誰も知らない記録
「・・・あぁ、憎らしい、憎らしい」
時は平安
大雨の中、血濡れの一人の人間と瀕死の一匹の呪霊が相対していた。
片や白山颯太、
呪霊を討伐する為にただ一人で根城にやってきた男
その髪は銀髪、そして瞳は美しき赤色だった。
片や獣の特級呪霊、暴猫。
猫の身体に龍の翼、そして四の瞳を持つ獣への畏怖より生まれし怪物だった。
「・・・うるさい!俺はお前達に・・・!」
白山は憎しみをぶつけるかのように口を開く。
だがその声に重なるようにして暴猫が口を開く
「何がお前達にだ、その憎しみを儂達にぶつける理由はなんだ?貴様の友を呪霊が殺したからか?だが儂は人間達に気を使いこの山に籠っていた、時には力を貸してやった時もあった、それなのに貴様は儂にその呪いをぶつけるというのか?」
「黙れ!獣風情が通りを説くな!」
その言葉を聞くと暴猫は嗤い始める。
「獣風情が通りを説くな・・・?ククク・・・ハハハハハ!!」
「何がおかしい!」
「貴様は仇という建前を立てながら周りの命の事を考えずに自分のやりたい事の為に平然と命を奪う、これを獣と言わずして何というのだ?」
「何だと・・・!?」
その言葉を聞いて白山は怒りをさらに暴猫に向ける。
「・・・どの道貴様はここで終わりだ!とっとと・・・!」
そういい暴猫に斬りかかろうとする。
・・・あぁ
愚かな事だ。
「暴猫咆哮」
暴猫は白山に術式を使った咆哮を向ける
「・・・な!?」
咄嗟に白山は防ごうとするがもう遅い、狙いは白山・・・
そして白山と血が繋がっている者だ。
「・・・ククク、お前にお似合いの姿だぞ白山」
そう暴猫は猫の姿をした白山に告げる。
目の前の白山は困惑した表情だったが自信の姿に気づくと慌てるような表情をし出した
「その姿は儂から貴様への呪いだ、貴様が儂に呪いを向けるように儂も貴様に呪いを向けたまでよ・・・なんとも愉快よな」
「フー!フー!」
そう聞くと白山は威嚇するような声を上げる。
・・・だがこれを見て暴猫の表情は更に嗤う
「そう怒らずとも儂はもう死ぬ・・・だがさらにとっておきの呪いを残してやろう」
「!?」
驚愕した表情の白山を見て暴猫は気分が良くなったかのように話す。
「いずれ貴様の家族の子孫には青き瞳の子と獣の姿をした子が生まれる、前者は貴様の血を引く者を全て滅ぼし、後者は儂の身体と術式を受け継ぎ、理性無き獣として世に混乱をもたらすだろう!・・・ククク、あーはっはっはっは!!!!」
そう言い残し暴猫の体は呪いとなって四散する・・・
「ニャー!ニャー!ニャー!!!」
残されたのはただの獣一匹であった。