誰が悪い?
いつからだろう
彼を気にかけるようになったのは
いつからだろう
彼を愛するようになったのは
いつからだろう
彼がおかしくなってしまったのは
きっと、あそこからだ
加茂先生が突如行方不明になり、死んだと上層部からの通達があった時
その日に彼は高専をやめた
きっと期待しすぎていたんだ
彼が自分自身の力で立ち直ることができるのだろうと思ってしまったんだ
それで、取り返しがつかなくなるだなんて考えもしなかった
断頭台の上に立つ
__________________
死の寸前に立ち、過ぎ去った記憶の数々が脳内を巡り始める
これは、走馬灯というものだろう
実家、狗巻家で過ごした日々
呪術高専で過ごした日々
そして、冬河さん
彼と過ごした私にとって何よりも大切な日々が、甘味な思い出が脳に満ちる
私はどこで間違ってしまったのだろう
彼に想いを伝えなかったこと?
彼を案じて会いに行かなかったこと?
彼に、巡り会ってしまったこと?
あの時の記憶が脳に過ぎる
『貴女に、冬河さんは相応しくない!』
私は
『冬河さんに自分を依存させて一緒に居る、それでいいの!?』
ただ
『それで、冬河さんは幸せなんですか!?』
彼に
『…あのバカに何の苦労もせずに好かれた女には、私の気持ちはわからないよ』
幸せになって
『勝、アンタはどうなの?』
欲しかっただけなのに
『…ああ、俺は幸せだよ』
どうして
『…だから、気にしないでくれ、頼むから…俺は、平気だから、大丈夫だから』
そんな
『優希、俺のことは忘れてくれ』
泣きそうな顔をしているの?
『勝、もう行こうよ』
『…ああ、わかった。』
お前なんか
『お前なんか、
死んでしまえばいいばいいのよ!!』
私は、感情が昂ると術式の制御ができなくなる
怒りに任せた言ったその言葉には、確かな呪いが籠ってしまった
『愛子!危ない!!』
冬河さんは咄嗟に彼女の耳を塞ぎ、私の呪言の餌食となってしまった
『『ガフッ…』』
冬河さんは呪力ガードで呪言の威力を下げ、血反吐を吐き気絶する程度にまで負傷を抑えることができた
当然、私に反動が訪れ彼と同じように血反吐を吐いた
『勝!?ちょっと!?大丈夫なの勝!?目を覚ましてよ勝!!』
北沢愛子は勝さんに近づき介抱をする
そして、私を睨んだ
『ちが、わた、そんなつもりじゃ…』
私は、やってきた術師に拘束されて流れるように呪詛師として認定された
__________________
…そして、今に至る
処刑人が部屋へ近づく足音が聞こえる
扉が軋む音と共に、1人の男が入ってくる
「…優希」
この声は、宗一郎
ああなんて悪趣味な、上層部はどこまでも悪意塗れだ
私が友人だと思っていた彼を処刑人に抜擢するとは
拘束が外れる感覚がした
「逃げろ今すぐに」
「ここを出てすぐに森がある」
「そこなら追ってを撒けるはずだ」
「頼む…早く逃げてくれ…!!」
それだと、宗一郎さんが…
「俺のことはいい!!
俺は適当にやり過ごすから大丈夫だ」
…ありがとうございます
__________________
俺、何やってるんだろう
ぼんやりと空を眺めながら俺は考え事をしていた
師匠が宗一郎に殺されて、都合の良い依存先として愛子を選んで依存して…
そして優希を怒らせた
俺、何やってんだろ
………愛子のとこへ行こう
愛子の家へ行き、インターホンを鳴らす
そして彼女に招かれて部屋へ入る
そして、今日の要件を話す
「なあ、愛子
やっぱりさ、俺たち別れないk「嫌よ」…え?即答?」
「嫌に決まってるじゃん
やっと、やっと一緒になれたのに今になって別れる?
そんなの嫌に決まってるでしょ」
「あ、愛子…?」
「アンタが私に惚れてないことなんて、そんなのわかってるのよ
そして、これから先も絶対にありえないことなんて
だから何かの間違いでアンタと付き合えたのは本当に嬉しかったの
なのに今更別れる…?
私が今まで、どんな想いでアンタと一緒に居たかわかる?
どんなにアピールしても『大切な親友』にしかなれなかった私の気持ちがわかるの?
ポッと出の女に好きな人を掻っ攫われた私の気持ち、わかるの?ねぇ?」
「あい、こ…?」
「…だから、逃げられないようにするわ」
愛子が俺をベットに押し倒す
「え!?ちょ、ちょ!?」
「アンタは、無駄に責任感強いから子供できたら責任取るしかないでしょ?」
「愛子お前何考えてるの!?」
「大丈夫よ勝。アンタは天井のシミでも数えてなさい。」
俺は愛子を押しのけて、立ち上がりベッドから離れる
「だ、だだだ、ダメだ!!
まだ早い!!既成事実云々の前に俺たちまだ高校生だろ!?
こう言うのはダメだ!死刑だ!!」
「…はー、やっぱり無理よね
力じゃアンタの方が断然強いし、そういうことに耐性ないもんね勝は
でも、私は別れる気なんかないから
そこは履き違えないでね」
…どうやら説得は難しそうだ
「また来る」
そう言って俺は愛子の家を去った
__________________
俺は愛子の家を去った後に、山を登っていた
日々の日課というのもあるが心のモヤモヤを振り払うために少し遠くの山を登って運動していた
すると、見覚えのある気配を感じた
あの気配は優希だ
そういえば俺が彼女に気絶させられた後、どうなったんだろうか?
多少怒られはしただろうが、これについては俺が悪いからな…
心配させてごめんって言おう
そう考えながら俺は気配のする方へ、歩き出した
__________________
は?
目の前には満身創痍の優希の姿があった
意味がわからない
理解できない
どうしてこうなったんだ?
「と…うが…さん…ですか…?」
もういい喋らなくていい
「すみ、ま…せん…」
なんでお前が謝る
どうしてお前が謝る?
何があった?どうしてそうなったんだ?
「この前の、件で…呪詛師認定されて…し、まって…
それで…秘匿死刑に…」
この前のって…あの時の…
あれは事故だ
彼女の意思じゃない
それにこれは、その案件と比べて圧倒的に罰が大きすぎる
そんなこと、バカな俺でもわかる
「す、みません…」
だから、なんでお前が謝るんだよ!!
なあ優希!!
「最後に、
これだけ伝えさせてください」
…なんだ?
「生きて」
『 ̶ず̶っ̶と̶』
ああ、ダメだ
これは呪いになってしまう
「幸せになってください」
『お̶慕̶い̶し̶て̶い̶ま̶し̶た̶』
優希………………
⬛︎⬛︎⬛︎、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎
__________________
ああ、どうしてこうなったのだろうか
きっと俺が悪かったんだ
弱かったから
間̶違̶え̶た̶か̶ら̶
だから失ったんだ
次は奪わせないように
次̶は̶間̶違̶え̶な̶い̶よ̶う̶に̶
もう何も失わないように
強くならないと
変̶わ̶ら̶な̶い̶と̶
いけない
̶も̶う̶嫌̶な̶ん̶だ̶。̶
̶こ̶の̶世̶か̶ら̶消̶え̶て̶し̶ま̶い̶た̶い̶。̶
__________________
旅に出ることにした
世界各地を巡って、色々なことを学んで強くなる
もう何も失わないために
幸い、術師としての活動で資金はたんまりと貯まっている
これで数年程度は保つだろう
それに現地で稼いだり、食料を自力で調達して節約すれば更に滞在できる時間は伸びる
これはあまり関係ないが、愛子も旅についてゆくことにしたらしい
確かに付き合ってはいるが普通ここまでするか?
おっと、そろそろ飛行機が来るみたいだ
俺も行かないとな
誰̶か̶、̶俺̶を̶殺̶し̶て̶く̶れ̶