誰そ彼の邂逅
ある日。出演
救零
———
今日も今日とて太陽が見下ろす晴れの日。黒い犬と並走しながら息をあげる女性の姿がある。
「はぁ、...はぁ...って、ま、まって...!?」
息を整えようと信号機前で立ち止まれば再び青になり、散歩道を頭に入れてしまっている黒犬は駆け出すのみ。誰そ彼時は人は疎で、知る人ばかりなので寧ろ微笑まれる始末。
そんな犬がピタッと止まり、尻尾を振る。女性も止まって息を吸って吐いて、犬を見る。
「よっ、——。久しぶり。元気?」
黒犬をわしゃわしゃと撫でるのは、散歩道で会う青髪の彼。目頭が少し落ちて細められる眼の先は女性。これ以上愛おしいと思うものはないと言わんばかりの甘い眼差しを、女性は気付いているのか否か。
「こんにちは。お久しぶりです。見ての通り元気ですよ!」
「なら良かった...最近顔見れてないからどうなんだろって心配してたから」
「来なかったのはそちらの方じゃないですか...?でも、会えて安心しました。」
あどけない顔で微笑み汗を流す女性とタオルを差し出す男性。間に挟まる犬が双方を見て尻尾を振り、頭を撫でられている。
そうして暫く談笑して、戸惑いの表情を見せたり悩んだり。気付けば日も落ち切って深い紫と紺が赤に混じり合う空へと変わる。
「...日、落ちちゃったな。」
「そうですね〜...そろそろ戻らなきゃな。」
「そっか、...じゃあ、また。」
「...はい。今度はもう少し早めに会いましょう!」
女性は男性を横切って進み、男性は女性の歩いてきた道を辿るように歩き始める。
いつもあるようでない、そんな夕時の邂逅だ。