諏訪最後の決戦

諏訪最後の決戦

   


  

何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故

なんで見捨てられた?

自分の皆の献身に価値なんてなかったんですか

自分も歌野さんも水都さんも他の皆だって生きていた必死に今を生きていた

それは全部本命の為の捨て石なんですか。

巫山戯るな、歌野さんはそれでいいと思うでしょう。

でも自分は納得なんて絶対にしない、

空から来た白い奴らもそれを統べる神も見捨てた神樹も未来永劫呪ってやる

【大赦検閲済み】ボロボロの手記より


バーテックスに破壊の限りを尽くされ人は皆居なくなった本州最後の地 諏訪、そこにソレは居た。

例えるなら歪なウィッカーマン、全長五十メートルの人を模した巨軀。

腕は長いのと短くのが合わせて十本 、足は四本の山羊の蹄に蜘蛛の脚。

そして頭上には鉄輪が天使の輪の様に煌々と輝く。

しかしそれはこの地を去った神の残滓を取り込んだ少年の成れの果て

人身御供の巨人あるいは堕ちた神の模造品即ち祟り神。

その身は50メートルという人を模すには余りに不相応、だが走る度に地面を踏み砕き土砂を舞い上がらせ地震と衝撃波を引き起こし一度吠えれば植物は過剰な生命力を与えられ急成長の末に塵のなる

それは生きたいという少年の祈りであり神々への呪いでもあった。

だがそんなものを天にいる者が見逃す筈もなく

バーテックスが襲来する。

ここまでその身を運んできたソレは今巨大な炎塊、太陽の如き恒星となって迫り来る……いや焼き尽くそうとやって来た。炎塊の光は灼熱、生物は勿論だが大地は融解、蒸発し炎の竜巻が地上には幾つも巻き起こる。

しかしソレは立っていた、太陽の如き炎塊は確かにソレの九割を溶かし消し飛ばしたが残った部位で地面を穿ちて耐え直ぐに再生したのだ。

「■■、■■■、■ッ!!!!!」

ソレは吼えた怒る様に宣戦布告する様に。

太陽の如き炎塊は、虫ケラを叩き落とすかの様に先程より巨大な火炎弾を落す。しかしソレは三歩前に歩き片足を前に出して踏む、文字通り地面に穴が空くほど脚に力を入れて飛び上がる、飛来する炎が当たるが熱と衝撃を全て耐えた。天高く舞い上がり炎塊に向かい、両の手を合わせた。

生み出されるのは何人にも溶かされぬ鉄の翼、鉄の剣、鉄の盾、 その巨体は太陽の如き炎塊へと特攻。

体当たりと斬撃で上から引き裂く。

身体が引き裂かれた太陽の如き炎塊から星屑が次々と生まれる。

星屑とて勇者ですら容易ではないモノ、ソレは三歩踏み出す度に星屑を消滅させていく。その度にグチュグチュという水音を立て白い煙を上げるが直ぐに再生する。

地に降りたソレは空に未だ佇む炎塊を

四つの瞳で睨み付け弓矢を生み出す。

ソレが造る矢、必中と絶命の二つが連なった物が 一筋の光の如く炎塊に向かって行く。

放たれた無数の炎弾に当たろうとも矢は怯まず貫き射抜く。

直ぐ様弓を投げ捨てて、両刃剣を構え飛来する炎の弾幕を突き進む。星屑を焼き払い熱を切り裂き剣に力を貯め、それを突き下ろし太陽の如き炎塊を切り裂いた。

切り裂かれた炎塊は消滅する。

ソレは今まで以上に鉄の剣と盾を鳴らし、更なる力をその身に溜める。天に向かって、遥か遠くで佇む太陽に咆哮して地響きを起こす。

ソレは腕と脚をこれでもかと振り上げ大弓を構え──天空を撃ち抜いた。


音は大気を震わせて風鳴となる、星屑は全てその矢が蹴散らし空は白く、何もかも白に染まる。

「へぇ、気付けるんだ」

ソレが見上げた先に、それはいた。

先程の太陽の様な炎塊に比べると矮小、されど人の形をした者。

白く美しい、腰まで伸びる艶のある髪

整った顔立ちの眉目秀麗な少女。白と黒が混ざる衣を纏い、紅い帯を締めている、

紅い帯と下は短い丈、それは彼女の脚の動きを妨げず白く美しい脚を見え隠れさせていた。

そして白魚の様で白い細腕、しかしその肌には黒い罅が入り痛々しい、

「さて、選べ“木屑“、ここで朽ち果てるか……我と共に来るか」

少女は優しく微笑み手を差し出す、まるで愛しい子供を招く様に。それは慈愛に溢れ父や母の様な……だからこそ恐ろしい。

だがソレの答えは

矢を放つ事で答えられた。

極太の矢が彼女に殺到する。

「なら仕方がない──貴様の墓標は何処にも無いぞ」

その言葉は何処まで本気だっただろうか。

瞬きの間に少女の姿のモノは視界から消える、少女の姿はまるで溶けた様に、在るべき場所から無くなったかの様だった。

「何処に撃っている間抜け、こっちだ」

その声と共にソレの身体に焼ける様な激痛が走る。それは稲妻の槍を刺された様な痛みだった、それを理解するよりも早くソレは風穴の空いた右腕を見て──目の前が真っ暗になる。

その時には声が何処からか聞こえてきた。

「──私は太陽であり星である、即ち光そのものでもある、故に私がいなければ光もないのは必然、さて次は水責めだ」

その言葉と供に身体が水に包まれ呼吸出来なくなる。ソレは無様に藻掻きもがくが一向に空へ辿り着けない。

息苦しさと痛みがソレの体力を奪い。太陽の光すら届かぬ、光の届かない闇の海へと沈められようとする。

だがそんな事で諦めない、

自らの腕に穴を空けて尚突き進む、下は深淵奈落深くその身を刻むが天には届く、

「ほう」

ソレが腕を突き出す。

一瞬の隙を突いて、少女の喉仏へと突き刺そうとした。

しかし届かない、白き指でその腕を抑えつける。

「光も見えぬのによく辿り着いた、それ程までに私が憎いか、だがそれで良い私は許そう存分に恨め呪え憎め、貴様ら勇者にはその権利がある」

その声は本当に愉しそうだった、その声には侮蔑も嘲笑もない、心の底から愉悦に満ちている。

何処までも無邪気で、どこまでも残酷だった。

「だが、私が許すのはそこまでだ、それ以上を貴様らに許した覚えはない」

そう言い少女は突き付けた指に力を込める。

「さらばだ木屑、この期におよんで天に届かんと欲したその心意気だけは認めてやろう」

堕ちる堕ちる堕ちる 落ちる落ちる墜ちる、だが一瞬ソレはほんの一瞬の僅かな刹那とも呼べる時間、鉄輪を投げた

「まだ楯突くか、諦めの悪い奴め」

少女は鉄輪を片手で掴む、腕と手の間に紅いスパークが走るが少女には何も起きなかった。

「だが無駄だ、私は神なのだよ」

そう少女は──神は告げた。

そしてソレは地に墜とされた。


諏訪の地は荒地と果てている、ソレが再生する度に土地が寿命を吸われソレが植物を操作する度に痩せ細るからだ。

神は神でもソレは祟り神だ、どこまで行こうと破壊しか生まぬ 祟り神、だがソレは一つだけ守っていた。

祟り神になる前に最後に作った白鳥歌野と藤森水都の墓だ、ちっぽけで粗雑な少し形を整えた石を遺体の埋まる土に乗せただけのものだった。

ソレはゆっくりと這いつくばりながら墓に近づき名前を掘った場所を優しく撫でる。

自身の名も顔も好きな物も嫌いな物も、何もかも忘れている だが二人の事だけは覚えていた、忘れられなかった。

故にソレは泣きたくてたまらなかったが何も泣けない、石ころの眼では植物で出来た身体では涙なんて流せない。

それが悔しくて悲しくて──ソレは吼えた。

「…あれではもう戦えないな、頼みの再生は土地がダメなら使えず神の力も生産は出来ず残滓も尽きかけてる、アレももう長くない」

ソレを墜とした少女はそう呟くと自身の片手に視線を移す。

その手には一筋の傷口が出来ていた。

少女は傷口を見て笑い人が変わったように言う

「ふぅん、悪足掻きも意味があったね、分身とはいえ私に傷をつけた──いいよアナタの地にはもう仕掛けないであげる好きなだけ供養の真似事でもするといいよ、じゃあね“人間“」

少女はそう言い残すと崩れていき塵へとなった。

そんな事は露知らずあるいはもう忘れたのかも知れないがソレは墓標に一粒の滴が垂れた。

大方少女に受けた水責めのせいだろう。

だがソレにとっては涙も同然だった。

それからソレは墓守りとなった、最早人と動物と星屑の差などわからぬ程壊れきっていたが、それでも墓だけは守り続けた数ヶ月後の壊れるその時まで守り続けた。

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ソレ:諏訪ワイの堕ちた果て元来いた筈の神の力が反転した結果過剰成長させたり生命力吸って再生したりできるようになった例えるならシシガミ様

天の神:想像以上にやばいのを見つけたから急遽もう一つ未完成レオを製造する羽目になって壊されたので人の形を試しに造り顕現して潰そうとした、直に高ワイと接触してブレイバーを製造する前なので安定してなく時間が経つと自壊する欠陥がある。

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