???視点

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※ある意味でとてもホラーです




 僕たちがエランさんの中に入ってから、もう一週間は経っただろうか。

 本体と分かれた僕たちは、いずれはエランさんの体の情報に押し流されて消えて無くなる運命だ。

 でも後悔はしていない。だって本体から切り離された時点で分かっていた事だし、それにスレッタの中に入っている別の僕たちもその点は同じなんだ。

 中には宇宙に拡散されたまま帰って来れない僕らもいるのだから、まだ目的を達成できただけ上等だ。

 そう、目的。

 エランさんは、やってくれた。

 情報を送ったその日のうちに色々と動いてくれて、夜にはスレッタを連れて学園を脱出してくれた。

 今のところは順調だ。あともう少しで地球に逃げられる。

 地球。スレッタが行きたがっていた母なる星。

 どんな所だろう。やっぱりとても綺麗なんだろうか。

 本体に先駆けて地球に降りられる事にほんの少しだけ優越感を感じながら、でもちょっと待てよと思い直す。

 エランさんは子供の頃は地球にいたけれど、最近までずっと宇宙にいた。地球で旅するための知識なんて、あるんだろうか?

 一度思いつくと、何だかとても不安になる。

 彼の記憶を覗いた時から、その無味乾燥な生活ぶりは知っている。戦闘訓練も受けていたから早々に危ない目には合わないと思うけど、でもやっぱりちょっと心配だ。

 僕はネットワークを通じて知り得た知識を、エランさんの脳に焼き付けることにした。

 切手の買い方とか、ホテルの予約の仕方とか、本当にちょっとしたものだ。

 健康な人ならいきなり生えてきた知識にビックリするだろうけど、記憶に色々と粗があるエランさんならたぶん大丈夫。

 ついでにファラクトに吸われずに残った記憶もできるだけ思い出すようにしてあげよう。

 破損した脳の神経の代わりなんて、僕らにはお茶の子さいさいなんだ。

 さぁ、みんな。起きて。まだ力が残っているうちに行わなくちゃいけないよ。

 眠っていた仲間たちが起きてきて、それぞれお仕事をし始める。記憶の修復、知識の伝達、あとは継続してパーメット中毒の中和をしなきゃ。

 その中のひとりが、気を利かせてエランさんにメッセージを送ったみたい。夢を介してではなく、脳に細工して幻覚を見せたらしい。


 器用だね、と僕は笑って。その子をたくさん褒めておいた。






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