装甲薄いのは設計です

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※物理はテキトー。フィーリングで読んでね。

よくわからんが敵対する輩におびき出されているのか、単騎突撃なCEOとダリルバルデ



イヤカフを中枢とする護衛機能群が次々とアクティブに切り替わる。ダリルバルデの並列思考空間を構成するデバイスの一つとして、MSを降りれば生身の人間でしかないジェタークCEOを護る盾として。

CEOがコクピットを飛び出すのと入れ替わるように、それらは警戒態勢をとった。



人間がすることの正しさやその大義は、遣われる道具には興味がない。正確には多くが選ぶ意思そのものを持たない。

その中において、ダリルバルデの意思拡張AIは特異な例と言えるだろう。

クワイエット・ゼロの最期に起きたパーメットの奇跡が、どういうわけかブラックボックスに収まった学習データにも作用した。

その時ダリルバルデに生まれた心は、AIシステムと混ざり合いパーメットリンクを介することで、——一部の許可された機械に限るが——遍在する意識群になった。

デバイスの数だけ並列思考する意識、それでいて統制の取れた動き。今だったらイーシュヴァラも二十、なんなら五十以上扱えるし、かのスウォーム兵器にも勝てる……とダリルバルデは正直思っているが、自身に起きたことを吹聴する気は一切なかった。

再現しようとする輩が出ないとも限らないし、何より大切な人と引き離されてしまうだろうから。

もちろんメカニックの一部にはこの特異性に気付かれているが、半ばCEOの私物であるワンオフ機であること、何より深い関係であることから見逃されているのだった。

だからダリルバルデも、ジェターク本社のメカニックは意思拡張AIが最終面接官だとか、CEOは色々なモノを引き寄せるからアレもその一種なんだろとか、あることないこと噂されても言い返すことはしていない。

せいぜい、一部本当に何も知らない手合いがCEOに見合い話を持って来る度に、何故かうっかりペレットマインを落としてしまうくらいで。


そういうわけで、ダリルバルデは人間と変わらない心と愛でもって接し、時にはAIの枠を飛び越え——組み込まれた安全装置ではなく意思でもって——主人であるグエル・ジェタークに逆らい、護る行動をとることもある。

例えば、警告しているのにろくに護衛も付けずに敵に生身を曝していたり、引き返してと言ったのに敵を追いかけて狙撃ポイントだらけのエリアに誘導されていたり。

MSのダリルバルデやイヤカフに仕込まれたカメラやセンサー類が、敵対行為の前兆を検出した時とかは特に。


人間には一瞬の間に、実弾が向かっている、まさに今、とか。


瞬間、側頭部を護るように、アンビカーを模した何枚もの装甲が浮かび上がる。


予測地点にピンポイントで重ね合わせられたそれに —— 着弾、

一枚目 —— しなるように逆ベクトルの力を加えて —— 貫通、

二枚目 —— 飛び散る一枚目を跳ね飛ばすように ———— 貫通、

三枚目 —— 設計通りに座屈するように弾痕を残し —————— 停止。


頭の真横で炸裂した衝撃と連なる破壊音に、今度こそCEOは正しい行動をとった。

素早く伏せて、スーツに仕込まれた防弾・防刃素材、通称ディランザの盾を展開している。


これならMSのダリルバルデが到着するまで耐えられる。

CEOの安全を確認したダリルバルデは、もし表情があるとすれば、ニンマリと笑っていたことだろう。

弾道計算や口径と装甲展開数の予測も、プログラム通りだった。携帯性を優先した薄い装甲は重ね合わせ前提で作られているが、これならCEO服に限らず採用してもらえそうだ。


——なんて、勝ち確定してない敵地の真っ只中で、方や頭(?)ほわほわAI、方や場数を踏んでいるだけあって無駄に落ち着いているCEOは、この後降ってきたガンダムまで相手取るなんて知りもしないのだった。



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