せんとうあり
ブラッシュアップ「患者の運命は…俺が変える」
ライダーベルトを付けて、ガシャットを手に持ち、僕から俺にスライドさせる。
ガッシャットォ!
let'sgame! メッチャゲーム!ムッチャゲーム!ワッチャネーム⁉︎
I'm a 仮面ライダー…
「ノーコンティニューで、クリアしてやるぜ!」
まずは患者とバグスターユニオンの分離。脚に力を入れ、空中で一回転させて、巨大な腕又は触手をしならせ襲ってくるが、襲いかかるそれの側面も、踏み込む足場として俺の脳内ゲームエリアに追加し、一気に分離パルスを叩き込む。
「エム!」
空を駆け上がり、分離され放り投げられた患者を救出して着地する。
「必ず、やり遂げるさ。恋人の望みなのだから」
俺の死角から、弾頭の剣が振り下ろされ、患者を抱え込んだ状態で身を捻った。視野が開け、ガシャコンマグナムを持つ男が見えた。スナイプか。
「エグゼイド!その患者を連れて、ポッピーピポパポに預けろ」
マグナムが辺り一面に撃たれ、剣を携えた謎の仮面ライダーは、たじろぐ様子を見せる。
「そのまま、行かせると思うのか?恋人の野望を叶えようとしてる俺が…」
「オレは貴様の恋人では無いッ!!」
謎の仮面ライダーは後ろから、瞬時に姿を現したグラファイトに両方のほっぺを軽くつねられている。
呆気に取られ、緊張感と戦意が薄まった間に、とりあえず患者をポッピーに預けることは出来た。
「大変身!」
ガッチャーン!レベルアップ‼︎
マイティジャンプ!マイティキック!マイティマイティアクションX!!
次はバグスターを倒す。
「パラド、すまないが後は任せた」
「まぁいいよ。心が躍るな!」
エグゼイドとの戦いから帰って、再開したパラドはこんな事を尋ねた。
「ねぇねぇどうして、フラーレンのことをさっき、人間の名前で呼び掛けそうになっていたの?グラファイトが自分で名付けて拾ってきたのに…」
本人がこの場に、居ないことをいいことに無遠慮な言葉をパラドは投げかける。だがフラーレンが来て、初めの頃と比べたら、二人きりの時に聞いてきたのだから、まだマシな方か。
「拾ったんじゃない監視のためだ!
フラーレンがスナイプと戦場で遭遇して、焦ったんだ。落ち着かせて宥めておかないと増殖した仲間が、以前と同様に虐殺されてしまう。
それでは、パラド。お前も困るだろ?」
「…確かに、いつでも増やせるとは言ってもさ。無闇矢鱈とバグスターだからって、消されるのは嫌だもんねぇ」
とっさの動揺を隠す為の誤魔化しには気づかず、パラドが納得してくれて良かった。
「ゲンムもフラーレンには優しいよねぇ…やっぱり人間だからかな?」
本気かは、判別しにくいがどうやらそちらの話題にパラドの興味が移ったようだ。
「さぁな、それよりも【仮面ライダークロニクル】の完成の方が、先決だと思うぞ。オレも、ゲンムにフラーレンを預けてる隙にウイルスでも散布してくる」
フラーレンのことを、パラドは人間のカテゴリーと判別しているが本当に、そうだろうか?
オレが拾ってからも、適合手術をせずに仮面ライダーに変身する為、オレから故意にバグスターウイルスに感染して頬に亀裂跡が残ろうとも、頓着する情動がない。そこまで壊れたのなら、それは、人間ではなくバグスターと同じ怪物だろう。
少なくとも彼は己を怪物だと定義して歪みを受け容れてしまった。それならば、オレは敵キャラの誇りを掲げて戦うことも叶わない。
一旦思案を止めて、バグスターウイルス散布前に仰ぎ確かめる。
本来人間のフラーレンを監視する目的でゲンムから渡され、離れていても見える形にした繋がりの象徴であるペアリングを空に透かす。
上空から爆風が吹き荒れた。
ジェットクリティカルストライク!!
彼方からガトリング砲が、オレに目掛けて高速で叩きつけられる。防ぎようがない。痛みに歯を食いしばり、ガシャコンバグヴァイザーを擦る。
「培養…」
インフェクション!
レッツゲーム!バッドゲーム!デッドゲーム!ワッチャネーム!?
ザ・バグスター!
「あれから、ずっと上空から探していたのか?」
「過去に決着を着けないといけないからな…」
鋭利な光る爪を模した武器をスナイプへの挑発を込めて振り、面を向く。
先刻は、独りだったからスナイプとの闘いを楽しみ過ぎた…
まだフラーレンを仮面ライダーブレイブを他の仮面ライダー、特にスナイプに遭わせる訳にはいかない。
…扉を開く瞬間、待っていたフラーレンが、躊躇なく唐突にオレを抱き締める。
「サキ、遅くて……心配したぞ」
「すまなかった。飛彩、ゲンムの奴は留守か?」
「多分、ゲンムは、エグゼイドのゲームデータを打ち込んでると思う」
「…そうか、飛彩。大人しく待っていられたのか。」
よし、フラーレンは落ち着いていると目視することが出来て自分の胸を撫で下ろす。
オレに対して縋り付く顔をお前がするものだから、そっと思いつきで、人差し指から順に頭髪に指を入れて、頭皮を触りながら彼の髪をまさぐり、手の先を使って少し荒々しく掻き回す。
「サキ、嬉しいのか?」「…多分そうだな」
フラーレンが喜悦を滲ませた顔で笑っている。そんなことに、密やかに僅かに、それでいて確かな喜びを困惑の傍らに感じ入り、魂が揺さぶられる。
「グラファイト、俺も来たよ!フラーレンばっかりで、ズルいから俺も頭撫でて!!」
「………」
場の雰囲気を一変させてパラドが現れた。その奥には、神妙な面持ちのゲンムが壁際に佇んでいる。そして、それを見たフラーレンがいつもの仏頂面に……嫌、不機嫌な顔をしている。
まったく、しょうがないな。
「パラドも早く、こっちに来い。オレの腕ならもう片方空いている。…フラーレン使っても、良いか?」
「…恋人の頼みだから、今日は許す」
「やったー!」