親愛なる、十日町で出会った皆様へ

親愛なる、十日町で出会った皆様へ

マリーマーリー

 私が十日町へ来てから早いもので3年が経ち、4年目に入りました。日々を恙無く過ごせていることに感謝しかありません。


 私の 十日町歴=ギルド歴でもあります。


 初めてギルドハウス十日町を訪れたのは、2016年9月の最初の金曜日、夜。その頃、土日休みの仕事をしていた私は、初めて訪れる場所で何があってもいいように、金土と泊まって、日曜日は念のため空けておくことにしたのを、書きながら今、思い出しました。そのため、仕事帰りに向かえば、到着は夜。その旨をハルさんに伝えたところ、間に合ったら夕ご飯を一緒に食べましょう、と、返してくれたのを覚えています。


 最初にギルドを見た感想は、選択を間違えたかもしれない、ということであり、実際にギルドに入ったときの感想は、なんでこんなに暗いんだ、ということでした。


 そんな暗いところに比較的若い男女が何人もいる光景は一種異様だと思いながらも、そのときの自分は緊張してそれどころではなく、持ってきたパンを恐る恐る差し出していました。すると、確か、最初の住人である某氏を始めとするそのときにいた住人たちが、パンダー!パンダー!とその場で食べてくれて、ホッとしました。確か。


 その後、デザイナーであり、最初のアプレンティスである方の送別会?だったこともあり、アトリエスペースでの記念写真に、眼鏡と髪型が似ていた女将の代役として参加させてもらいました。そのときは誰が誰だかよくわかっておらず、まちこさん…?どの人…?という状態でしたが、もう寝てるということを聞いて、あ、まだなんか盛り上がってるけど寝てもいいんだ、というようなことを思ったような気がします。ギルドは自分のペースで過ごせる、むしろそうしない方がきつい、ということを示してくれた出来事のひとつでした。


 しかし、もちろん来たばかりの新人にそんなことがわかるはずもなく、そのままのテンションで山の中に星を見に行くぞ言われ、車に乗せられて行きました。そのときは、学生の頃のようなノリが懐かしく、また楽しく感じていました。着いた先で、自分以外の皆が地べたに寝っ転がろうとも、せっかく仕事着から着替えて私服だった私は、首を痛くしてでも地面には寝たくなかったのを覚えています。流れ星がいくつか見えたという人もいました。こんな些細なことさえ、文字に書き起こすと思い出すのですね。


 そうして私の初めてのギルドの夜は過ぎていきました。一泊のつもりが、もう一泊したら?とすすめられるまま泊まり、結局日曜日の夕方に帰りました。


 その後、紆余曲折を経て、現在に至ります。お陰様で立派なオッコタツヌシになれそうです。


 ギルドでの出会いから、十日町での私は形作られていきました。大地の芸術祭に微力ながら携われるようになったのも、地元サポーターになれたおかげであり、そのきっかけを作ってくれたのも、今はギルドにいないギルドメンバーの一人のおかげなのです。


 それまで隣の市にいながら、お恥ずかしくも、大地の芸術祭の存在すら知りませんでした。ギルドハウスへ来なければ、今もまだ知らないままだったでしょう。それはきっと私の人生における大きな損失でした。それほど、芸術祭は大きなシェアを占めています。


 芸術祭のどこがいいのか、なぜなのか、と聞かれると、それはその人にとっての最良の答えを見つけてくれ、としか言いようがありません。ちょいちょい考えてきた私の答えとしては、作品作りを手伝いながら作家のことを知れるから、でしょうか。


 本来、作品を通して作者を知ることが好きなので、作業を通して、また、作品への接し方を見て、その人を知っていくのがとても面白いのです。一人一人、作品への距離感も違っていて、戸惑うことも多くありますが、それだけ作品への思い入れも強くなります。どういう作品が、どうして、どのように作られたのか、作者は何を表現したかったのか。これらを知って案内するのと知らずに案内するのでは、やはり情報も熱量も主観ですが、異なります。現代アートには余計な説明はいらない、感じたままがアート、というのも嫌いではありませんが、やはり、そこに込められた何かがあるのなら、知りたいと思います。サポーターで関われば、それらをより近くで知ることができる、何なら制作秘話をまるごと楽しめるのです。そうして、作るのに苦労した作品は、きちんと表から見るとまた感動もひとしおです。準備や片づけでしか見られない姿というのも大変そそられます。


 季節ごとに、地域や集落のイベントに参加させてもらえるのも、そういった風習が薄れつつある今となっては、大切な機会となりました。


 さらに、芸術作品は十日町周辺、津南、松代、松之山と点在しているため、場所を覚えるのに適していましたね。


 私の中で重要な拠点であるギルドハウス。ギルドマスターであるハルさんから、最初のころはまるで化け猫を被っていたようだ、と言われたり、舞台のチケット取りで一喜一憂しているのを、幸せだね、と揶揄されたり、リラックスガス攻撃をされたり…。夜道に気をつけてください。


 ギルドで過ごした日々はかけがえのないものであり、ここへ来て私の人生は間違いなく変わりました。それが良い変化であることを願って、私は東京へ楽しみにしている舞台を見に旅立ちました。


 今も、嫌なことを思い出しますし、絶対に会いたくない人たちもたくさんいます。


 それらすべてを足しても、今には遠く及ばない。それでよいのだと思います。


 久しぶりに書いたアドベントカレンダー、前回はお酒について書きましたね。あの頃はまだ、ギルドや十日町での自分の立ち位置に迷っている時期だった、と今なら思います。少しでも自分にできること、存在意義のようなものを見つけたくて必死で、あまり興味がないことでも食いついていました。そのため、ギルドに来る冒険者たちと積極的にコミュニケーションを取る必要があり、酒はそのためのツールの一つでもありました。


今も酒は好きですが、自分の飲みたいときに飲みたいものを飲むのがよいとわかります。美味しくない酒、飲みたくないときは無理して飲まない、めんどくさいならさっさと寝る、それでよいのです。自分には自分の、他人には他人のペースがある。もしそれで何かを逃しても、私にはもう自分のものがあるから、他人を羨む必要はないのだと。そう思えるようになりました。それか、そう言い聞かせている最中かもしれませんね(笑)。


 長くなりましたが、これが今の私です。来年、悶絶していることでしょう。


 今年はまだ雪が少ないですが、寒い年の瀬、皆様、どうかお身体をご自愛ください。


 また会える日を楽しみにしています。




追伸  30日~1日のどっかで帰ります。餅は食べます。栗きんとんは作れたら作ります。


来年もその先も末永くよろしくお願いします。



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