蟲の女王の後継

ここの蟲達に囚われた後、私はすぐにお母様と同じ肉体改造をされ、子宮も、乳房も、卵巣も全て蟲型怪異専用の苗床として身体の全てを捧げることとなったわ。
乳房は乳腺に蟲専用の卵巣が新たに増設され、母乳を作るのに加えて子宮の役割を果たせるようになった。主に小型の蟲のために使ってる。
卵巣は中に眠ってるすべての卵子を汚染してもらって、蟲の精子でしか受精せずヒトの子供を孕めなくしてもらった。こっちは乳房とは反対に中型から大型の蟲を孕むために使うけど、時々小型の蟲のためにも使うことがあるの。
とにかく、私の身体は完全に蟲のためだけのモノにしてもらったわ。
造り変えられる時に媚毒漬けにされ、何をされても脳が焼き切れるような絶頂しか感じなくなった時間と、自分の身体が不可逆な変化を起こしていく感覚と、その変化を自ら受け入れヒトであることを捨てた背徳感は出来ることならもう一度味わいたいと思う程に甘美だった。
お母様と同じように私は何度も蟲を産んだ。受精して産むこともあれば、卵を産みつけてもらって体内で育てることもあった。
造り変えられて、大きく広がるようになった乳首をほじくられ、内部をぐりぐりかき混ぜられる感覚は何も考えられなくなるほど気持ちが良いし、乳房に孕んだ幼体達が中で波打つように暴れればそれだけで絶頂した。出産のとき、ぶりゅぶりゅと狭い乳首産道から柔らかな幼体をひり出す快感は何度味わっても飽きないし、出来ることなら常に味わっていたいくらい。
子宮で育て、産み落とす幼体は血の繋がりがあると思うと愛おしくてたまらない。日々大きくなるお腹をなでながら乳首やアナルを犯してもらう時間は至福の時よ。子宮内部に小型の蟲を招き入れて、産卵してもらった時は孵化した幼虫が子宮を埋め尽くし、中で少し蠢くだけで滅茶苦茶な快感に襲われたわ。その感触が幼虫達が十分に育つまでずっと続くのだからたまらないし、育った幼体達が一斉に産道を這い回って外に向かう時に味わった快感は筆舌に尽くしがたいものだったわ。
お母様の産む蟲達は、お母様の力の何割かを引き継ぐので非常に強力な怪異になる。ここに来る前、お母様の退魔魔術が効かなかったのはこのためね。
それに対して私の産む蟲達は、基礎能力が非常に、ううん、異常に高い状態で産まれてくるの。お母様が正気の時に聞いたことだけど、どうやら私の身体はもともと怪異の母体としては極めて優秀らしくてね、力ある怪異との間に仔が産まれればそれは神獣すらも殺せる災厄になるらしいわ。
お母様は望んでなかったみたいだけど、それを聞いた時、私はこの子達の苗床になるために産まれたんじゃないかと思ったわ。媚毒にどっぷり漬けられて脳を快楽で焼き尽くされてもなお通常の思考を保っているのもその苗床としての肉体の才能が大きいと思う。…うん、普通に狂ってるのはわかってるけど。
ちなみにお母様は必要な時以外は身体が正常だと誤認するよう制御する私が編んだ術式を施してあるわ、再会した当初みたいに快楽に狂うだけの苗床ではなくなっていて、今でも犯されてない時は普通に仲良く過ごしているわ。
…話が逸れたわね。とにかく、私の子宮が空いてからすぐにお母様の産んだ蟲の仔を孕んだの。
産まれてきた蟲達は予想通り、そこいらの悪魔祓いや退魔師じゃどうにもならない怪異になったわ。ああ、大丈夫よ。女王の命令がなければその子達は動かないから。
そしてその子達にお願いして、あなたを連れてきてもらったの。
わかってくれたかしら、アルトリア?
*
「そんなの…わかんないよ!しっかりしてよバーヴァン・シー!お願いだから正気に戻って!!」
蜘蛛の巣に捕らえた親友は、恐怖を押し殺して必死に私に呼びかけてくる。ああ、やっぱりこの子はこういうまっすぐな所が素敵だ。
「アルトリア。私ね、今がとっても幸せなの。」
そんな呼びかけを敢えて無視して私はアルトリアに語りかける。
「大切なお母様と一緒にいられて、愛する相手と可愛い子供たちに囲まれて、生きてきた中で一番幸せだった。けどね…」
そっとアルトリアの頬に触れる。私の抱く愛情が伝わるように、優しく、優しく撫でる。
「ここにはあなたがいなかった。それだけが、とても寂しくて、辛かったわ。だから…」
言葉を区切った私にアルトリアは今まで見たことが無い程に怯えた表情をした。そういえば、心を見通してるかのような察しの良い子だったわね。私がこれから何をするつもりかわかったのだろう。いや、わかってしまった、と言うべきかもしれないが。
「私達と、同じになりましょう?アルトリア…」
だからこそ、笑顔で破滅へと突き飛ばした。
「い、いや…」
この子の顔が恐怖に濡れた。
「大丈夫、怖がらなくていいわ。すぐに何にもわからなくるから。」
「やめて…、おねがいやめて、バーヴァン・シー…!ねぇ!!」
堪えきれなかった涙を流し、私を必死で説得しようとしてきた。
「おやすみなさい、良い夢を。目が覚めたらまたカフェにでも行きましょう?」
ぷすり、とアルトリアの身体に痛みも与えず針が刺さり、私とお母様の子が作った特濃の媚毒が注射された。効果はてきめん、アルトリアは限界まで目を見開き、声になってない絶叫と共に絶頂している。
「じゃあ、あとはお願いね?私の子供たち」
ああ、ようやくだ。これでようやく私の欲しかったものが全部手に入る。
お母様とアルトリア、二人がいればもう世界なんてどうでもいい。
いいえ、私が統べる場所が私の世界だ。

だって、私は女王。
蟲の女王、バーヴァン・シーなのだから。