認識阻害セ部屋_その後

認識阻害セ部屋_その後


 

ドアノブに手をかければ、難なくとノブが回って扉が開いた。

晴信と景虎は一度顔を見合わせうなずき合い、扉をくぐる。

扉の先はカルデアの廊下の一角、人気の少ないエリアの隅だった。二人が背後を振り返れば、既に扉は影も形もなかった。

あの部屋は何だったのか。魔術なら多少は残されているはずの痕跡も見られず、聖杯でも魔術師系サーヴァントの悪戯でもなければ一体何なのか。

晴信が扉のあった壁を凝視しながら考えこんでいると、突如襟を掴まれ下に強い力で引っ張られた。

唇に生温かい粘液と柔らかい感触が伝わる。直後、歯に硬いものがぶつかったかと思えば、少しばかり鉄錆の味が口の中に滲んだ。

すぐに景虎が勢いよく口付けをしてきた事は分かったが、人気が無いとは言え個室でもない場所でしてくるとはらしくもない。

晴信は滲む血の味を喉の奥に流し込み、なおも深く重ねようとしてくる景虎から口を離した。

「あっ……」

離された景虎の口から物欲しげな声が漏れ出る。熱を孕んだ目が晴信を見つめ、まだ足りないと言いたげに襟を掴んだ手に力が込められた。

「誰か来たらどうするんだ。それに続きは部屋でするとさっき」

「今」

晴信の言葉が遮られ、襟をつかんでいた景虎が晴信の首に手を回して抱きついた。その腕に力を込めて離れまいと密着し、頬を晴信の頬に擦り寄せる。

「今がいいんです。さっきの部屋で思い出せなかったので、全然してないじゃないですか……」

「……あぁ、そう言えば、そうだな」

先ほどまで入れられていた部屋には認識を阻害する仕掛けがあった。どうやら自分だけでなく、景虎もしっかりと被害にあっていたようだ。自分と景虎に程度の差があるのは有する対魔力の差によるのだろうか。景虎に言われるまで一度も口吸いをしていなかったことを認識できなかったのもそのせいだろうか。

部屋で焦らされたまま達せていないせいか、景虎は執拗に身体を擦り付け口付けをねだる。晴信も次第に身体に熱が集まってくるのを感じるが、今ここで口付けをしてしまえば歯止めが利かなくなるのは目に見えていた。

晴信は仕方ないとため息をつき、自分から離れない景虎の体を抱きあげた。景虎の汗ばんだ脚が手に吸い付く。鼻をくすぐる普段景虎が絶対に出さないであろう女の色香に、晴信の中に小さく焦りが芽生える。

「景虎、絶対顔を上げるな。誰にも顔を見せるな、いいな」

今は誰にも会わないのが一番だが、それは日頃の行いに賭けるしかない。

景虎が頷くのを肩越しに確認し、晴信は足早に自室へと急いだ。

 

晴信の革靴が床を鳴らし廊下を駆ける。見つかりたくないなら走る音など立てない方がいいのだが、今は足音を殺す暇さえ惜しかった。

幸いにもスタッフやサーヴァントの気配も姿も無く、誰にも出会うことなく晴信は自室の前へと着いた。

時間にして二分にも満たなかっただろう。けれど、その倍はかかったかのように思え、普段ではありえないほど晴信は息を切らしていた。ずっと息を詰めて走っていたと、己の焦り具合に自分でも驚く。

自室の扉を開け、滑り込むように入ると同時に扉を閉め、ロックをかける。

ここまですればもう安心だ。晴信が景虎に声をかけようと横を向けば、そのまま景虎に勢いのまま唇を奪われた。

いまだ抱きかかえたままの景虎からの行為に思わずバランスを崩しそうになるも、とっさに閉めたばかりの扉に背を預ける。頭と背をしたたかに打ち付けたが、景虎の勢いが止まることはなかった。

舌で歯をなぞり、口内で浮いたままになっている晴信の舌に応えてほしそうに何度も絡みついてくる。

景虎から流れ込んでくる唾液に血の味が混じっていることに気が付く。脱出後に唇を奪った時に、景虎の方も口のどこかを切ったのだろう。口から溢れそうになる唾液を飲み込めば、二人分の生ぬるい液体が晴信の身体の中に落ちていくのが分かった。

息を整える間もなく口を塞がれ、取り込む空気よりも多く、景虎の吐き出す息を肺に送られる。興奮か酸欠症状か、晴信の血脈が激しくうねり、さらに息が荒くなる。

少し視界が揺れるその先で、景虎の目が幸せそうに細められている。それを視認し、ならばかまわないと晴信は景虎の舌に応えるべく深くその口を吸った。

顔に手を添えられ、角度を変え、深度をかえ、それでも唇だけは離すことなく、晴信に抱きかかえられたまま景虎は、その口へ、喉へ、肺へ、景虎を味わわせてきた。

舌を押し返すように絡ませ、舌裏の筋に舌先を沿わせる。音をたてて景虎の口を吸い、流れ込んだ唾液を舌に絡ませ景虎の舌で混ぜ合わせれば、口の端から少しばかりこぼれ出した。

すでに熱は溢れるほど溜まりきっていた。景虎を下ろして他の場所へ吸い付きたかったが、いまだ景虎が晴信の口を離す気配がない。あの部屋で絶頂を迎えさせてやれなかった分、思うままにさせてやろうとも思っていたが、いい加減晴信は次に移りたかった。

景虎のむき出しの足を撫でる。ピクリと反応した景虎が少し不満げに晴信を見つめ返してきた。それに対し煽るように目で嗤えば、一度より深く吸いついた後、ようやく晴信の唇が解放された。

久しぶりに肺を満たすように、晴信は冷えた空気を吸う。一呼吸終えた後、息を切らせて口角が上がり切っていない景虎の口を、音をたてて軽く吸った。

「続きはあっちで、だ」

晴信が備え付けられているベッドを一瞥して景虎を見れば、口を少しつぐんでいるが、その顔からは少しの不満も見えなかった。

 

晴信は景虎を抱え、ベッドへとなだれ込む。寝台の上に景虎を下ろし、自慢の赤いコートを脱いでその上に覆いかぶさった。

景虎の上着を脱がせ、トップスのチャックを一番下まで下ろして胸部を露わにする。眼前に晒された白く、細い首筋に吸い付き、一つ痕を残す。

「んっ……また首に付けたんですか。お風呂入る時に困るんですけど」

「サーヴァントなんだから困るなら消せ」

続けてその後の上から重ねるように吸い、痕を濃くする。好きなのだから仕方がない。首元という急所をこんなにも無防備に晒して口を付けることを許される、日頃から景虎と刃を交えることが多いからこそ実感できる優越感がたまらないのだ。そもそも、景虎も口では困ると言うがやめろと言った事は一度もない。

晴信は景虎の首を軽く舐め上げ、顔の付け根を軽く噛む。そのまま耳元、額とキスを落とし、最後に唇を啄ばめば、景虎も応えて返してくる。

「それじゃあ、続きをするぞ」

一通り堪能した後で、晴信が景虎の口元を拭う。

「何を言ってるんですか。続きは今してるじゃないですか」

「今までのは部屋を出た後のやつだろ。俺が言ってるのはこっちだ」

そう言って晴信は景虎の腹を撫で、ホットパンツの隙間に指を滑り込ませる。少し指を入れただけでも湿っていることが分かり、そのまま指を動かせばかすかに水音が耳に届いた。

「——っ!?」

今まで忘れていた残留感を思い出したのか、景虎の顔が朱に染まっていく。

「攻めがぬるくて、物足りなくて悪かったな。今は全て思い出してるからな、満足するまでやってやる」

 

景虎の残っていた服を全て脱がせ、晴信自分も身一つになる。一度や二度で終わるならまだしも、精力が続く限り求め合ってしまう景虎が相手だとそうもいかない。生前と違い、すっかり服を脱いで事に及ぶのが主流になってしまっていた。

「やっぱり裸は肌寒いですね」

「すぐに気にならなくなるだろ」

晴信は閉じられていた景虎の足の隙間に手を入れ、付け根部分へと滑らせた。秘部を覆うように手をあてがえば、何も言わずとも景虎の足がゆるりと開かれる。溢れんばかりの蜜が手に満ち、景虎の小さな蕾が硬くなっているのを晴信は掌に感じた。

その主張する肉の蕾を手の全体で擦る。指の腹で撫で、硬い手の豆で圧すればそれに合わせて景虎の腰が浮く。

「あっ、あ、それっ」

「好きだろ」

景虎から肯定の言葉は帰ってこなかったが、膣の入り口がヒク付いてるのが伝わってくる。その入り口のすぐ下、菊門との間を軽く押すと、景虎はまた一つ嬌声を漏らした。

繰り返し、繰り返し、長いストロークで景虎の秘部を刺激する。物欲しそうに開いている口に入ってしまわぬよう、晴信は入り口の上で指を滑らせる。

「っは……るのぶ……もうっ、」

「そうだな、一回イっておけ」

先ほどよりも早く強い動きで刺激する。

「にゃ、いきなり、はげしっ……ひにゃ、っあぁ!」

小さくも反り立っていた陰核を集中して攻めれば、あえなく身を震わせて景虎は達した。

「……ぁ、あぁ」

余韻の声を漏らす口が愛しくて、晴信は口を付けた。口内を舌で撫でれば、景虎の舌が後を追ってくる。その舌に自分のものを絡ませながら、晴信は陰部への愛撫を再開した。

「っ……ふっ、ん……っぁ」

与えられた刺激に、景虎の口の端から、喉の奥から音が漏れ出る。

何度も硬くなっている陰核を擦り、こね、はじき、撫でる。そのたびに景虎の腰が跳ね、軽く達する様子が見てとれた。

我慢の限界だと景虎の方から腰を擦り付けてくるので、刺激を強くし、望みのままイかせる。

「~~~~ッ!!」

晴信が口は離さないまま、出された嬌声を全て飲み込むように深く吸うと、腰を中心に景虎の身体が大きく痙攣した。

息を吸わせるため、景虎から口を離す。つうっ、と糸を引き、切れた端からぽたりと一滴、景虎の口元にしずくが落ちた。

胸を上下させ荒く呼吸を繰り返す景虎を見ながら、晴信も息を整える。

次はどこを攻めようか。景虎が気持ちよくなれる場所が、今なら全て認識できる。

胸の間から臍の下までの芯を、人差し指で線を引くようなぞる。それだけで景虎の体が軽くビクつく。

「次はどこがいい?」

声を駆ければ、景虎の溶けだしそうな目が晴信へと向けられる。別に返答が欲しかったわけではないが、希望があるなら応えようという心積もりだった。

景虎の目が泳ぐ。開かれたままの足が誘うように少しだけ膝を浮かせる。

「……っ、それを言わせるのはいかがなものかと思うのですが。やはり今日は辱めたい気分なんですか」

部屋の時同様、気を遣ったにも関わらず「辱め」だと受け取られ、晴信は抗議の声を上げた。

「だから何でそうなるんだ!今までだって聞いたことくらいあっただろ!」

「だって……」

景虎は再び目を泳がせ、首だけ顔を背ける。髪の隙間から見える耳の先が赤く染まっているのが晴信の目に入った。

「理性のある時に聞かれるのは……羞恥に耐え難いじゃないですか……」

紅を差したような頬を見られまいと顔を背ける景虎の、むき出しの首筋に歯をたてる。ただ、衝動に動かされただけの行動だった。

「——っ!」

突如として降って沸いた痛みに景虎が声を出す。甘噛みではない、痕を残すためのものだと感じ取った。じくりと少しばかり歯をたてられた部分に熱が集まる。鋭い痛みから鈍い熱変わったところで、景虎は小さく息を吐いた。

晴信は、自分の歯型が付いたことを確認するかのように肌に舌を這わせ、ついでとばかりに景虎の腹を撫でる。

「はぁっ……にゃぁ……ぁっ…」

人肌の熱にあてられ、次第に痛みが気にならなくなっていくのを景虎は感じた。むしろ、腹部への愛撫によって快楽へと溶けだしてしまいそうだった。

「景虎」

晴信が名前を呼べば、景虎はゆるゆると逸らしていた顔を晴信の方へと向ける。二人の熱を持った視線が絡み合えば、晴信は景虎の熱くなった頬に手を添え、その赤みに沿って親指で頬を撫でた。

「そうだな。それなら、まずは理性をなくすまでやるか」

手を添えていない方の頬に唇を落しながら晴信がかけてきた言葉に、応否の返事をすることなく景虎は小さく鳴いた。

 

すっかり口を開いて蜜を垂れ流している下半身の穴を確認し、晴信は指で触れる。先ほど散々弄ったためか、入口に触れただけで景虎の腰が浮いた。

「指入れるぞ」

「指、ですか」

意外だったのか、景虎は少しばかり驚いた声を出した。

「まあ、広げる必要はないが先に、だ」

晴信はそう言って景虎の中へ、指を二本進入させた。熱くうねる肉襞が指を挟んで締め付ける。

物欲しそうにしている中の動きに、晴信は自身の硬くなっている肉棒を一瞥する。別に入れたくないわけではなく、なんなら今すぐにでも中へと突き入れたかった。けれど今はその機ではない。

「こっちも物足りなかっただろ。好いとこに全然触れてなかったからな」

そう言って晴信が陰核の裏を押すように擦れば、景虎の口から嬌声が上がる。

景虎は撫でるように広げる方を好むのだと、知っているはずなのにまったくそれを思い出せなかった。まして、入れた時も触れて反応を示したはずなのに、それを認識することもできなかった。正直魔術の痕跡を感知できなかったあれに対策はあるのか甚だ疑問が残るが、やはり事が済んだら報告しに行く必要があるだろう。

頭の片隅でまとめた思考を奥へしまい、晴信は指を動かす。

押し返してくる膣内の感触を楽しみながら円を描くようにして奥へと指を進めた。

中指が奥へと到達し、次いで人差し指も触れるように奥へと沈めていく。子宮口の周りを撫で、閉じているそこに刺激を与える。

「んっ、お…く……」

「好きになったよな」

子宮口を押すように撫でれば中がきつく締まって景虎の身体が跳ねた。

側壁を撫でながら何度も奥の壁へ指を送る。爪が当たらないようにしながら指の腹を付ければ、それだけで景虎は腰を浮かして身体を揺らした。

「あな、っぁ……が、おしえ……にゃっ、あぁっ!」

全て言い終える前に景虎が達し、膣中が収縮を繰り返す。出るはずのない子種を求めて、己の中に入っている晴信の指を執拗に搾り取ろうと刺激してきた。

「そうだ、俺が教えた。思い出せずにいて悪かったな」

晴信は指を入口付近まで戻し、二本の指を広げて穴の口を開く。普段空気に当たることのない内部に風を感じてか、景虎の目が一度、力を込めて閉じられる。とろりと中から溢れ出した蜜を薬指ですくい、それを絡ませながら穴の中へと進めていった。自分の中に進入する指の数が増えたことで、景虎は身をくねらせた。

「っは……また、ゆびっ」

「苦しくはないだろ?」

晴信が問えば、景虎はしばし口ごもった後、少し羞恥と怒気が入り混じった目で晴信を見た。

「………………言わせたいんですか」

「満足させたいだけだ」

そう言えば不満げながらも景虎の口が閉じられる。そのまま、晴信が三本に増えた指で景虎の中を擦る。そうすれば、下腹から溢れ出てくる快楽に甘い声を上げるも、見え隠れする葛藤のせいで身を預けるまではいかなくなっているように思えた。

「景虎、口を開けろ」

言われるまま開けられた景虎の口に自分の口を重ねる。手の動きは止めないまま、何度も舌と唇を重ねながら景虎の中から葛藤を消す。

指で中への刺激を強めながら、遊ばせていた親指で硬くなったままの景虎の陰核を擦り上げる。不意の刺激に景虎の身体が跳ね、口が離れそうになるも、晴信はすぐに後を追ってその口を塞いだ。

「……!っ……!」

先ほどよりも深い角度で口を塞がれ、組み敷かれるような体勢をとってしまった景虎は、自分の腹部に熱くて硬いものが触れるのを感じた。臍の下に触れている先端の形だけで、晴信の魔羅だと分かってしまった。先ほどからずっと、中に欲してやまないのに一向に入れてはくれないそれが自分の上にある事実に、必死に抑えていた衝動が溢れ、晴信からもたらされている快感と混ざり合った。

「~~~~~~ッッ!!」

景虎の身体が大きく痙攣した。背を反り、無意識に自分の腹に触れている晴信の魔羅に擦り付けるように腰を浮かせる。ガクガクと足腰を震わせながら、景虎は潮を噴いて絶頂した。

 

「……っぶないな」

晴信が慌てて口を離して身を起こした。景虎の腹を擦り付けられたことによって、危うく暴発してしまうところだった。自分だって入れるのをずっと耐えていたのだ。あの部屋で一度出していなかったら危なかったかもしれない。

ほっと息をついた晴信が景虎の方を確認すれば、肩で息をしながら晴信の方を一心に見つめる景虎の姿があった。全身の力が抜け、それでもなお晴信の次の動きを待ち望むように見つめてきていた。

「一応聞くが、大丈夫か?」

「ふーっ、ふーっ……馬鹿に、しないでください」

これだけ気を遣っても突っかかってくる気力があるなら問題ないだろう。さすがは越後の龍、と言ったところか。

それならと、晴信はすっかり開き切って弛緩している景虎の秘部へと視線を向けた。

「それじゃあ、もう入れるがいいか?」

「また…指とか言ったら、切り落としますよ」

「…………何をとは聞かないでおいてやる」

少し萎えそうな己の男根に力を入れ、硬さを保つ。

挿入する分には依然問題はない。ただ、景虎の言葉が冗談などではないと分かっているせいで、少し委縮しそうになってしまっただけで。などと晴信は心の内で誰に聞かれるでもない弁明をする。本当にこの女が相手だとままならない。

自身の先端を濡れそぼった入口へとあてがい、溢れ出ている液が亀頭に纏うように擦り付ける。

愛液を絡めている最中、待ち焦がれているかのように緩く収縮するその穴がひどく淫猥だと感じ、つい目を奪われてしまった。香り立つ女の色に意識を奪われ、景虎から気を逸らしてしまった。

じゅぷっ、と音を立て、突如その穴が晴信の亀頭を飲み込んだ。熱く、濡れてうねる口がその身までもを飲み込んでいく。晴信が一切動いていないにも関わらず。

「っ! おい、待てっ!」

三分の一ほど挿入されたところで我に返り、晴信は慌てて景虎の腰を掴んで動きを止めた。

景虎の細腰を鷲掴めば、それだけで景虎の腰が跳ね、中が締まる。中途半端に入れられた肉茎を伝って景虎の愛蜜が溢れ出す。

「っ、はぁ……待たせすぎなんですよ、貴方は」

挑発的な声色で、景虎は晴信煽るように見つめてきた。その腰は止められてなお、自らの内壁へ晴信の亀頭を擦りつけようと、僅かにでも動かそうとしてくる。

ああ、本当にこの女は——。

晴信は両手で景虎の腰を掴むと、勢いよく引き寄せて肉茎の根本まで埋め込んだ。

ごりっ、とぶつかった晴信の先端が奥壁を擦り、内の筋肉を押し上げる。景虎はその衝撃に弾けたように身体を跳ねさせ、弓のように背をしならせた。

「ッ——あ!!」

晴信と景虎の密着し合った境目がぐじゅり、と濡れる。

「はげし、ぃ……っ」

「欲しかったのはこれだろうが」

奥の口に擦り付けるように先を上下させれば、そのたびに景虎の体が痙攣し、膣内が収縮した。

「こ、れ……これ、欲しかっ、たん…です……此処に……」

息も絶え絶え景虎が腹を撫でる。自分の腹を満たす質量の大きさを確かめるように指で形をなぞっていく。そのたびに張りのある柔らかい肉壺がうねり、晴信の肉棒の精を求めているかのようだった。

不意に渇きを覚えたような気がして、晴信はあふれ出てる唾を飲み込んだ。

「なら満足するまでくれてやる」

晴信は、結合部が完全に腰を密着する。身をかがめ、息苦しさで開いた景虎の口をその口で塞いだ。

絡ませた舌に応えてきたのを確認し、晴信は景虎の腰を持ち直して腰を引き、擦るように打ち付けた。

水音と肉のぶつかり合う音、そして二人の漏れ出す荒い息遣いだけが満たす部屋で、晴信は何度も、何度も、溢れる欲に溺れるままにその中を蹂躙する。景虎も、呼吸もままならないままにその荒ぶるさまを受け入れる。優しさも気遣いも床に投げ捨て、ただ激しくあろうと満たされる方を選んだ。

背中に爪が立てられ、晴信は一度景虎から口を離す。さすがに体勢がきつい事もあって口づけをしたままでは息が苦しくもあり、少し楽になった体勢で息を吸う。肺を満たせど滾る脈動が抑えられるわけもなく、変わらず整わない呼吸のままだった。

「あっ、はぅのぶ……、も、っと……」

変わらず息を切らしたままの景虎が催促してくる。呼吸を整えようが下半身の欲の乱れだけは変わらず続いていたため、中を擦られるたびに景虎の口から喘ぎ声が上がっていた。

「もっとだな」

乞われるままに、喘ぎ声の上がるその口を吸う。景虎の声が晴信の喉に反響する。味がしないはずのそれが甘いと感じた。

求めるものを与えられてか、嬉しそうに景虎が目を細めた。

はるのぶ

口を重ねながらもわかる自分を呼ぶ口の動き。そうして軽く口を吸われ、思わず晴信は昂った。

先ほどより激しく景虎の奥を擦る。ひと際膨張した自身の雄が今か今かと中をえぐる。

「————ぁああっ!」

「——ッ!!」

ぎゅっと景虎の足が晴信の腰に回されきつく締められた。と、同時に激しい膣の収縮とうねりがおこり景虎の身体がビクビクと揺れた。

その吸い付くように動く内部の動きに促されるまま、晴信は臨界に達するまで溜まっていた己の精を景虎の最奥に吐き出した。

どくどくと音が聞こえる。自分の心臓が脈打つ血動か、自分の男根が精を吐き出している動きか、まだゆるく収縮を繰り返す景虎の中の感覚か、それとも別の何か、か。乱れた息の音すらかき消すその音が、視界さえ白く染めていくようだった。

 

欲の底は満たされた。けれど、そのふちを満たすまではまだ足りない。

硬さが衰えずにいる己の肉棒をそのままに、気を遣って目を閉じている景虎の頬に触れる。汗で額に張り付いた髪をはらい、その目が開かれるのを待った。

ゆるゆると瞼が持ち上がり、薄く金を内包した薄緑の瞳が晴信を捉えた。

「…………熱いですね」

触れたままにしていた手に景虎が頬ずりをする。赤みが引かないそこは火照っているはずなのに、添えている晴信の手のひら方が赤みを帯びていた。

「休むか?」

晴信が聞けば、景虎は首を横に振り、晴信の首に手を回す。

「いいえ……まだ、このまま続きをしたいです」

景虎のその言葉と共に、きゅうっ、と中が締めてつけてくる。

景虎も自分も、互いを相手にするとどうも欲求の深度が増してしまう。精も根も尽きるまで、欲の盃を満たして溢れてもなお続けてしまう。

「満足するまでしてくれるのでしょう?」

挑発するような目で見つめられ、晴信はまた一段と己の張怒が熱を帯びたように感じた。

「はっ、男に二言は無い」

その言葉に満足したのか、景虎は艶やかに微笑み、腕に力を込めて晴信へと唇を重ねた。

そのまま二人は、欲するまま、求められるままに、時を忘れて互いの欲を満たしていくのだった。

 

 

 

後日、セックスしないと出れない部屋はたまに夫婦や恋人、またはそれ未満の関係の者たちが引き込まれる避けられない事象の類だと聞かされ、気が遠くなった晴信がいたという。

「ノリ気だと思ったが……もしかして景虎、おまえ知ってたな?」

「話に聞いたことはありましたが扉の文字を見るまではすっかり忘れていました。変な追加要素があることもあるとは聞いていましたが、まさか認識阻害だとは……あれには毘沙門天もビックリです」

 

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