虎杖は安眠したい
「くそ…」
虎杖は苦しんでいた。時にはイク直前に入れ替わられ無様射精をし、時には勝手に購入させられた大人のグッズを装着した状態で入れ替わられ同級生にバレかけ、たまに何もなかった日は必ずと言っていいほど私物が自分の精液で汚れているのをキレイにしなければならなくなる。しかしやられっぱなしではいけない。
そう思っていたある日、とある案を思いついた。正直言ってうまく行くかどうかはわからないがこのまま何もせずにいいようにされているくらいなら…と思った虎杖はすぐに宿儺を呼んだ。
「おい、宿儺。」
「ケヒッ、なんだ小僧。とうとう自分から「俺、今日から五条先生と寝る」…?なんだと?」
「夜お前が出てきてもすぐに抑えてもらえるように五条先生に頼む。確かにもう一人の時間とかは取れないかもしれないけどもう決めた。絶対に今後お前に体を好き勝手いじらせない。」
分かっている、この案が穴だらけなことなど。だけれどそれでも数日でもいいから宿儺に怯えることのない睡眠と目覚めを手に入れたかった。そのためならどんな犠牲も…
「好きにしろ」「え?」「好きにしろと言った。もとより暇つぶしだ。面倒になったのにわざわざやろうとは思わん。」
やった!賭けに勝った!これで少なくとも数日の間は朝起きてすぐに掃除することも寝てた途中で起こされて掃除することもないのだ!そう思うと気が楽になった。そして俺はすぐに五条先生の元へ行き、夜一緒に寝てほしいこと、宿儺が出てきたら止めてほしいことなどを伝えた。明日からの夜が楽しみだ。
(数日後)
「くそ…」
虎杖は苦しんでいた。五条先生と寝るようになってからやけに宿儺が静かなのだ。いや静かなのはいい、なんなら五条先生と寝なくなっても出てこない今の状況は自分が最も望んでいた状況そのものでさえある。
しかし、しかしだ。なぜか宿儺が出てこなくなってからずっと、本当に一度たりとも、イケていないのである。これはふざけているのではない。彼は健全な年頃の男子である。そんな状態で過ごしていては日常のほんの些細なことでさえ息子が元気になってしまうのはもはや自然の摂理と言っても過言ではない。当然元気になった息子を鎮めるのに最も効果的なのはイクことであるが、彼はそれができておらず苦しんでいるというわけだ。
彼は実に様々な方法を試してみた。好みのタイプでない女優のエロい画像を見てみたり、不本意ながら宿儺が買って使わされた道具も使ってみたりもした。しかし、イケないのである。彼は苦しんだ。このままではもう2度とイクことができないかもしれない。そんな恐怖に怯えながら今日もまた宿儺が買った道具を自分で使って頑張ってみるのだ。
実のところ彼はその原因について気付いていた。イケていた時とイケていない今、その差を考えれば十分に理由に辿り着く。しかし彼は否定したかった。なぜならそれを認めてしまうことで自分の大切な何かが壊れてしまうと思ったからだ。けれどももう、彼は限界だった。半泣きになりながら彼は呼ぶ。
「すくっな、おい、宿儺!」
「なんだ小僧。もう呼ばれることはないと思っていたが」
「俺の体になんかしただろ!早く治せ!」
「物を頼む態度か?それが」
「頼む…どうか治してくれ…」
「断る。この俺にあのような啖呵を切ったのだ。せいぜい自力でなんとかして見せろ。」
虎杖は泣いた。無様に泣いた。もう自分は一生イクことはできないのだと、己の未来を呪った。
「しかし…」
「え?」
「もしどうしてもというのならどうにかしてやらんこともない。まあそれなりの対価はもらうがな」
「なんでもいい!なんでも持って行って構わない!だからどうにかしてくれ!」
「言ったな?」
ああ、おそらく自分は間違えたのだろう。何でもかんでも思い通りに行くと思ったツケが廻ってきたのだと後悔しながら彼は人としての尊厳を捨てた。
BAD END「微睡」