藍色の心の愛
スレ主真希「藍お前、コミュ力どうなってんだ?」
8月のある日、同級生の真希は藍に問うた。
蝉時雨が降り注ぎ、蒸し暑い校舎の中、2人は突っ立っていた。
藍「どうなってるって言われても…どうなんですかねぇ…」
少し焦り顔を見せながら藍は頬を指で掻く。
藍「でもなんで急にそんなこと聞くんですか?」
真希「あぁ?私含め女子にはそういうことしてるだろ。2年以外の男と話してるところも見ねぇし」
藍「………」
藍には思い当たる節しかない。
女性の補助監督の時や、同行する術師が女性の時はすかさず話しかけ、連絡先を交換しようとしたりする。
しかし男性の時は特に何もしない。
そもそも藍が男性に嫌悪感を抱いているのもあった。
真希「お前って今までどうやって生活してたんだよそれで。マジで呪術師が天職なんじゃねーの?」
藍「えっ、そんなことは……あるかもしれないですけど」
真希「あんのかよ」
藍「だって私がまともに関わったことのある男性ってお父様か同期くらいしかいませんし…最近やっと葵くんと仲良くなったくらいですよ?」
真希「終わってんな交友関係」
藍「呪術師なんてそんなもんじゃないですなねぇ」
真希「お前以上に終わってるやついないだろ」
藍「さすがにひどくないですか!?」
しかし真希は藍が男に対して嫌悪を抱く理由が何となく分かっていた。
この呪術界では女は男より下だと蔑まれ、舐められる。
御三家はもちろん、歴史の長い大山家でも変わりはなかったのだろう。
藍「それでも私は美少女に〜!」
真希は目の前にいる少女を見つめる。
コミュ力の低い陰キャと思えないほど、美少女相手にはよく喋る藍にも何かあるのかと思わず勘繰った。
しかし普段の彼女からはそれは感じない。人生をエンジョイしていると言われても疑うこともない性格を藍はしていた。
真希「ま、お前といれて楽しいからもう気にすることでもねーけど」
藍「………真希さん………!!私もですよぉ!私も、真希さんと毎日いれて楽しいです!任務であんまりいませんけど!」
真希「だーっ、がっつくなっての!ったくお前は!」
藍「真希さぁん!」
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実際のところ、藍はまともな友人はできたことがない。
一応、中学にも行っていたが結局女の子ばかりにのみ話しかけてその性格から離れられるパターンが大体だった。
その顔から男から話しかけられることもあったが全て切り捨てており、男友達など夢のまた夢であった。
故に藍の初めての友達は同級生の術師のみだった。
今まで術師の友人ができたことのなかった理由は性格なんかもあるが、大きいのは出生だった。
大山家。それは千年前に呪詛師として名を馳せ大山家の恥晒しとして有名であった。
その末裔となるの、上層部からはもちろん、御三家を含む歴史のある術師の家系からはいい顔をされなかった。
苗字を言えば「あの大山か」と口を揃えてため息を吐かれる。
藍はそれに疲れていた。嫌気がさしていた。
きっと赤かった心はいつしか藍色に染まっていた。
そんな心の拠り所として見つけていたのが自身の恋愛対象であったが家でコミュニケーションを学ぶことなんてあるはずもなく。藍は悉く会話に失敗していた。
家族以外それを許してくれる人はいなかった。
しかし、それを初めて許してくれる他人がいた。初めてできた友達、初めて自身をえりのまま受け入れてくれた人。
藍は性別など気にならないほどに4人が大切になっていた。
藍「私、真希さんはもちろん、同期のみんな大好きですから!」
真希「はいはい、知ってるぞ」
藍色に染まった心は既に、愛を知っていた