言葉届いた月桂冠
アイリ闇堕ち回避ルートPart175・170レス目の人からのリクエスト作品なんDA
過去作【言葉無き花の光輪】シリーズのifルートです
2024年現在、公式で明言されてはいませんが、【アイリとヒフミは友人】という噂を元にした設定です
スイーツ部3人がアビドス入りしてしまった結果として復讐の毒殺者になってしまうアイリ。もし仮にスイーツ部外の友達2人が彼女の心を宥められたなら…?
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アビドスへの復讐を誓った私は、植物学研究部へ向かう
非力な私に出来そうな復讐は、毒を盛るといったやり方しかなかった
植物の毒なら私でも扱えるかもしれない
その時はとびっきりの猛毒を使おう
アビドスに、私の大切な人を奪った報いを受けさせる
そのためなら、人殺しだろうと──
???「アイリちゃんっ!」
アイリ「っ!?あ、ヒフミ、ちゃん…」
突如聞こえた私を呼び止める声
声の主はヒフミちゃんだった
ヒフミ「やっと、見つけました…今、どこへ行こうとしてましたか?」
「…別に。ヒフミちゃんには関係ない話でしょ。邪魔しないで」
「えっ」
「ヒフミちゃんに付き合ってる暇なんかないの。私は…忙しいから」
そう素っ気なく突き放す
友人の彼女を復讐に巻き込む気はない
そのまま視線を合わせず踵を返し植物学研究部へ足を──
「待ってくださいっ!」
すると突然、ヒフミちゃんは私の腕を掴んできた
「…何?邪魔しないでって言ったよね?なんで邪魔するの?」
「アイリちゃん、どうしたんですか?何かおかしいです」
「おかしいってどこが」
「アイリちゃんは、そんな冷たい態度なんて取らないはずです!」
なんでこの子は
そういう事が分かっちゃうんだろう
イライラする…!
「うるさいっ!」
手を振り解いて突き飛ばす
「きゃっ!?」
驚く声をあげてヒフミちゃんは倒れた
その隙に走り出す
「ま、まって!アイリちゃん!」
追いかけてくる
しつこい…!
私は急いで逃げながら、植物学研究会の部室を目指す
「お願いですから、待ってください!」
結局彼女に追いつかれてしまった
抱きつくようにして邪魔だてしてくる
「離してよっ!」
「いやです!このまま見逃したら、アイリちゃんは絶対に何か取り返しのつかない事をしてしまうに決まってます!」
「そ、そんなこと…」
考えてる
私はこれからアビドスの人達に毒を…
「っ〜!もういいから、どいてっ!ヒフミちゃんに私の気持ちが分かるの!?大好きな友達が、あの憎らしい砂漠の人達に奪われた私の気持ちなんて…!」
「分かりますっ!」
「───」
「だって、今あの場所で、ホシノさんと一緒に悪事を働いているのは…大事な補習授業部の仲間なんです…!」
彼女の言葉は、ただの憐憫や同情などの薄っぺらいものじゃなかった
「ハナコさん?」
「そうです。ハナコちゃんはアビドスカルテルの一員として、アイリちゃんのお友達だけに留まらず、キヴォトス中の人々を砂糖漬けにしています…」
俯きながら、呟くように友達の悪事を再認識するヒフミちゃん
そんな姿を見せられた私は、どうするべきか分からなくなってしまった
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アイリ「……でも、だったら、この私の気持ちはどうすればいいの?私みたいな、平凡で何もない普通の生徒に、出来ることなんて…この気持ちを抑えるためには、もう復讐するしか…」
涙声でヒフミちゃんに問いかける
“復讐”という言葉に反応し、何かを言おうとする彼女だったが…その時
「ちょっと待ったー!」
2人「「!?!?」」
すごい大声が響く
この声量と聞き覚えのある声色…
「レ、レイサちゃん?」
レイサ「はい!自警団のスーパースターこと宇沢レイサです!お久しぶりですねアイリさん!…スイーツ部のみなさんの状況は全て把握しています。辛かったですよね?駆けつけるのが遅くなってしまってすみません…」
「そんな、レイサちゃんが謝ることじゃないよ…私が、みんなをちゃんと引き留められたら…」
「アイリさん!突然ですが今の言葉の意味をもう一度考えてみてください!」
「えっ、私がみんなを引き留め」
「その前です!」
「その前なの!?…レイサちゃんが謝ることじゃないよ」
「アイリさん、その言葉をどういう気持ちで言いましたか?」
「ど、どういうって…別に、悪いのはレイサちゃんってわけじゃないから…」
「それですよ!」
「………??」
理解ができず首を傾げる
ヒフミ「えっと、レイサさんが言いたいのは、“レイサさんを気遣えるほどの思いやりをアイリちゃんはまだ持っている”ってことじゃないですか?」
「その通りです!…って、あ、その、初めまして、ですよね?初対面で騒がしくてごめんなさい、自警団の宇沢レイサといいます…」
「急にそんな他人行儀!?いえ、普段通りで大丈夫ですよ…?」
「ご、ご迷惑でなければ良かったです…とにかく!ヒフミさんの言うように、アイリさんにはまだ気遣える心があるんです!アビドスの人達が憎いと思う気持ちは分かりますけれど…アイリさんが凶行に出ても、杏山カズサを始めとするスイーツ部のみなさんは誰も喜ばないと思います!」
そう、だよね
もしアビドスの人を殺しちゃったら
みんなは悲しむ…
いいや、それどころか
気づかずにみんなを手にかける可能性だってある
復讐なんて、何も生まないかも
私の心は本当に一瞬だけスッキリするかもしれないけれど
カズサちゃん達はそんな事望まない
「アイリちゃん、この際なので誘ってみますが…もしよければ、反アビドス連合に入ってくれませんか?」
「えっ?」
「アビドスの人達を倒すんじゃなくて、救うために戦う、先生達が組んだ連合なんです。アイリちゃんも入って、一刻も早くお友達を助けられるよう頑張りましょう!」
「私もオススメします!その、私はスズミさんと一緒に自警団の方を頑張らなきゃいけないので連合には参加出来ないんですけど…私の代わりと言ってはなんですが、アイリさんが杏山カズサ達を助けてくれると凄く嬉しいです!」
「ヒフミちゃん…レイサちゃん…」
2人の言葉を聞いて理解した
確かに私の出来る事は少ないかもしれない
でも、アビドスに行ってしまったみんなを救えるのは私しかいない
ここで復讐心に駆られて、人殺しなんて取り返しのつかない真似をしてしまえば
もう二度とみんなに会えなくなってしまうかもしれない
そんなの…
そんなの嫌です!
「うん、分かった。私、連合に入る!それでみんなを助けて、ちょっとだけお仕置きして、またスイーツ部を再結成する!」
「アイリちゃん…!」
「その言葉を聞けて安心しました!では杏山カズサ達のことはお任せしますねアイリさん!…おっと、また騒ぎが!?すみませんが私はこれで!健闘を祈ってます!」
そう言うと、レイサちゃんは流れ星のように立ち去った
「レイサさん、元気な人ですね」
「うん。カズサちゃんとは幼馴染で、長い付き合いらしいの。カズサちゃんきっかけで私たちと出会って、新しいお友達になったんだ」
「そうだったんですか。でも、アイリちゃんがまたいつもの顔に戻ってくれて嬉しいです」
「…そんなに私の顔変だった?」
「はい、あの目はまるで……」
「?」
「いえ、なんでもありません!それより今から連合に行って、加入の手続きをしましょう!」
「うん分かった!改めてよろしくねヒフミちゃん!…そしてごめん。さっきは酷いことしちゃって」
「そ、そんな!気にしないでください!アイリちゃんが戻ってくれただけで十分ですから!」
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あの目は
私と袂を分つ覚悟を決めたアズサちゃんの目と凄く似ていた
アズサ『私はこれから、人を殺す』
もうあんな事は繰り返させない
私の友達であるハナコちゃんを助けるのは当然だけど
私の友達アイリちゃんの友達であるカズサさん達を助けるのも、また当然の話
だから、アイリちゃんが戻ってくれて凄く安心した
でももう大丈夫
レイサさんにも託されたアイリちゃんは
もう二度と、人殺しの覚悟なんて決めないはずだから…!
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