見ないで でも見て
アト「〜〜♪」
お姉ちゃんが作った歌を歌いながら私はいつも通りアート作品を作る。水彩画、油絵、墨絵、点描画などの絵画はもちろん、粘土や彫刻、紙細工、風船など多種多様なアートを作れる。
恥ずかしくて人前に出られないけど、私だって認められたいという思いはある。お姉ちゃんみたいに人前で歌う事はできないけど、私が作ったものが認められれば・・・
アト「よしっ完成っ!これを置いておけばみんなが凄いって・・・ふひひひ・・・」
渾身の傑作ができた。これを見た赤髪海賊団やお姉ちゃんの反応を想像するだけで自然と変な笑いが込み上げてくる。悪い癖だ。
人前に出るのが恥ずかしいから、アートを置いて影から様子を見る。それがいつものスタイル。
〜〜〜〜〜
シャンクス『アトは最高の芸術家だ!』
ベックマン『うちの自慢の娘だな』
ウタ『私アトの作品大好き!』
ヤソップ『〜〜〜』
ライム『〜〜〜』
・・・・・・
物陰
アト『ええへへへへ〜〜ふへへ・・・』
〜〜〜〜〜
アト「ふへへへ・・・」
ルフィ「何笑ってんだ?」
アト「@&%#$+=€&@&¥$=+^%#;“+€!?!?!?」
妄想に浸り笑ってて気づかなかった。最も見られたくない瞬間、お姉ちゃんにも見られた事は4度しかないのに。(シャンクスは10回見てるがアトは知らない)
この子は確かお姉ちゃんとよく遊んでる男の子、確か名前は・・・
アト「・・・ぁぇ、っと・・・ぅ・・・ふぃ・・・」
ルフィ「・・・ん?おれはルフィ・・・・・・ってお前よく見たらウタじゃねえな。誰だ?何作ってんだ?」
人生で初めて会った、歳の離れていない男の子。最も恥ずかしい瞬間を見られたから、舌がろくに回らない。(多分どの出会い方でもこうなる)
アト「ぇと・・・わたしは・・・アト、だよ。ウタは、お姉ちゃん、です」
ルフィ「アトって言うんだな!そういや妹がいるってアトが言ってたな・・・これは何を作ってたんだ?」
アト「あ、それはこのフーシャ村の風景を○○を使って××技法を参考に△△派が━━━━━━━━━(中略)━━━━━━━━━という作品でね!最近の私が作った中では最も出来が良いと言える自信作なんだ!・・・はっ」
私の悪い癖、普段は緊張でろくに言葉がでないくせに、得意分野になると立板に水。話し終えてようやく気づく。自己嫌悪。またやっちゃった。それも年下の男の子に。大人ですらちんぷんかんぷんでうんざりされることもあるのに。お姉ちゃんの友達に。
ルフィ「なんかよくわかんねえけど・・・アトはすごいんだな!もっとアトが作ったやつ見せてくれよ!!」
アト「ぇ・・・?」
ルフィ「あ、そっか。シャンクスの船は遠いから無理か・・・じゃあ何か・・・そうだ!おれを描いてくれよ!!」
アト「え」
私は人物画を描く事はできる。ただしそれは遠目から一瞬見た記憶を元に人物画を描くことだ。盗撮の絵画版。盗み描きとも言える。
描いてる途中や描いてる姿を見られるのは恥ずかしい。モデルとの沈黙が辛い。
ルフィ「おれ絵を描くのは好きだけど描かれた事ないからよ」
アト「・・・ぇと、いぃ、よ」
恥ずかしいけど、お姉ちゃんの友達
そして私の話を嫌な顔一つせず聞いてくれた
それに答えたいと思った
ルフィ「やった!ありがと!」
それから30分、私はルフィを描いているのだが・・・
モデルは動くし、話しかけてくるし、じっと見つめてくるし、描いてる途中の恥ずかしいところを見てくるし、散々だった
ルフィ「これ・・・」
アト「・・・・・・ごめんなさい」
当然クオリティとしては下の下の下
線は乱れてガタガタ、かろうじて人の顔と認識できる程度
こんな作品を作った自分が恥ずかしい
見ないでほしい、こんな私を、こんな作品を
ルフィ「おれが描くのにそっくりだ!お前すごいな!!」
アト「え・・・?」
ルフィ「それに絵を描いてる時のアト、なんかこう、すっごいと思った!よくわかんねえけど・・・そうだ!ウタが歌ってる時みたいだった!」
今までこんな事言われた事なかった。作った作品に対する評価はいっぱい聞いた。でも作ってる時の私をどう思うかなんて、聞いた事なかった。
この子に、私の作る全てを見て欲しいと思った。
あとでお姉ちゃんにルフィを船に乗せようとした事を怒られたのは別の話