蜘蛛の自覚
「なあオーター。お前って蜘蛛だったりする?」
「……は?」
世の中には五種類の人間がいる。
一番多いのは普通の人間。
二番目に多いのは見目麗しい蝶。
三番目に多いのは美しいが毒のある蛾。
四番目に多いのは蝶と蛾に食欲が湧く蜘蛛。
そして一番少ないのが蜘蛛に子どもを生ませる蜂。
「それでオレたちは兄者が蜘蛛で、オレとドミナが蜂で、エピデムとデリザスタとマッシュが蝶で、セルが蛾だ」
「希少な人たち多くないですか」
「蜂が蜘蛛に子ども生ませたら蜂か蝶か蜘蛛のどれかになるんだよ」
「……つまりイノセント・ゼロは」
「そう、蜂だ」
ファーミンは解説のために使っていたホワイトボードの文字を消してからオーターに近づく。
「ちょっと口開けて」
「?はい分かりました」
オーターは素直に口を開ける。
ファーミンはオーターの顔を近づけてキスをした。
思わず驚くオーター。
しかしファーミンのテクニックに負けて夢中になる。
しばらくオーターは深いキスの気持ちよさにぼんやりとする。
そしてオーターはファーミンの唾液をコクコクと飲んだ。
「……え?」
身体が麻痺したように動かなくなる。
ファーミンは動けないオーターを見て言った。
「……やっぱり蜘蛛だったな」
麻痺状態から回復したオーターはファーミンに言う。
「……なんですか今の」
「蜂の体液には蜘蛛と蝶と蛾を麻痺させる効果がある」
「口で説明してください」
「いや実際体験した方が早いかなと」
「そうですか……。なぜ蜘蛛だと思ったんです?蝶か蛾の可能性もあるんでしょう?」
「それは無い。お前が蝶か蛾だったら兄者が気づいている」
「そうなんですか?」
「ああ。蜘蛛は蝶と蛾が近くにいると空腹感を覚えるからだ」
「……もしかして私がこの家に来るとなんかお腹空いたなって思うのは蝶の2人と蛾のセルさんがいるからですか?」
「多分」
「なるほど……」
「お前は蝶と蛾を食べたいと思うか?」
「……お腹は空きますが人間を食べたいとは思いません」
「まあそうだよな。とりあえず蝶と蛾の説明はここまでにする。もっと重要なことを説明しなくてはいけないからな」
「蜂は蜘蛛にキスとかセックスとか血を飲ませたりすることで孕ませることが出来る」
「これは蜘蛛の性別が男女どちらでも孕ませられるし、逆に蜂の性別が男女どちらでも孕ませることが出来る」
「えっ」
「まあ孕ませるって言うか卵を植え付け寄生させるみたいな感じだ」
「蜂は普通の生殖機能は持たなくて、蜘蛛に卵を生ませることで繁殖する」
「つまりお前は蜂に目をつけられたら孕まされるかもしれないってことだ」
「……」
「蜂は自分の子を孕んだ蜘蛛を言いなりにすることが出来る」
「……卵を孕んだ蜘蛛は死ぬことも多い」
「なぜなら卵に栄養が奪われるからだ」
「だから蜂は蜘蛛に蝶を食べさせる」
「……は?」
「蜘蛛を言いなりにして無理やり蝶を食べさせるんだ」
「蝶の方は蜂の体液で麻痺していることが多いな」
「蜂は生殖欲が強い。だから本能に身を任せ蜘蛛を監禁して孕ませようとするやつが時々出てくる」
「というかアレがやってた」
「イノセント・ゼロ……」
「マッシュ以外を生んだ蜘蛛は全員栄養が足りずに死んだらしい」
「マッシュ・バーンデッドを生んだ人は生きているんですか?」
「ああ。だって兄者がマッシュ生んだから」
「……は?」
「兄者に無理やり卵受け付けて、蝶を食わせたんだ。ちゃんと食べないとエピデムとデリザスタを食べさせるって脅してな」
「……」
「まあ要するに何が言いたいかというと蜂には気をつけろってことと、エピデムとデリザスタとマッシュとセルを食べないでってことだ」
「食べるわけないでしょう」
「特に蛾のセルは食べたらお前が毒で死ぬから食べるなよ」
「食べないって言ってるでしょう」
翌日神覚者会議が開かれた。
オーター
今回自覚した蜘蛛。
いろいろキャパオーバーになりかけながらも説明をちゃんと聞いた。
マッシュの出生の秘密を知ってしまったので頭抱えながら神覚者を集めて会議した。
ファーミン
子どもは作りたくない蜂。
ドゥウムやドミナの親の孕ませとか出産とか見て育っているので子どもは作りたくない。
蜘蛛と蜂のことを知った後のオーターも普通にセックスに付き合ってくれるので、なんで警戒しないんだろうと思いながらモグモグしてる。
ドゥウム
弟も弟兼息子も可愛い蜘蛛。
蝶を食べたことは自己防衛で忘れた。
マッシュ
何も知らない蝶。
蝶だけど大抵の蜘蛛や蜂にグーパンで勝てる強い蝶。
ドミナ
最近オーターを見ると変な感覚を覚えていた子どもとかはまだ考えてない蜂。
えっオーターさん蜘蛛だったんですね。