”誤報”

 ”誤報”


 「最近の世界経済新聞は、誤報が多いわねぇ」

 偉大なる航路のとある島の喫茶店でケーキを一口食べるとステューシーは呆れた声を出す。目下世間を騒がせているのは二人の英雄の逃避行で在るのは疑う余地も無いだろう。だからこそ連日一面を占めているのには十分なのだが少々誤報の訂正が申し訳無さそうに三面の片隅へ載っている。

 「そう言ってくれるなステューシー。あの破天荒な二人の足跡を追うだけでもどれを採用するか悩みどころなんだ。ましてや次は何処へ行くかなんて、とてもとても」

 けろりとした顔でモルガンズは悩ましそうにするも飲んだ珈琲が今一苦過ぎたのか渋い顔をする。何の後ろ盾も存在しないルフィとウタが此処迄逃げられているだけでも奇跡に近い。海軍の威信に掛けてでも天竜人を害した愚かな下々民は磔刑に処さねばならぬ。

 「いやいや、願わくば誤報なんて出したくもないもんだ。唯でさえ印刷が追い付いていないこの状況で、たかが謝罪記事……おっと、失礼」

 砂糖を三つばかり加えれば丁度良くなったのか上機嫌にモルガンズは又口を回し始める。するとステューシーは懐からそっと封筒を差し出すとモルガンズは中身を検めた。近くの島で飢餓が起こるかもしれないのと世界経済新聞社からも善意の寄付をと。

 「どんな特ダネ狙ってるのか知らないけど、あんまり無茶すると偉い人から怒られるわよ。誤報だからってやりすぎると海賊達も間違えるだろうし」

 歓楽街の女王として呆れ返っているステューシーの態度に新聞王は一つ高笑いをする。上としても全く忌々しい事に今回の保護と攪乱の一手に於いては彼の手を存分に使わねばならぬ。何しろルフィとウタが逃げ続ける事は彼からしても最高のスクープなのだから。とは言え捕まる方が興に乗るのならば何ら遠慮呵責も見せず誤報を出すだろうが。

 「最近は我が社の誤報で海賊達が海軍とおっぱじめるのも多いってもんだ。全く、自分のペンの重みに震えてしまうってもんだぜ、クワハハハハハ!」

 

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