『規格外』の片鱗
それはまだ黒川蘇我達が高専生だった時のある日の放課後
「なぁ傑、スリーポイントで勝負しねぇ?負けた方がジュース奢りで」
体育館でバスケットボールを投げつつそんな一言から始まった勝負。
そこには家入硝子と黒川蘇我の姿もあった。
「硝子達も参加するかい?」
「私パース」
「わ、わたしも今月金欠なん「蘇我は参加するよな?」…はいぃ…」
いざ始まる勝負…だが
「いいかい悟。呪術は非術師を守る為にある…」
悟に呪術師とはを説きつつお手本の様なフォームで投げるもボールはリングに弾かれて落ちていく。
「それ正論?俺、正論嫌いなんだよね…」
悟の己の我を通すかの様な適当なフォームで投げるとボールは真っ直ぐゴールに吸い込まれていく。
「外で話そうか。悟」
「寂しん坊か?1人で行けよ」
聞き流せない言葉を聞き私達がまさに一触即発という雰囲気の中
ガシャアアアンッ!
唐突に響いた音にそちらを向くとそこには恐らくダンクを決めたであろう蘇我がぶら下がっており
「ど、どっちだっていいとお、思いますよ…糸目さんにごじょさん…自分の思うことを、ぜ、全力で出来るなら…」
口調こそオドオドしているが若干のドヤ顔が透けて見える表情をしていた。
状況から察するに信じ難いがスリーポイントラインから直接ダンクを決めたのだろう。なぜその様な結論に至ったかは分からないが私はかつて悟が語っていた言葉を思い出していた。
『蘇我は絶対俺らと肩並べる術師になる。賭けてもいい。』
今の蘇我の行動は確かに普通は考えつかない。なぜスリーポイントと言われて投げるのではなくダンクとなるのだろうか…だが確かにルール上これはスリーポイントに分類されるのだ。
蘇我には常識を覆しつつ確かに結果へと結び付ける思考と行動力がある。
私はそこに自分とは違う『何か』を確かに感じた。
自分はスリーポイントを決められていなかったのもあるが蘇我のドヤ顔を見て多少イラッと感じてしまった。悟の方を見るとどうやら悟も同様にドヤ顔にイラッときたらしい。なので
「「………偉そうなこと言う前にまともに呪力を使えるようになれ」」
「ハゥ…!」
悟と共に正論を言ってやると案の定蘇我がヒンヒン鳴きながら硝子の元へと向かっていく。
改めて悟の方を向くと悟は苦笑しながら言った
「ああいう奴なんだよ蘇我は」