負け
あおくらげのあほ人類は神に逆らってはならない。
☆
からりとした昼下がり、深々と降り積もる白い雪。家屋にて暖をとり、立ち上る冷気に刺す風を逃れようとも──人恋しくて、誰かにしがみつきたいという寂寥たる感情は消えない。
「困り果てている君を、こっちの方も頼れるヴィお姉ちゃんが放っておく訳ないじゃないか♪」
「あぅ…… ♡んっ ♡むぎゅ ♡」
セントソルトスノーにて靉靆した、艶やかな灰のロングヘアをくゆらせる快活な乙女なはずのヴィタ。
幼い身体に大人びた豊満な魅力を持つ黒ゼーレは、備わった死の権能の残り香から、この女から隠せない獰猛な程の死の匂いを感じ取った。
「むぐうう ♡ふぅ…… ♡ふっ…… ♡」
「そうやってむぐむぐしていた方が、可愛いよ」
一市井人では絶対に帯びない、わたしの長い黒髪で振り払いたい位噎せ返る香り……幾ら命を奪えば、そこまで堕ちる?いち早く、探る必要があった。
例えるならば、元天命主教の男の業に塗れた愚者か。軽く言葉で探っただけで、ヴィタは言葉の節々から、奴を惹起させる限りない悪意の愉悦を象った魔手をこまねいて挑発してきた。
「どこまで ♡しって…… ♡あん、た…… ♡」
「さあね、ただ君がキスだけでスイッチがぴこんと入っちゃうとてつもなくえっちという事は今知ったよ〜」
放っておけば、ヴィタの隠された思惑に唆され、取り返しのつかないことになるのは自明であった。
仲間を、もうひとりのわたしを、守らなくちゃ……単身悪姫の懐に飛び込む勇気を振り絞ったゼーレを待っていたのは──暖を取るベッドに座り合い、抱き寄せられ淫らを究めた接吻の洗礼。
「あんな美味しいハムエッグをふるまった僕を疑うなんて。だめだめ。死に神が心の隙間に忍び寄るなんて、別れのギムレットにはまだ早過ぎるんだ」
「んうっ ♡んうううううっ ♡うっ ♡んぎゅ ♡」
「僕はか弱い乙女だから、あいつみたいに暴力で訴えるなんてのはしない。尋問のテクニックにはこういうのもある……そうだろ?戦乙女」
心の隙間に忍び寄る死に神。それは、あんたの方だろうが──心の中で毒付いた。ひとつ、ゼーレが分かった事……この悪女は、まるで演者のように言葉を並べ立て、過剰に自身を守りたがるということ。
奴に比べると、明確なウィークポイント。吐かせ続ければ、何れ致命的なボロを出すとゼーレは確信した。
その為なら、わたしの身体が穢れてしまう位、構わなかった。穢れを知らぬ無垢で白い、もうひとりのわたしに、この悪鬼の牙が突き立てられずに済むのなら、悦んで犠牲にな……!?
「あれっ、初めてかい?こういうの」
「…… っ……♡っふ…… ♡」
「僕の影りに気付いた賢ーい君なら、お部屋に男女ふたりきりだとどうなっちゃうかなんて、言うまでもないだろう?」
ベッドの端へと抱き寄せられ、脇に立ち上がったヴィタの緩やかなローブがたくし上げられると、眼前をちょうど塞ぐようにまろび出たのは……女の肢体では、ありえないもの。穢れに穢れ黒ずみ、欲望のまま精を吐き出す陰茎。
想定外。頭の中でエラーが鳴り続け、もうひとりのわたしに捧げたいと誓った純血が悲鳴をあげる。嫌だ、いやだ、嫌だ、嫌だ──!
「音頭を取ってくれれば、鴨が葱しょってやってきたおばかな君にも分かりやすいよう、色々教えてあげられるかも知れないね〜」
「ん… …♡んっ…… ♡んあ…… ♡」
耐えろ、耐えろ、耐えろ……!演者に負けじと痴女を演じ、望むがままに吐精させてやれば、この悪女は悦んで自滅の路を歩み、進んで奈落へと堕ちるのだから……!頭の中に去来する不穏と悲哀を、ゼーレは強い言葉でかき消した。
「これがおちんぽ。おちんぽだよ〜♡いーっぱい御奉仕して、ヴィお姉ちゃんから……っ ♡色々教えて ♡もらっちゃおう…… ♡」
「ん…… ♡くっさ…… ♡なに、これえっ…… ♡」
鼻の曲がるような悪臭。被った皮から覗く、わざと残したであろう恥垢。ここまですべて計算通りといった赴きで、冷たい冷たい向かい風。無心で、咥えた。さっさと、出せ……!
「おっ ♡手じゃなく拭きもせず ♡いきなり咥えるなんて ♡はぅ…… ♡ゼーレはなんて ♡出来る子なんだ ♡」
ゼーレはかつていやらしい雑誌が見たいと、衝動的に手に取ってしまった事がある。
もうひとりのわたしにバレないようにと気恥ずかしく立ち読んだそれを、必死で思い返し再現する。
ヴィタの陰茎は明らかに我慢弱く、底の見えぬほど昏い心とは真逆で、今のわたしでもきっと訳なく処せるもの──僥倖。ここで出させれば、容易く萎び純血を守れる……先端を舐めあげた、舐めあげた、舐めあげた……!
「やば ♡君 ♡おくちをおちんぽで ♡いっぱいに ♡してあげたかっただけなのに ♡」
「むぐ ♡ふっひゃい ♡ふぁっふぁと…… ♡ふぁっふぁといけ♡」
「君さ ♡えっちの為に ♡生まれて ♡はぅ ♡きたんじゃないか ♡やば ♡むり ♡出る ♡ゼーレの ♡はあうぅ ♡おくち ♡まんこ ♡癖に ♡なりそ ♡ほらっ ♡いくよ……っ ♡っは…… ♡残さず…… ♡のんでよっ…… ♡」
「ん゛っ ♡ん゛うっ ♡ぎゅ ♡……んく…… ♡ん…… ♡」
嘘をつけない、激しい激しい吐精。今すぐにでも、吐き出したい。呑み込んだ。蘞辛っぽい苦味が、厄介と不愉快を連れてくる……これで、終わりだから……
「あんた、負けたんだから……しっかり教えなさいっ」
「勿論 ♡教える色々ってのは、君の知らないえっちな事だよ? ♡あいつの事は、まだ教えてあーげないっ♪」
ヴィタに心を、読まれている……?軽くいなされ、返す言葉もなくベッドへ押し倒され──わざとらしく身体を重ねられる。嫌なのに、厭で堪らないのに……ゼーレは何故か腟内からとめどない湿り気を感じた。
「ん゛おっ ♡んあううう ♡あっ ♡はぅ ♡はっ ♡はあ ♡」
「おや、ゼーレの突起は僕の突起よりすっごく敏感みたい〜」
口で揶揄うヴィタに、服越しに下から乳首をぴんとはたかれるだけで……こんなに…… ♡おかしい…… ♡おかしいわ…… ♡
「あのハムエッグ、とっても美味しかっただろう?身も心も堕ちる位に♪」
「ん゛おっ ♡ん゛あっ ♡だめ ♡だめ ♡あんた ♡ゆるさな ♡いっ…… ♡」
やはり心を、読まれている……!図られたのだ。きっと先のハムエッグの甘い味付けの中に、狂うくらいのおかしくなる媚薬が潜んでいて──口にした時点で、とっくにゼーレは負けていた。
華美な言葉の虚飾に塗れた、いかにも口だけなヴィタの細いテクニックなど、大したことないと踏んだ目論見。大外れ。
蜘蛛の巣がごとき悪知恵に、くゆり狂わされ堕ちてゆく無様なわたし。
なのに、絡む糸は切なく、疼く突起を擦りに擦り、ゼーレの知らない快楽をこれでもかと連れてくる。なすがままに委ね、飲まれたくはない。でも…… ♡
「そっか、手を出せないもうひとりの君が恋しくて、ずっとずーっと寂しかったんだね〜」
「ちがっ ♡そんなんじゃ ♡ん゛おっ ♡ないっ ♡ぜーれは ♡ん゛ぐうううっ ♡ちがうのっ ♡」
「うんうん ♡あの子の身体をもらって直接触れて ♡確かめて愛せるようになったんだ よゼーレ、君は♡だから…… ♡まず……♡僕で慣れていきなよ〜 ♡」
底意地の悪い、筋道ばかりを……しかし白無垢なもうひとりのわたしは、わたしに呑まれて消えたのではなく、ちゃんと、生きている──その言葉だけが、今のゼーレを辛うじて繋ぎ止めてゆく。
「まだそんな目をして…… ♡愉しもうよ ♡いじわるなゼーレのぴんぴんなえっち乳首 ♡にはこうっ ♡」
「ん゛あっ ♡ん゛ん゛おっ ♡おかし ♡く ♡なるぅ ♡いや ♡いや ♡いやあっ♡」