誇りと信念
「救護ッ!!!」
地面を砕き、ミネ団長が着弾する。
そしてその傷を騎士団が癒す。
変わりばえのないルーティーン。
「セリナ!!!!」
ミネ団長が再び着弾する。
そこから命からがら逃げ出したのは───────
「桃衣(とうい)の悪魔」鷲見セリナだった。
「ミ、ミネ....団長?」
混乱するセリナ。
当然、自分が団長の救護を受けるような行動はしていないと認識している。
だが───────目の前の団長は。
まるで心臓を握られたかのような険しい顔で。
憎むべき仇敵を睨め付けるような眼で。
悲しみを堪えるように歯を食いしばって。
「.....どうやら、『救護』が必要のようですね」
峻厳なる救護騎士団団長、蒼森ミネはそう告げた。
「構えなさい」
「っ!!!」ジャキッ
ミネ団長の実力は、自らがよく『診ていた』ことから想像するまでもなかった。
牽制に数発撃ち込む。
「はぁっ!!!!」チュンッチュンッ
怯むことなく、当たることも無く、団長の全力チャージング攻撃がセリナを襲う。
「しまっ...!!」
突撃が命中する寸前、黒いナニカが飛び込んで───────
「が、あっ...!!!」ゴロゴロゴロ....
セリナがくの字に吹っ飛ばされる。
そして、先程まで自分がいた場所には。
「.....ありがとうございます」
「気にするな」
正義実現委員会の最凶、剣先ツルギが立っていた。
「なん...!?「「逃げろ/逃げてください!!!」」」
疑問の言葉が出るよりも先に、逃走を促す敵対者たち。
混乱する頭を振り切り、セリナは逃走した。
「...なぜ、此処に?」
「通りがかったのはたまたまだ、だが...」
「ええ、貴女が横槍を入れなければ....私はセリナを救護....いえ、害しようとしたでしょう」
「.....だろうな」
「ひとつ、頼まれてくれませんか?」
「.....なんだ」
「私の信念はご存知ですよね」
「『救護が必要な場所に救護を』か?」
「今がその時です」
盾を置き、銃を捨て、ツルギに背を向ける。
「....いいんだな?」
「これが私の『正義』ですから」
『正義の裁き』は『誇り高き信念』を撃ち抜いた。