか、手を出せないもうひとりの君が恋しくて、ずっとずーっと寂しかったんだね〜」


「ちがっ ♡そんなんじゃ ♡ん゛おっ ♡ないっ ♡ぜーれは ♡ん゛ぐうううっ ♡ちがうのっ ♡」


「うんうん ♡賢者になりうるあの子の身体をもらって直接触れて ♡確かめて愛せるようになったんだ もんねゼーレ、君は♡だから…… ♡まず……♡僕で慣れていきなよ〜 ♡」


底意地の悪い、筋道ばかりを……しかしゼーレの目論見通り、従順なふりをすればヴィタは得意げに自爆してゆく。

少なくとも、白無垢なもうひとりのわたしは、わたしに呑まれて消えたのではなく、ちゃんと、生きている──その言葉だけが、今のゼーレを辛うじて繋ぎ止めてゆく。


「まだそんな目をして…… ♡愉しもうよ ♡いじわるなゼーレのぴんぴんなえっち乳首 ♡にはこうっ ♡」


「ん゛あっ ♡ん゛ん゛おっ ♡おかし ♡く ♡なるぅ ♡いや ♡いや ♡いやあっ ♡」


ただし、繋ぎ止められたということは。逆巻く快楽の雪煙の中で立ち向かわず、委ね受け入れもせず……ただじっと動かず、あたたかい愛撫の糸への耐えを要求されるということ。

薬に溶けたゼーレの身体が、言うことを聞かない。とめどない快楽が欲しい、蜘蛛の糸が絡むがままに、ヴィタの掌でおもちゃのように転がされたいと咆哮し、心を吹き飛ばさんとする。

魔手がゼーレの下着にかかり、するりとずり降ろされると、その咆哮は更に強く心に響く。


‎ 「ほらっ♡素直になろ?♡そしたらさ、もっと欲しいものが手に入るんだから〜」


「ん゛っ♡あっ ♡……ふぇ…… ♡やめ……ちゃうの…… ?♡」


乳首への愛撫が、突然終わりを告げる。

ヴィタは上体を緩やかに起こし、嬉しそうにゼーレの頬を摩り、恍惚のまま目線を合わせてくる……値踏みし、こちらの言葉を手ぐすね引いて待っているのだ。

これでは生殺しも、いいところで……もうひとりのわたしが、何処にいるのかも分からないまま。

──そう、これはヴィタに、素直になろうと、言われたから……油断と隙を生む為、なんだから…… ♡


「……あんたが…… ♡したいんでしょ?♡」


ゼーレは赤黒い着衣をたくしあげ、おもむろに股を開き、すっかり出来上がり愛液の滴る秘所を曝け出す。

媚薬に絆されるまま性の奴隷に堕ちてゆくその姿は、我儘極まりない淫筒を持つヴィタにはさぞ覿面に映ったであろう。


「もう〜 ♡……素直な君って子は…… ♡そんな情熱的なゼーレには敵いそうにないや…… ♡優しい僕だからおまけをしてあげちゃおう♡」


ヴィタはベッド脇を軽く漁り、平べったい飴のような何かを取り出す。これは……?


「僕はこう見えても紳士でね、ちゃーんと用意してあるんだよ?」


手慣れた手つきで、ヴィタはそれを陰茎に装着し軽く擦る。表面は、ゼリーのようなものを軽く纏っており……雑誌では見た事のないもの。薬に蕩かされ、演じることを忘れ、無垢に帰ろうとするゼーレは思わず、言葉をあげてしまう。


「これなあに……? ♡」


「ちょっとだけ、優しくなれる……おまじないさ〜」


どういう、こと……?分からない。ヴィタがゼーレを求め、入り口でのたうつ。ぷちゃ ♡くちゃ ♡と淫ら極まりない音が、ぱちぱちと子気味よく鳴る暖炉へと吸い込まれてゆく。


「はう ♡う ♡したいんでしょ ♡そういうの ♡いいからあっ ♡はや……くっ ♡」


「はやく?」


最悪。言ってしまった、認めたくないのに……他ならぬわたしが、識らぬがままに、求めてしまっているということを。媚薬で浮つき、身体が疼いて疼いて、どうして欲しいか、どうされると悦ぶのか、分かってしまっていることを。


「はやくはやくっ…… ♡おちんぽ…… ♡わたしのなかに…… ♡いれちゃいなさいよっ…… ♡」


「素直とは、美徳だ♡」


「ん゛お゛お゛っ ♡ ♡ ♡ん゛むっ ♡ん゛ぐうううううっ ♡」


ふさりとした茂みに、絡む無数の愛液の糸が突き破られる。歓喜のままにペニスを受け入れたゼーレには、膜の破れも、ヴィタの真意も、分からない。ただ快楽が、そこにあるだけ。もうひとりのわたしに捧げたかった純血は、媚薬に毒され、捻じ曲げられ……好きでも何でもない奴に、自分から誘って、散らされて…… ♡


「ねえ ♡君 ♡お゛っ ♡ほんとに ♡えっちの為 ♡生まれて ♡きたでしょ ♡なか ♡はぅ ♡すっご ♡きつきつゼーレだ ♡」


「あっそ ♡あっ ♡よかったじゃない ♡あっ ♡あっ ♡んぅ ♡おくすりえっち ♡すき ♡んあっ ♡なんでしょ ♡」


「えーっ ♡何を言ってるんだいゼーレ ♡薬なんて ♡使ってない よ♡僕はただ ♡とっても美味しかっただろう ♡身も心も堕ちる位に ♡って ♡んくっ ♡言っただけ ♡だから ♡えっちの為に ♡生まれてきたの ?♡って ♡言ってるの ♡」


急速に、背筋がぞわりとした。体内に、異物が這い回っている。

わたしは媚薬で、悪知恵に絆されたから、はじめてなのにこんなにあられもない姿を…… 曝け出しただけで……本当は、何も、ない?

じゃあ、いままでの、いまの、これからのわたしは……?

こんなに激しく、濡れに濡れそぼったわたしは……薬によるものではなく……?


「いやっ ♡いやっ ♡いやああああああっ ♡はなしてっ ♡ヴィタ ♡お゛っ ♡はなしてえええっ ♡」


「声がにゃんついてると ♡説得力 ♡ゼロだよゼーレ ♡自分の本心は ♡あっ ♡受け入れ難い ♡良くある……んっ…… ♡ことさ〜 ♡」


ヴィタの目線に、してやったりという終演への哀れみが映る。

淫ら極まりなく貫かれるまま、ゼーレは確信した。夜より昏い眼は、終焉のそれに近い。

この眼を以て、映るものすべてを貪り、奪い……それが噎せ返る死の匂いを、連れてくるのだと。


「やだ ♡やだ ♡わたし ♡あんっ ♡こんなんじゃ ♡ないいいいっ ♡たすけてっ ♡もうひとりの ♡わたしっ ♡」


「んもう ♡そんな叫ばなくても ♡はぅ ♡もうすぐ逢えるから ♡心配しなくていいよ ♡僕のゼーレ ♡」


「うっさいっ ♡あんた ♡しねえ ♡しんじゃええええ ♡」


それが分かれば、もう用無し──嘗て階段から突き落とし、シベリアの雪に埋めてやったシンを思い浮かべる。

ゼーレの獲物たる、死そのものを象った、鎖に塗れた赤黒い巨腕は……虚を掴み、空を爪で抉り、力なく項垂れ……枕木に落ちことりと音を立て停止する。


「あれっ ♡そんな物騒なもの出して ♡どうしたんだい ♡ゼーレ ♡君 ♡もしかして…… ♡気持ちいいから ♡負け ♡ちゃったの ?♡」


「ちがう♡ちがうっ ♡そんなこと ♡んあっ ♡ない ♡そんな ♡ことないいいいっ ♡いやっ ♡いやっ ♡ゆるしてっ ♡もうひとりの ♡わたしっ ♡」


厭だ。受け入れ、たくない……こんな軽薄極まりない女に、純粋なテクニックだけで、硬くて太いペニスに気持ちいいとこをぐにぐにと潰されて、こんなにも、よがらされて、いるなどと…… ♡


「じゃあ僕も ♡たっぷり ♡びゅびゅっと ♡出しちゃうからね ♡ゴム越しえっち ♡セックスしたいだけの ♡えっち ♡僕大好きなんだ ♡ゼーレも さ♡好きって言いなよ ♡」


「ふざけないでっ ♡いうわけ ♡ないでしょ ♡お゛っ ♡すき ♡なんて ♡だれが ♡だれが…… ♡……これ…… ♡なあに…… ♡なんか ♡くる ♡なに ♡なんなの ♡いやっ ♡いやああああああっ ♡」


「それが潮吹きって言うんだよ〜 ♡憶えて癖に ♡なってねゼーレ ♡イけ ♡僕も ♡すぐイくから ♡」


「やだっ ♡やだ ♡やだやだやだあっ ♡とまって♡おしお ♡おもらし ♡とまってえええええっ ♡」


絶叫と絶頂のはざまで、ゼーレは揺れては跳ね回る。

頭は正気をとっくに失いぱちぱちし、ヴィタの着衣をぴしゃりと濡らす、自分でも分からない程に激しいおもらし。

待つ時間も与えず、ヴィタの陰茎が生命のようにひくつき、一際太さを維持しながら、奥を求めて抜き差し……何かが、くる…… ♡


「受け止めて ♡ぼくの ♡ゼーレ ♡気持ちい ♡気持ちい ♡あ゛うっ♡やば ♡好き ♡僕は ♡こんな ♡えっちな ゼーレ が 好き ♡好き ♡すき ♡いいっ ♡いく ♡イく ♡イく ♡いく ♡…… ♡……ふーっ……ふーっ ♡……いや、ほんっとに……きもちい…… ♡」


もうなにも、わからない。

たすけて、もうひとりのわたし……



「ゼーレ、少し見ない間に、大人になっちゃったんだね ♡」


「はあ……?な、何を言って……?」


やめて。無垢なる白は、すべてを見通す。自分が穢れて、しまったことも。


「ゼーレは、ゼーレより、この子のことが好きになったんだね…… ♡」


やめて。ヴィタに捨て身で、挑みかかり……好きに、されてしまった事を……覗かないで。


「さいごに、ちょっとだけでも……外の世界を、ひとりで識れたあなたを、抱き締められて、ゼーレ嬉しかったな……」


「やめてえええええええっ!」


絶叫。夢……散った心が、かき集めてきた絶望が、つくった夢を見ていた。ゼーレは肩を震わせ、安息を待つが……そんなものは、訪れはしない。何故なら──


「随分と魘されていたようだ……大丈夫かい?僕のゼーレ」


同じベッドの中横たわり、好奇の目を向け、識りたがるヴィタ。悪夢がバトンを渡され、続いてゆくから安息の日は来ない。少し前に、わたしは、この悪女に騙されて……はじめてを……覚えさせられて……


「ああ、君の大好きな精霊のお嬢さんなら、いま隣の部屋にいるから」


精霊のお嬢さん……?まさか……!


「……ウソだったら、承知しないわよ」


「いやだなあ、僕はウソなんか言っていないってば。お疲れですやすや寝てるから、君のわがままで起こしたりなんかちゃダメだよ〜」


導かれるまま足早に歩を進め、もうひとりのわたしの戸を叩き、わたしはここにいるよと伝えたい衝動を抑える。

震える手で緩やかにノブを弄る様は、誰よりも心細くて──居てくれた。天使の寝顔で夢を見る、もうひとりの、わたし……


「あ、ああ……ああ……っ……!」


感極まり、思わずゼーレは啜り泣いた。起こしてしまわないようにと、咄嗟に口を塞ぐ。牙は折れ、寂しくて、耐えきれず、うずくまり……


「ほら、このままだと精霊のお嬢さんを起こしちゃうだろう?帰るよ」


背後からの声。この時だけは──この言葉だけは、ヴィタを信じてやろうと思った。



人類は神に触れてはならない。


「んあっ ♡あぅ ♡はあぅ ♡やだ ♡ぜーれ ♡おきちゃう ♡」


「何言ってるんだい ♡ゼーレ ♡えっちな声が ♡我慢できないくらい ♡大きいのは君の方だ ♡」


啜り泣くままに、ヴィタの部屋へ戻り、扉を閉じて……すぐさま、2回戦ははじまった。隣に、もうひとりのわたしが、何も識らずに、眠っているのに……気持ちいいの……覚えちゃったわたしは…… ♡


「ゼーレはどれが好きかな? ♡僕はね ♡こうやって ♡茂みの入り口 を♡指出し入れして ♡ちゃぷ ♡ちゃぷ ♡が好きそうだ と♡思ってるんだ ♡」


「いちいち ♡あ゛っ ♡うっさいっ ♡だまりなさいっ ♡はぅ ♡はあぁう ♡」


正解。最悪……!絶対に、そんな事は言えない。例えヴィタが心を巧みに読めたとしても、純血を散らされたとしても……この、心だけは、明け渡しなど……っ ♡


「知ってるかい?僕も心が読めるんだ〜、君の相棒、識ちゃんみたいにね♪」


「う ♡うそっ ♡ん゛っ ♡あぅ ♡」


有り得ない、有り得ない、有り得ない……!仲間のひとり、識の律者の事など、全くヴィタには話していない。

まだあいつは、砂鉄の国で……この女は、セントソルトスノーの昼夜に、自由に行き来出来る……?有り得ない。ならばとっくにヴィタの謀は成され、終わっている筈だ。

そうすると、やはり、心が……


「疑うのかい? ♡もうひとつ行こうか ♡口ではどうこう言いながら ♡君はセックスが嫌じゃない ♡何なら君はもう ♡僕にゴムおちんぽでじゅぽ ♡じゅぷぷ ♡と ♡もう一度 ♡されたくて堪らない…… ♡」


「やだ ♡やだ ♡やだあっ ♡いわっ……ない……でっ ♡」


そっと、涙が零れた。ゼーレが靉靆していたのは、悪意ではない。勿論、快活な少女でもなく……文字通りの上位者。

あの奢り昂る愚者ですら、すぐさま跪いて教えを乞う程の存在に近しい。元より勝てる道理など、あるはずもなかった。


「さて ♡そんなむっつりすけべゼーレの ♡お待ちかねなゴムえっちの時間だ…… ♡」


ヴィタは長方形の如何にもな箱を振るも、からからと音もしない。どうやら先に使ったもので、最後のようだ。


「ああ、僕らしくないなんというミスだ!これじゃあ僕の大好きなゼーレがぼてぼてと孕んじゃって、精霊のお嬢さんにバレバレになっちゃうよ……非常に残念だけど……これは挿入はなしだ……」


あんた、どこまでもわざとらしく……!言わなかった。欲しかった。なら…… ♡

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