親の心子知らず

親の心子知らず


オカン、そういえば心配性だったなあと今更ながらに思い出した。昔っから熱を出しては死にかけているような子供であった自覚はある。アタシの今の状況は、その頃を思い出させるには十分であったらしい。

まあたしかに、ウルキオラとかいう破面に拉致されたときは腹に穴が空き、藍染惣右介とかいう種巻いた父親には連日いびられ、ロリとかメノリとかいうクソガキ(でいいだろう)には千鶴ちゃんの妄想かリサ姉の私物の中身のようなことをされ(後で二人ともぶん殴った)、ザエルアポロとかいう破面にはあっちこっち砕かれ、最終的にオカンに半分にされかけたけど。

おかげで精神的な疲労はまあまあある上に、傷も最後まで治りきっていない。織姫ちゃんが到着するまでは絶対安静だと言われたので、アタシも素直にオカンに抱っこされているわけだ。


「なんか、ちっちゃい頃みたいやな」

「覚えとるん?オマエちっちゃかったやん」

「うん、覚えとるよー。けんせーの胸筋かったいなあとか、ろーずの髪の毛やわくて楽しいなあとか、はっちはトトロみたいやなあとか」

「……結構覚えとるもんやな。つーかそんなこと思っとったんかい」

「コドモは素直な生き物なんやで。あ、あたしはオカンの抱っこがいちばん好きよ。あったかくて、安心して寝れるんや」


実際瞼が重くなり始めている。織姫ちゃん来るまでもう少しあるだろうし、仮眠取りたい。向こうにいる間はいつ藍染とかクソガキとかが乱入してくるか分かんなくて一回も安心して寝れなかったし……織姫ちゃんも、アタシみたいに怖い思いしたんやろか。

重くなっていく瞼と襲ってくる睡魔が、つまらない授業を受けているときを思い出して懐かしい。そのまま睡魔に逆らわず眠ろうとして──

ぎゅうっとオカンがアタシを力一杯抱きしめた。傷口が痛んで思わず悲鳴を上げた。


「いったァ!おかんなにすんの!」

「何って、痛くしとるだけや!」

「大けがしたむすめのキズを開くおかんがどこにおんの!」


抗議のためにぽかぽか肩の方を叩いたら、オカンがこっちを見てほんの少しだけ笑った。ひどい!


「なあ、こわくないか、つらい目にあわんかったか」

「なんやきゅうに。そりゃタイヘンやったけど、だいじょうぶやったよ」


別に、何かが増えたわけでも減ったわけでもない。いつ終わるかも分からない長い夜だったけども、今こうしてオカンの腕の中に帰ってこられただけで充分だと思う。

それに、お姉ちゃんとも会えたし、始解と虚化も会得したし、総合的にはお釣りがもらえるかもしれない。


「なーおかん、つかれた。ねてええ?」

「ダメや、話はまだ終わっとらん。オマエ石田とかいうメガネとはどこまで進んだんや」

「なんでその話になんの!」


やっぱりオカンはアタシをいじめるつもりだ。虚圏での雨竜とのやりとりを思い出して、心臓が跳ねたのを自覚した。


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娘ちゃん視点:なんか色々大変だったけどなんとかなったセーフ!オカンに抱っこされるの懐かしいけど赤ちゃんみたいだなあ。虚圏だとあんまり寝れなかったからオカンに抱っこされて眠くなった。疲労やダメージの影響で舌ったらずになっているが自覚なし。オカン、寝ていい?


平子♀視点:娘がある日突然誘拐されて色々あって戻ってきたと思ったら自分の手で真っ二つにしかけた。累積ダメージのせいで回道の治療が間に合わず織姫待ち。娘が自分の腕で今際の際みたいなこと言い出したので結構焦ってるが、悟られないように全力を出している。寝たら永眠するから寝るな!!!


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