託された想いと亡き友の声

託された想いと亡き友の声


コックピットにアラートが鳴り響く。


自身の死のカウントダウンを前に、シン・アスカは走馬灯のように後悔を思い起こしていた。


自分を頼ってくれたキラやコンパスのメンバー達との別れ。そしてギクシャクしたままのルナマリアに謝ることさえ果たせぬまま死ぬことを。



「(隊長……、みんな……、別れも言えないままこんなことになってすみません。そしてルナ、帰るって約束も守れなくてごめん)」



死の覚悟を固めたシンはファウンデーションの国土外まで運び去るべく、強く操縦桿を握りしめる。


そうして、自身の想いを果たし死の安寧の中に向かおうとしたシン・アスカ。





『シン、お前は諦めるのか』



シンの脳裏に誰かの声がよぎった。


死へと向かう自身を引き止める、力強い声が。


それでもシンは今更助かる訳がないと言い聞かせようとしたが、それを拒むような何者かの強い悲しみを感じた。



「なら、どうやって……」



その時、機体の左腕を見た。


正確には、その武装をだ。



――キラにすすめられて、特殊改造を施された、避難民脱出用シェルター付のシールドブーメラン。




シンは悟った。


自分は死ぬべきではない。キラの想いとルナマリアとの約束、そして何よりも自分を呼ぶ誰かの声が生きろと望むからだ。



「(そうだ!ジャスティスをオートパイロットに切り替えてからブーメランで脱出すれば!)」



気付いてから実行は早かった。

シールドブーメランのついた左腕をコックピット前まで寄せてから、ジャスティスをオートパイロットに切り替える。


そしてハッチを開き、高速移動の中シールド内の開いたシェルターに移るべく覚悟を決める。


その脚に力を込めて、シェルターの入口に向かって跳ぶ。



「うおおぉぉぉおおおお!!」



何倍にも感じた1秒だった。

ちぎれそうな程力強く手を伸ばし、声を振り絞り、生を望む。


届け、届け、届けと。


祈るように目を閉じたシンの脳裏に再び声がよぎった。そして、自身が何者かに引っ張られたような気がした。





直後、閃光が炸裂し、音が遅れて真空(そら)にこだまする。





激しい光を背に、爆発から飛び去る真紅の盾にシンはいた。


そんなシンを見届けたかのように不滅の正義を冠する機体は核の炎と光の中に消え、永遠に讃えられる正義に殉じた。



「ありが、とう……。ジャスティス……。レイ……。」



薄れゆくシンの意識が感じたのは、今は亡き友の声と温もりだった。


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