虚ろに微睡む
・モブレ
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何も感じなかった。
腹を満たす白濁の生暖かさも、じんじんと熱を持つ頬の痛みも、太ももを撫でる手の気持ち悪さも、赤い髪を濡らす血の匂いも、もう感じることはなかった。
ぼやけた視界で上に乗った男を見れば男は俺がコイツを見ていることに気づいたようで、心底愉しそうに笑った。男が腰を揺らせばナカのモノも動き、衝撃ででた声に男はまた嗤う。
細く暗い路地裏には俺の小さな声だけが響いていた。
「ぁ、あ……」
結合部から鳴るごちゅごちゅとした音も俺の耳には遠く、ガラスを隔てた別の世界のように感じる。
一体どのくらいの時間が経ってるんだろ。
ただ揺すられるだけのモノに成り果てた俺では時間も分からなかった。
「シャンクス……?」
ふと、声が聞こえた。
男の声も聞こえなくなった俺の耳に、ぽつりとひとつ。
声の方に眼を動かせば小さな人影が立っていた。
俺の、大切な兄弟分。
男の体の後ろ、この路地と通りの境にバギーは立っていた。霞む視界でもその鼻でバギーだとわかる。
バギー、にげろ。
そう言いたいのに散々殴られ、突っ込まれた口は上手く動かない。
「……ァ、ぎぃ」
微かな、本当によく耳をすまさないと聞こえないような小さな声。俺は下手くそに名前を呼んだ。
にげろ、はやく、ろじゃーせんちょうたちのとこに。
瞬きすら億劫でぼんやりする視界のなか、またひとつバギーを呼ぶと俺の意識は闇へと落ちた。