記憶糸刺繍ifローさんSS(未完成)

記憶糸刺繍ifローさんSS(未完成)

UA2

※注意事項※

ifローさんが連れ去られた後、正史組突入・探索中に記憶糸刺繍ifローさんに出会う想定。戦闘シーン等はほぼない。痛そうな描写、可哀想な描写有り。

いつも書いてる無色透明ifローさんではない。えちのほうとも違うローさん。救いがあるかは知らん。

途中からセリフオンリーとかある。力尽きた。

続きは誰かが作ってくれるんだ……。

誤字と脱字はお友達。






 遠くで破壊音が響く中、二人と一匹は城内を走る。

 トラ男くん捜索班である私達は、隠密行動を取りながらチョッパーの鼻を頼りに部屋を見て回っていた。


「どんだけ金かけたのよ、まったく!迷路みたいでちっとも前に進めやしない!!」

「でも匂いは近づいてる。あと少しだ」


 城の中はトラップだらけで何度死にかけたことか。一番安全そうだからと、この班に挙手したことを私とウソップは激しく後悔していた。床から無数の糸が飛んできたのを泣きべそをかきながらなんとか避け、糸で作られた雑兵を雷で焼く。時に階段を登り、時に遠回りをしながらも少しずつ目的地へと近づいていた。


「ウソップ!こっちに人はいない。そっちは?」

「俺の方もハズレだ!チョッパー!本当にここなのか?」

「間違いないよ!匂いは確かにここなんだ!!」


 床に鼻を近づけて嗅ぎ回っていたチョッパーが不意に耳をひくつかせ、顔を上げる。


「外の方からこっちに何か来る!」


 その言葉の直後、石壁を突き破って何かが飛び込んできた。土煙をあげながらごろごろと転がったそれが「いってェ〜!!」と大きな声で叫ぶ。


「ルフィ!!」

「ミンゴのヤツ、前より強くなってんなァ」

「ンなこと言ってる場合か!」

「怒んなよトラ男」

「いくらテメェのバカを前提に組んだって、こうも狂わされれば怒りたくもなる……。俺はテメェらの世話係じゃないと何度言わせれば、」

「だってよー」


 身を起こしたルフィを押し除けてトラ男くんが現れる。どうやらルフィに巻き込まれて一緒に吹っ飛ばされたようだ。


「おいおいおい、トラ男も居んのかよ!」

「二人とも、ひでぇ怪我だ!すぐに治すからな!」


 大股で近づいて来た彼らにチョッパーが飛びつかんばかりに駆け寄る。こちらに気付いたルフィがにかっと笑う姿に不謹慎ながら安心感を覚えた。状況はなにも変わってない。それでもこの笑顔を見るだけで不思議と力が湧いてくる。


「お前ら、ここにいたのか!こっちのトラ男見つかったか?」

「ううん。この辺りだと思うんだけど、まだ……」

「てかお前ら、ドフラミンゴはどうしたよ!?」

「外で黒足屋達が足止めしてるはずだ。……俺達が戦線に復帰するより、さっさとこっちの俺を見つけたほうが良さそうだな。状況を説明しろ」


 その言葉に頷いたウソップの説明を聞きながら考え込んでいたトラ男くんが、突然カーペットをひっぺがして床を強く踏み鳴らす。場所を変えて何度も繰り返すその姿にみんなで首を傾げていると、彼は部屋の中央からやや南東にズレた場所で立ち止まった。


「あれ?今そこだけなんか……」


 チョッパーの小さな呟きに頷いた彼が、床を指差す。


「この下だ」

「下?でも下の階はさっき通ったし……」

「複雑な造りと螺旋階段のせいでわかりづらいが、この建物は各階で部屋数のズレが発生している。スペース的に下の階には最低でももう一部屋はあるはずだ」

「でも、さっきの変な動きに関係あるの?」

「音だ」


 トラ男くんが口を開く前にチョッパーが答えた。


「その辺りだけ音がちょっと変なんだ。その下に、なんか柔らかいものに覆われた空洞がある」

「どういうこと?」

「うーん……音の響き方が他と違う、としか言いようがないんだよ。部屋全体がなにか柔らかいもので覆われてて、音が吸収されて響き難い感じ。初めはコケとか植物かなって思ったけど、それらしい匂いはしないし……すげー、不気味な空間だ」

「ふーん、どれどれ」


 私も近付いて足を踏み鳴らす。よくよく聞き比べれば確かに、若干響く音に差異が有る気がする。言われなければ気づきもしなかっただろう。


「じゃあなんだ、もう一人のトラ男はこの下にいるってことか?」

「たぶん、そうだと思う」

「となると……問題は、隠し部屋への道に関して一切手掛かりがないことね」


場所はこの下でも、この部屋に入り口がある必要はない。この広大な場内のどこかにある入り口、ないし入り口を開けるスイッチをノーヒントで探さなくてはならない。


「しらみつぶしに探すにはちょっと広すぎ……トラ男くん、アンタの能力でちゃちゃっと入り込むのは?」

「出来なくはないが体力は温存しておきたい。ただでさえ他陣営からの茶々入れが酷い上に、予想よりドフラミンゴ側の戦力が高い。撤退のことを考えるなら消耗は避けるべきだ」

「そうよねぇ。どうしようかしら……」

「なぁ。下に行ければ良いんだろ?」


 相談する私達をよそにルフィはそういうと、おもむろに拳を振り上げた。


「ゴムゴムの__」

「ちょっちょっちょっ!」

「おいバカルフィ!!」

「__銃!!」


 大きな音と共に床に穴が開く。パラパラと破片が落ちる穴の中を覗き込んだルフィが満足げに笑った。


「よーし!これで入れるな!」

「いいわけないだろ!!」

「隠密優先って、あれほど言ったでしょうに!!!」

「しししし!わりぃ!!」

「わりぃで済むかァ!!」

「……ハァ、」


 痛む頭を抑えつつ、そっと穴の中を覗き込む。全面を糸に覆われた薄暗い部屋がそこにあるというより、石壁の一部を糸に変えて無理矢理部屋としているのだろう。広さの割に家具も光源もない。


「うっわ、気持ち悪い」

「蜘蛛の巣の中みてェだなー」

「部屋の造りからして、真っ当な入り口があるとは考えられねェ。今回は麦わら屋のファインプレーだったかもしれねェな」

「しししし!」

「匂いが強くなった!もう一人のトラ男はこの先にいるよ!」

「まじかよ、この中行くの〜!!?」

「尻込みしててもしょうがない!行きましょう」


 覚悟を決めて室内へと降りる。床の糸がいきなり襲ってくる……なんてことは無いようだ。独特な感触のそれを踏みしめながら歩くと、奥に何やら蠢くものが見えた。穴から入る光に照らされて、その輪郭がはっきりと見えてゆく。

 そこにいたのは全身真っ青な人間。

 いや、よく見れば体自体が青いわけではない。素肌の大部分に、それは美しい刺繍が施されているから青く見えているのだ。深い海より青い糸が、光を反射してきらきらと輝いている。

 襤褸を纏ったそれが、探し人であると気付くのに随分と時間がかかった。トラファルガー・ローという個人のアイデンティティーは悉く奪われ、踏み躙られた残骸の姿に、全員が絶句する。


「こんな……ひどい……」


 掠れ震える私の声に身じろいだ人影が、緩慢な動作で体を起こす。のろのろと向けられた視線は記憶にある彼からは想像もつかないほど蕩け、怯えを孕んでいた。


「あ……」

「トラ男、俺だよ。チョッパーだよ。助けに来たぞ!」

「ヒ、……やだ……!」

「トラ男?どうしたんだ?もう怖がらなくても大丈夫なんだ」


 這って逃げようとする彼にチョッパーが声を掛けながらゆっくり近寄ると、優しい声音に更に怯えたトラ男は悲鳴を上げた。


「くるな、こないで……いやだ、いや……!」


 しきりに近づく事を拒む姿は、幼い子供のようで心がじくじくと傷む。


「ナミ、どうしよう。混乱してる」

「このままじゃ、ここから連れ出せないわ」

「もう少し時間をかけて話せば落ち着くかもだけど……」

「無理だ。対話に時間を割けるほどヤツは甘くない」

「そそそそうだな、トラ男の言う通り!さっきので明らかバレちまったし、ドフラミンゴが来ちまう!とりあえずここから出そう!!」

「……どふぃ?」


 それまで幼い表情で首を傾げていたトラ男くんがウソップの声に反応する。何かに思い至った彼は両手で床を覆う糸をいくらか掴むと、大きく息を吸い込んだ。


「トラ男?なにを__」

「ドフィ、ドフィ!たすけて!はやくきて!!」

「!お前ら避けろ!」


 叫んだと同時にルフィが後方に跳ぶ。


「ROOM、シャンブルズ!!」


 青い膜が広がった次の瞬間、私達は遥か後方に移動していた。先ほど立っていた場所を見れば糸で出来た槍が生えていて、あのままならどうなったか嫌でも想像がつく。震え上がって二人と一匹で抱きしめ合っている私達とは対照的に、ルフィとトラ男くんが戦闘態勢に入った。


「四皇を討ち果たしたとなれば、流石にこのくらいは避けるか」


 どこからともなく響く、粘っこい執着を纏った声。目の前の糸の塊が人の形となってゆく。

 偽物なら到底持ち得ない狂気を纏った男は、余裕な笑みを浮かべて床に転がるトラ男くんを抱き抱えた。彼はされるがまま、むしろ縋るようにその腕の中に収まっている。

 酷い違和感。


「ドフラミンゴ……!」

「フフフ、良い部屋だろう?ローの為のゆりかごさ」

「ほざけ」

「つか、なんでここにドフラミンゴがいるんだ?!サンジ達と戦ってるんじゃねーのかよぉ〜!!」


 パニックになるウソップを見て、男は楽しげに喉を鳴らした。


「そりゃあ、どちらかが糸で作り出したニセモノだからに決まっているだろう?」

「サンジ達が足止めしてんのはニセモノってことかァ〜!!?」

「……いいや。アイツも向こうもおそらく本物だ」


 眉間に皺を寄せたトラ男君が、静かに呟く。


「その根拠はあるのか?」

「いいや。だが、テメェのその悍ましい覇気を、俺が間違えるわけがねェ」

「フフフ、嬉しいことを言ってくれる」

「ひぃぃぃ!よろこんでる!!気持ち悪い!!」


「確かに俺も、あっちも偽物ではない」

「理解はした。だが、納得がいかない。自分と同存在を生み出せるわけがない」

「ああ、そうだとも。生き物には程度は違えど自我がある。同じ意識を持った者が存在するなんてこと、世界でも跨がない限りあり得ない……だがな」


「俺という存在がどうあるか、なんて瑣末事だ」

「かつての俺は、破壊者以前に王たる者であろうとした。だがそんなものは無意味だ、そうだろう?全てを壊すのだから無駄にしかならない」


「海の均衡も、無能な為政者も……世界の在り方ですら打ち壊した今の俺が、生命の枠組みから外れていたとしてもなんら不思議ではない」



「文字通り"自分の全て"を糸にして、それぞれ分身体にしているのか……!!」

「でもそんなこと、生き物じゃ無理だ!!一つの体を動かすのでも精一杯なのに!それに心だって保つ筈ない!!」


 チョッパーの悲痛な声を、怪物がくつくつと喉を鳴らして笑った。


「だから、その在り方を捨てたのさ。情報共有に若干のタイムラグはあるが、なかなか便利なものだ」

「……イカれてやがる」


 この島のあちこちにあった糸。あの中のどこかにも、これと同じものがいるのだろう。何人も、何体も。本物とほぼ同一存在が同時に存在する。感覚や記憶を共有するそれは、もはや人の形を取った兵器だ。




「ドフィ、ドフィ」

「ん?どうした、ロー」


「しらないひと、ちかよらなかった……。おれ、ちゃんとドフィよべた、だから」

「……アァ、そうだった。言いつけを守ったいい子には、ご褒美をやらなきゃな」

「ここ、ここがいい……いれて、きざんで。かえして……おれの、おれが……」


「ぐッ……ゔぅっ……!」


「かえってきた……かえった……?たいせつ、あたたかい……あたたかい、なに?なんだっけ……」


「ありっがと、……あいして、あいしてくれて……ありがと、う……」


「よしよし、いい子だ。だがな、」

「お前は、いの一番に俺を呼ばなかった。俺に縋ることなく、俺に怯え、俺を拒んだ」

「ちが、ちがう……どふぃ、」

「言い訳はいらない。悪い子には仕置きが必要だ」

「摘出糸(エクストライト)」


記憶を青い糸にして抜き取る。


「あ……あ……」


ifローが呆然としながらぽろぽろと涙をこぼす。




「あいしてる……あいして……なにを、なにが……?」


「ミンゴ……トラ男に何したんだ」

「さてなァ。テメェに語ってやる義理がどこにある」


ブチギレるルフィが一撃で倒すも、周りの糸から復活する。その際、ifロー回収。





「フフフフ……そっちのローも、躾ければ悪くなさそうだ」

「下衆がッ!」


戦闘が始まるところでひいて終わり。




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